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当時の日記より152@2010 10/24

朝から大変だ。何を出しても味覚障害で食べられないと言う。これならば絶対大丈夫っていうものは何かと尋ねると『お菓子と果物』という子供のような回答。前回の退院中には肉がどうの魚がどうのと文句を言われたから、野菜中心で乗りきった。ところが今回は「サラダと温野菜は食べられない」と言い張る。何度も言う。そんな味覚障害はない!

もう泣きたい。何を作っても文句か拒否。

「来週の火曜日、ヘルパーさんが来るからね。からあげ作ってもらおうね。あとひじきの煮物なんてどう?」

と声をかけると目を丸くして

「え?!誰が来るの?うちに?!なんで?!どんな理由で知らない人がここの台所で料理なんかするのよっ」

と怒り出した。

「そうしてくださいってこちらからお願いしたからだよ。それに火曜日に来るよって説明は前にもしたでしょ」

「看護師さんも来るんでしょ。そんなに毎日毎日人が来たら私が出かける暇がないじゃないのっ」

「何処に行きたいの?」

「スーパーに買い物行くのよっ」

「ねぇ、お腹心配じゃないの?途中でお腹痛くなったらどうするの?」

「もうお腹は痛くならないもん」

またそれかよ、いい加減にしてくれ。

腹が立つけれど相手にしても仕方ないので聞き流す。そろそろ昼食にしよう。「お昼だよ」と声をかけてから飲み物がないと辛いかなと思い、お茶をいれていた。

私のその姿を見た姫は、昼食だと声をかけられた記憶がスパッと飛んだらしい。ベッドから起き上がって着席するのではなく冷蔵庫にまっしぐら。漬物やら佃煮やらを取り出してテーブルに並べ始めたのだ。

姫は常々「漬物はご飯のおかずではなく、お茶請けでいただくものだ」と言う。だから食事の時は出さない。そして

「さぁ、お茶にしましょう」

と言いながら着席した。頭ごなしに否定しても気分を害するだろうから

「じゃぁお茶を飲んでからお昼食べようか」

と言ったらハッとした。昼食に呼ばれたのを思い出したようだ。

認知症はある時突然「坂道を転がるように」悪くなるのだという。姫の場合脳転移した箇所が記憶障害を引き起こしている。が、どっちでもいい。認知症になったことに変わりはない。

昼食後、突如探し物が始まった。姪に荷物を送ると言いながら

「ちょっと。私はここに京王の箱を2つ置いてたわよね。卯月何処にやったのよっ!」

この前、友達に荷物を送るってその箱使ってたじゃん。と思ったが、何をしたって私が捨てたという結論になって激怒するのが最近のパターンだ。

「知らない」

で済ませたら

「私が入院中、勝手に家に上がり込んで箱を捨てた」

と激怒。うん、もういいよそれで。

今度は「京王」という言葉に別のスイッチが入った。

「卯月!友の会は毎月きちんと支払ってくれてるんでしょうね!」

「うん。姫に言われた通りのことをしてるよ」

「何よそれっ!!」

姫、そこは怒るトコじゃないぞ。

「来店払いは満期が来たから解約しました。銀行引き落としのほうはそのまま継続になってる」

「解約だなんて頼んだ覚えはないわよっ」

「姫に覚えがなくても言われた私は覚えてるよ。毎月毎月払いに行かせるのは卯月に負担をかけるから満期が来たら解約してって。お金に関わることを私が無断で決めたと思われるのは心外だよ」

淡々と述べる私に勝ち目はないと思ったのか

「ここにおいてあった白いカーディガンは何処にやったのよ!」

と話題を変えて激怒。

「小銭入れもなくなってるじゃないのっ」

私はさしずめ平成の大泥棒といったところか。

辛い辛い辛い.頭がおかしくなりそうだ。命尽きるまであなたは私を苦しめるために存在してるのですね。


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