当時の日記より172@2010 11/25
夕方、姫(母)から電話。
「今日はIさんがお見舞いに来てくれたわ。そうそう、Iさんの電話番号知らない?」
「知らないよ」
「忘れてきたみたいなの。確かに入れたのに。本当に知らない?隠してない?」
「知らないってば。今日会ったんでしょ。だったらいいじゃない」
「卯月は本当に人の話をきちんと聞かない。さっきから大分のIさんって言ってるじゃないのっ。お見舞いに来てくれたのは新宿のIさんよ!」
「今初めて大分って言った」
「だって新宿のIさんは今日お見舞いに来てくれたんだからわざわざ電話する必要ないじゃないのっ」
それも私が言ったんですけどね、もういいや。
消灯が過ぎてからまた電話が来た。個室に入れるとやりたい放題だ。
「ちょっと!大阪と東京は種類が違うんですってよ!」
「待って、何が?何の話?!」
「どうして卯月は人の話をちゃんと聞いてないのよっ春菊って言ったじゃないの」
いや...言ってないです...。
昔から主語を抜かしていきなり話し出すクセはあったが、今はすごくひどい。聞き返すとこのように『人の話を聞いてないっ』と怒る。もうお手上げなんだけど。
新宿のIさんの件だが、この方も患者さん。部屋番号が分からず受付で調べてもらった際「15F?そんな訳ないでしょう?!この前も15Fだったのにまた今回も個室だなんてありえない。8Fです。絶対8Fに入院したはずだからちゃんと探して!」って怒ったと言っていた、と姫が私に説明した。妄想も度が過ぎると恐怖しかない。
自ら希望して入った個室なのに私が閉じ込めたと。みんなが可哀想だと言っていることにしたいのだ。
11/26
姫から電話。
「病院の近くのスーパーに寄ってきて。細くて小さめの焼き芋とスーパーになら必ず売ってる「白雪」と書かれた干しイモを買ってきて」
いもパーティか。
「あのね、あそこのスーパーは焼き芋を一本ずつ袋に入れて売ってるの。だから小さくて細いかどうか分からないし、干しイモだってその「白雪」が必ず置いているとは限らないんだよ」
同じこと言わされる度に紙に書いて掲げてやりたい。説明するのが面倒だ。調子が悪い時ほど食品の形状にこだわる。
小田急でパンを買い、スーパーに寄って店内をくまなく探したが焼き芋は売り切れ。干しイモはない。惣菜とお菓子と野菜ジュースを買う。
赤い病で顔にアイスノンを乗せていたが、私の姿を見るなりとんでもない勢いで喋り出す姫。アイスノン落ちたけど。
「納得いかなくてあれから探したわよ、Iさんの電話番号。あったわよっだって私絶対に持ってきた自信があったんだから」
「何処にあったの?」
「電話よ」
「携帯の中?私登録したっけ?」
「何聞いてるのよ、私が探して見つけたって言ってるじゃないのっ」
「うん。意味分かんないや」
「絶対忘れてない。持ってきたはずだと思って探したらお財布のポケットから出てきたって言ってるの!」
いや、今初めて言ったね。財布にポケット...?まぁどうでもいいけど。
「電話じゃなくて財布の中ね」
無視。出たっ無視!!
「あーあ。ケーキが食べたいなぁ。大きいのは(普通サイズのこと)食べられないから小さくていいのに。どうしてケーキって一つがあんなに大きいのかしらね。4人部屋に居た頃、よくみんなに質問されたわ。『退院中はケーキ屋さんに行って気分転換してきたらいいのに、どうして姫はケーキ屋さんに行かないのかしら。お嬢さんが連れて行ってくれないのね。うちの娘は毎回ケーキ屋さんに連れて行ってくれるのに可哀想ねって」
それな。絶対言ってないから。話の中身がどんどん稚拙になっていく妄想。最近は腹が立つより笑いを堪えるのに必死だ。
退院してきたら一日中、こんな話に付き合わされるのか。地獄だ。