当時の日記より153@2010 10/25
昨夜、ベッドからむっくりと姫(母)が起き上がった。そろそろ寝支度の頃なので蒸しタオル作らなきゃと私も椅子から立ち上がると
「ねぇ、随分前から考えていたことなんだけど卯月に聞きたいことがあるのよ」
と言い出した。
「友の会なんだけど」
またかよっいい加減にしてくれよ。
「しつこい。今度は一体何よ」
さすがの私もキレ気味に返答。満期を迎えて受け取った買い物券と残高を確認させろと言うのだ。
認知傾向が強くなってきた辺りから執拗に言われてきた。実は昨年より満額となって受け取るのは紙の商品券やカードタイプではなく、友の会の会員証と一体化された。これなら読み取るだけで簡単だし、商品券などを発行する手間がなくなる。デパート側にとって有益な変化だが、年寄りにはそれがなかなか理解出来ない。(要するにパスネットみたいに一目で残額が分かるようなカードからSuicaに変わったようなもの)ましてや姫は認知症である。私が繰り返し説明したところで、単に会員証を差し出されているとしか思えないのだ。これじゃない受け取った商品券を出せと言われてまた一から説明してというやりとりを毎日続けていた。
会員証を差し出すと5分は眺めていただろうか。そして激怒。商品券を全て使い果たして見せるものがないから会員証を出してきたのだろう、お前は泥棒だという結論に至る。
「あっそ。そんなに私が管理することが気に入らないなら自分で持ってなよ」
「何言ってるの?私は卯月に迷惑をかけないように気をつかって言ってるんじゃないの?」
「いや意味分かんないし」
「卯月が理解出来なくても私が分かればいいのよっ」
腹が立つ。でも世話はしなくてはならない。ヒルドイドを手渡そうと入れていた袋を覗くと入っていない。沢山ありますという言葉が言えず、言われるがままに処方されてくる姫に嫌気がさした私は必要な塗り薬は袋に詰め、大きくマジックで薬の名前を書いて持たせている。昨夜その袋から取り出してヒルドイドを使い切り、新しい物を袋に入れたのだ。それが入っていない。姫自身もその経緯は記憶しており、何故袋に入っていないのか分からないと言う。
仕方ない。大量のストックは姫の目につかないところに保管しているのでそこから一本取り出して渡した。すると何故あるのかと激怒だ。袋に入れた新品を私が何処かに置き忘れ、それを思い出して持ってきたと思っている。説明するのも面倒だから怒られておいた。
そして今日。
「ねぇ、友の会のことで卯月に確かめたいんだけど」
止めて。本当に止めて、私気が狂うから。喧嘩寸前だったがそこに訪看さんがやってきたのでなんとか未遂で済んだ。
看護師さんが帰ってからスーパーに行くとうるさいので連れていくことに。これがまたとんでもなく化粧と着替えに時間を要する。
「ねぇ近所のスーパーだよ。そこまでしなくてもいいじゃない」
と口を挟むと
「何故近所でお洒落しちゃいけないのっ」
と食ってかかられた。TPOってもんがあるでしょうよと思ったが言わず。最後にコートを羽織るというので
「今日はすごく暖かいんだよ。コートは要らない。念のためフリースでも持っていく?」
この言葉にまた激怒。
「茶色なんてイヤに決まってるじゃないの!大体卯月は若いのに暗い色ばっかり着てるから私にもこんな色選ぶのよっ。年寄りが明るい色を着て何が悪いって言うの!年寄りはキレイな色の服を選んじゃダメとでも言いたいのっ!!暗い色の服でも着ておけとでも言いたいのっ!!」
正直な思いが口から出た
「こわい...」
スーパーで。たかだかスーパーで7000円超の買い物をして姫の気分はようやく落ち着いた。
ねぇ、私はあなたの車椅子を押して大量の荷物も抱えて。どれだけ大変だと思ってるの...。
夜。先生が来てくれる。今日は診察ではないが、たまたま立ち寄ってくれた。何かあればいつでも来てもらえると分かった姫は安堵。
長かった。お風呂を掃除して今日はいつもよりのんびり入浴しようと思っていたら姫が一言。
「明日こそ誰も来ないわよね」
だから明日はヘルパーさんが来るって言ってあるじゃん...。もう疲れすぎて寝られない。