当時の日記より173@2010 11/27
姫(母)から夜電話がきた。
「師長がね来週になったらいつ退院でもいいって」
伝聞が出来なくなったのだな。今日私は師長と打ち合わせしている。病院側は私の疲労困憊ぶりを気にかけてくれており『可能な限り病院で預かりたい。火曜までは大丈夫だからあとで水曜退院はどうかしらって言いに行くわね』と言われていたのだ。
伝聞が抜けてしまった姫にそれを指摘すれば画策したとバレる。なのでそこは突っ込まずに会話をする。
「あれ、月曜日レントゲンが入ったからボタンのついてないパジャマを持ってきてって私に言ったよね。インフルエンザの予防接種もまだだし。いつ退院しても平気なの?」
「はぁ?月曜にレントゲン?!誰が言ったのよ」
「姫が。私に」
「そうっじゃぁ私がちょっと忘れてたんでしょっ!」
忘れたことすら忘れている状態は不安なんだろう。それはよく分かる。でもその苛立ちを全て私にぶつけられるのはたまったもんじゃない。
「H先生はまだ予防接種しないほうがいいって言ったじゃないのっ」
話が混乱している。H先生とは訪問医だ。
「姫、それはまた話が別だよ。H先生が予防接種をしてくれなかったのは胸水ひいたばっかりで咳が出るかも知れない。予防接種して副作用でだるくなったり咳が出てもどちらの症状で出ている咳なのか分からないから今は止めておこうねって話だったでしょ。それをイケメンに報告したら、だったら体調のいい時を見計らってここで注射しておいたほうがいいねって言われたじゃない」
無視。はい、無視!
都合が悪くなると唐突に話題を変える。
「昨日スーパーから買ってきたお惣菜ね、いっぱい食べたからもう止めてよ!」
どんな言い訳だよ。
「あのね、夜中の3時38分に目が覚めたの。(アスペルガーは数字に強いこだわりがある。そして正確に伝えないと気が済まない)なんだか頭が痛かったし、眠れない気がして薬をもらうことにしたの。ナースコールして「カロナールとデパスが欲しい」って伝えたら「ごめんね、デパスは出してあげられないからカロナールだけ飲んで」って言われたのよ!」
「なんで?」
「おそらく夜中の3時を過ぎたら安定剤は出しちゃいけない決まりなんだと思う。眠れないならそのまま起きてろって言いたいんでしょう」
「そんな。そんなこと今まで言われたことないじゃない」
「でしょう!私も納得いかなかったから朝主治医が来た時に質問したの。そしたら『薬の管理は全てイケメンに任せてあるから確認する』って」
ま、また話がおかしな方向に進んでる。患者の薬を理解してない主治医などいないだろ。黙って聞いていたけど。
「そしたらね、イケメンがきたの。『姫はデパスを飲みなれているんだから安心して飲んでください』って」
「ちょっと意味が分からない。飲んでいいか悪いかじゃなく、追加のデパスを出して貰えなかった理由が知りたい」
「イケメンはね3時を過ぎたら飲ませてはいけないなんて指示はしてないから看護師が勝手に決めたんじゃないかって」
ははーん。見えてきた。姫は今の担当看護師が好きではない。妄想で攻撃する対象にその看護師が加えられたのだろう。
「分かった。確認してくる」
「止めてよ、もうすぐ退院なのに波風立てないでよ」
「文句を言いに行くんじゃないよ。3時過ぎにデパスを飲んではいけないなら、家でも同じことでしょ。分からないことを質問することは喧嘩売るのとは違うよ」
姫、大激怒。
「あのね!今までは夜中に追加で飲む時はデパスを半分に割ってたの、包丁で!それがここ最近1錠まるまる出てくるの。どうしてかって言うとね、含有量が減ったからなの。だから中毒にはならない。安心して飲んでいいですよってイケメンが言うのっ」
そういうことか。家で訪問医から言われた言葉とここで起きてることがぐちゃぐちゃになっているんだ。薬に関しては記憶違いが元で失敗続きなだけに本人も気がかり。そこでこれまでの記憶を縫い合わせて訴えるからこんな訳の分からないことなっているはず。
探偵になれるじゃん、私。
12月1日に退院したら次の入院は15日あたり。丸二週間この人とびっちり生活なんて無理だ。そして病院は年末年始だからと次は早めの退院を促してくるに違いない。クリスマスも年末も正月もずーっとこの人と一緒か。気が重い。