薬味のおいしさが分からないわたしが、今日もしょうがをすりおろす理由
薬味のおいしさが、未だによく分からない。
小さい頃から偏食で、今でも好き嫌いが多いわたし。食べられるものは大人になるにつれて増えてきたけれど、未だに食べられないものも多い。特に、薬味と呼ばれるもののおいしさが、一向に理解できない。しょうがも、わさびも、大根おろしも、もみじおろしも、ネギも、別に全然無くていい。というか、無い方がおいしいとすら思う。お料理に味変も求めてないし、ちょっとしたアクセントもいらない。薬味を入れて、余計な風味を足さないでほしいとすら思ってしまうわたしの舌は、まだまだお子ちゃまなのかもしれない。
一方で、わたしの夫は、結構食にこだわりを持つタイプの人間だ。わたしが不必要だと思う薬味ももちろん味わうし、外食だけでなく自宅での料理もそれを求める。わたしの中での個人的に無くていい薬味ナンバーワンはしょうがなのだけれど(なくていいというか、単純に好みではない、どちらかというと嫌い)、彼は「この料理にはもうちょっとしょうがをきかせた方がいい」などと言われる。
現在の我が家の料理担当はわたしなので、料理の味付けはもちろんわたし。よって、わたしの好みの味付けの料理が食卓に並ぶ。でも、完全にわたしの好みに寄せてしまうと、にんにくもしょうがもねぎももみじおろしもなにも使わない料理になってしまう。さすがにそれでは、同じ料理を食べる夫に申し訳ないという気持ちがあるが故に、とりあえずは入れておくことにしている。その、"とりあえず入れておく"の分量が、彼にとっては物足りないみたいなのだけれど。
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薬味は、なるべくチューブで済ませたい。でも、夫は言う。
「しょうがは絶対にすりおろした方がいい」
正直、面倒くさい。わたしはそもそもしょうがが嫌いだ。しょうがの風味なんてものは、むしろ無い方がわたしにとっては嬉しい。それなのに、あえて風味をよくするためにチューブではなく、しょうがをすりおろす手間を加えないといけない。あぁ、面倒くさい。
なんて、心の中でぶつくさぶつくさ言いながらも、チューブではなくしょうがそのものをスーパーで買ってくるわたしは、なんだかんだで彼に「おいしいものを食べてもらいたい」という気持ちがあるからなのだと思う。
面倒くさいなぁと思いながら、保存のために今日は冷蔵庫に保存していたしょうがを2つ取り出して、全てすりおろして、小さじ1ずつの量に分けて、冷凍保存に切り替えた。冷蔵保存で腐らせてしまった過去があるため、同じ過ちを犯さないようにするために。
自分の好みではない食材に手間をかける。しょうがをせっせとすりおろしながら、「これが誰かと家族となって生きていくことなのだなぁ」と、しみじみと思った。
自分の好きじゃないことでも、手間だなぁと思うことでも、自分の大切な人を想えばできることはある。わたしがせっせとしょうがをすりおろすのは、他の誰でもない夫のため。そのおいしさは未だによく分からないし、なるべく料理には入れたくないと思ってしまう。でも、彼が毎日疲れて仕事から帰宅した後に食べる夕ご飯は、出来る限りおいしいと思ってもらえるものを出したいとは思う。
さて、今日の夕飯は一体何を作ろうか。