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当時の日記より141@2010 9/12
パジャマの袖口に薬液をつけて変色。小さなシミ一つ許せない姫(母)なので、新しいパジャマを要求されている。ユニクロを物色していると姫から電話。
「騒がしいわね、外なの?」
「うん。ユニクロ」
「ユニクロって何?家の近所にないから分からないわ」
「いやいや何度も連れて行ったでしょ、洋服屋さんだよ」
「え?マイヤー(愛犬)も一緒に?」
「洋服屋さんに犬は連れて入れないでしょ」
また微妙に会話がズレる。
消灯後、また電話がかかってきた。一応病室内で携帯は禁止とされているが、最近は堂々とかけてくる。決まりごとに厳しい姫なので待合室まで移動してかけてきていたが、この頃からお構いなしになった。
「昼間の電話のあとずっと考えてたんだけど、ユニクロってお洋服屋さんじゃない?」
「そう言ったでしょ」
「お店の名前だけ言われたって思い出せる訳ないじゃないの。卯月は本当に意地が悪い」
「説明したよ」
「あのね、〇〇さん(同室の患者)はねお家の近所にしまむらがいっぱいあるんだって。私もしまむらでパジャマ買ってよ」
いやいや、あまりにもしつこく言われるから以前買ったら「こんな安物いらない」ってつき返したじゃん。電車乗り継いで1時間以上かけて行ってきたのに。
「今夜は食べる物がなくて困ったわ。明日はちゃんと買ってきなさいよ。京王でプルーンと病院の近くのスーパーで焼き芋が始まったって言うからそれも忘れないようにするのよ」
9/13
京王でプルーンとパンを買い、病院近くのスーパーで惣菜とヨーグルトを購入。よしと思って店を出てから焼き芋を買い忘れていたことに気づきUターン。大荷物で病室到着。
「たった今、先生が挨拶にきたわよ。追いかけなさいよ」
姫の主治医は40代のベテラン医師。担当医は20代の若い医師だ。研修を終えて移動になったりと1年弱で変わることが多い。今回の担当医は自ら志願して離島の診療所に行くことになった。2か月で戻ってくるのだがその挨拶に来たらしい。
姫のいない場所で担当医と立ち話。先日退院したくないって言ってたと告げると
「あぁーあれね。抗がん剤がビノレルビンに変わったでしょ。3週か4週に一度なんだけど、多分姫の体力じゃ3週ごとは厳しいの。でも主治医は出来たら3週ごとにしたいって。そうなると退院しても数日で戻ってこなきゃならない。その時に大部屋はいっぱいです、個室にって言われるのがイヤでベッドを死守したいから退院したくないって言い出したみたいよ」
そういうことか。もともと人と積極的に関わることが苦手な姫だが、病院では個室を嫌がる。気持ちを紛らわせたいのかも。
「それから介護サービスの件ね。ナース一人でダメなら私も加勢する」
ここで綿密な計画会議がスタートした(笑)。みんなが一丸となって私の負担を軽減しようとしてくれている。その思いに感謝。