当時の日記より200@2011 2/2
なんだかすごく顔色がいい姫(母)。本人も調子がいいから少し歩きたいと言う。見守り付きならいいよと許可を得たので点滴台を杖代わりに押させて久しぶりに歩かせる。
「だって歩かなきゃ体力つかないじゃない」
とやる気まんまん。そしてすぐ廊下のソファにへたり込み苦しいを連発。点滴台をがらがらと私が引っ張って病室に戻し、代わりに車椅子を取って来る。本人を落ち着かせてから乗せた。
これで分かっただろう。これほどまでに体力が無くなっている自分に。
と思ったら
「ずっと歩いてなかったから、いきなり歩いて疲れただけ。これからは毎日歩こうっと」
全く意に介さず。想像力の欠如はアスペルガーの特徴ではあるものの、逆にこのノー天気な所が病状の進行を遅らせているのだと私は思う。
ただ会話はいつにも増しておかしかった。
「ねぇ、手錠あるでしょ」
患者取り違えを防ぐためかフルネームが記載されたリストバンドが付けられる。患者はそれを手錠と呼ぶ。
「あれね、何か月かに一度きちんと付けているかどうか確認する専門の人がいるのよ。さっきその人が師長と一緒に部屋に来てね、どうしてつけてないんですかって聞くの」
「専門の人が居るの?へぇぇ。看護師でもヘルパーでも誰だって出来そうな...」
「いるのよっ今来たって教えたでしょっ!!」
「あーはいはい。で?」
「なんでつけてないんだって怒られたの。だから採血に邪魔だからって看護師に外された話をしたの。そうしたら早くつけなさいって」
「その人、手錠専門の人なんでしょ?だったら付けていけばいいのに」
「それはしないわよ。つけるのは看護師の仕事だから」
「そうなんだ...。え、いつから手錠してないの?」
「それは聞かれなかった」
「違う違う、いつから外してた?って私が姫に質問しているの」
「だからそれは質問されなかったって言ったじゃないの!!」
「うんうん。それは分かったよ。では私からの質問です。いつから外していたの?」
「卯月って一体なんなの?どうして人の話をちゃんと聞けないの?それは聞かれなかったって答えてるでしょう!」
もういいや。
夕食後の薬を見たらマグラックスが入ってなかった。最近また便秘気味なので再開させるかどうか先生に聞いてもらえませんか?と伝言しておいた。姫に言っても忘れるだろうから、私が看護師に直接伝言した。
「姫、マグラックスは飲んでない?」
と聞くと今朝からまた飲み始めたと言う。
「じゃ入れ忘れたんだ。貰ってくるよ」
とナースステーションへ。
看護師は
「あ、それね。服用するとすぐに下痢するから姫がどうしても飲みたいって言う時だけにしたの。要らないって言うから入れてないのよ」
姫の説明と全然違うし。
それを姫に報告すると
「だからそうだって卯月に説明したじゃない。で?貰ってきてくれたの?!」
いや、もう訳わからん。飲みたいのか飲みたくないのか。意思の疎通が上手くいかないって本当に大変だ。