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当時の日記より114@2010 6/20

病院の売店がコンビニとなって改めてオープンし、その隣にカフェドクリエまで出来たものだから、姫(母)は毎日せっせとお金を使いに行っていた。そう、使うだけだ。買ったら満足、食べる訳じゃない。

我が家には特大のタッパーが2つある。その中にぎっしり食べかけのお菓子が詰まっている。それだけでは足りないので2つの紙袋にも、段ボール一箱にも、それぞれ食べかけのお菓子が入っている。尋常じゃない。しかもそれで満足する姫じゃない。

タッパーの中からごそごそと煎餅を引っ張り出していた。が、気分ではなかったのかそのまま仕舞った。そして私に

「ねぇ、おっきなお煎餅が食べたいの。小さいのは嫌なの」

(多分小さいのとはおかきやあられを指しているのだろう)

「今さ、タッパーからお煎餅出してたよね。それは姫の言う「おっきな」部類に入らないの?私には十分大きい煎餅に見えるけど」

「これはね、この前家に戻ってきた時に食べたお煎餅よ」

「だから何?!」

「なんで前と同じ物食べなきゃならないのよっ!新しいお煎餅じゃなきゃ嫌なのよ」

「食べないなら捨てれば」

「卯月!!どうしてあなたはそうやって食べ物を無駄にするのよっ」

私ではない、無駄にしているのは。買ってきて手をつけずに湿気らせて捨てるのはあんただ。

言い出したら絶対にひかない。結局私がいつものように折れてコンビニに走る羽目となった昨夜。

今日はネットスーパーが届いた。明日には八百屋さんが来るので、少しだけ買い足した食材を冷蔵庫に入れていると姫がベッドから身を乗り出してその様子を見ている。そして

「ねぇ、どうしてお煎餅買ってくれなかったの?」

昨日の今日で何を言ってるんだとムカついた私は「ネットスーパーの煎餅が全部売り切れてたから」と嘘八百。昨日のことを忘れてしまった訳じゃない。煎餅モードに突入しているのだ。だから次の新しい煎餅が欲しくて仕方ないだけ。

「私が退院する日がいつか分かってるんだから、そこに合わせてお煎餅屋さんに注文しなさいよ!」

「嫌です。昨日コンビニで買ってきた煎餅を食べてよ。一枚食べて飽きたとか言うつもりじゃないよね。冗談じゃない、そんなの許さない。うちは大金持ちじゃないんだからっ」

献立だけでもキレそうなのに、毎食後の果物も違う物でなくてはならない。昼食のあとにオレンジを出したら

「もうオレンジ買うの止めてよね」

キレた。

「勝手なことばっかり言ってんじゃないよ!日に3度違う物を出さなきゃいけない私の苦労が分かる?ただでさえ好き嫌いが激しいのに、毎回違う果物出せって。その上いちごは大粒じゃなきゃ嫌だとか、あれは買うなこれも飽きたってふざけたこと言いすぎなんだよ。だったら食べなくていいっ」

「ほらまた卯月の短気が始まった。何言ってるのよ、同じ物が続けて出てきたって食べるわよ私」

「よくもそんなしれっとでたらめ言えるよね。食べないよ、絶対に。同じ物出すなって文句言うじゃん」

延々と私に聞こえるかのような独り言で私への不平不満を呟いている。このままじゃ私はいつか姫を殺すかも知れない。

夕食後、キウイを出したら美味しいとご機嫌だった姫。

「それは良かった。ネットスーパーのキウイがどんなもんか分からなくて一つしか買ってないの。明日八百屋さんから改めて買うよ」

「はぁ?!」

なんでそんなどうでもいい会話に立腹したのかと思ったら

「ひとつ?!は?ひとつだけ買ったの?キウイ」

「そう言ったよね」

「えーっ!!たった一つなんてよく恥ずかしくもなく買えるわね。みすぼらしい」

「あのさ、不味かったら二度と口をつけないよね。美味しいかどうかも分からない物を沢山買ってどうするの?残りを食べるのは誰よ。私でしょう?試しに一つだけ買うことの何が悪いの?」

「はあ...貧乏くさい。卯月のそういうとこすごく嫌」

本当に殺してしまいそうだ、こいつを。

胃痛に襲われて薬を飲む。もう誰か助けて。






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