在宅ワークで気を付けたい、無意識の過剰労働
フリーランスや個人事業主には身近なテレワーク。企業勤めの人たちにも、今回のような緊急事態を機に、ようやく少しずつ取り組まれ始めたかという頃だろうか。
2017年に発表された、ILO(国連 国際労働機関)と欧州生活労働条件改善財団(Eurofound)によるテレワークに関する報告書がある。
"Working anytime, anywhere: The effects on the world of work" いつでもどこでも働く:仕事の世界に対する影響
https://www.eurofound.europa.eu/publications/report/2017/working-anytime-anywhere-the-effects-on-the-world-of-work
ベルギー、フランス、フィンランド、ドイツ、ハンガリー、イタリア、オランダ、スペイン、スウェーデン、英国といったヨーロッパの10カ国に、アメリカ、アルゼンチン、ブラジル、インド、日本を加えた15カ国で実施された調査研究結果のまとめだ。
そこでは、テレワーク及びモバイル・ICT利用労働によって、多くのメリットを享受できる一方で、デメリットになりうる懸念事項も述べられている。
メリットは、
「労働時間に関する自己決定権の増大が労働時間編成の点でより高い柔軟性をもたらす」ことや、
「通勤時間の短縮が全体的なワーク・ライフ・バランスの改善と生産性向上をもたらす」こと。大体想像しやすい。
一方で、警鐘が慣らされているのが、
「長時間労働に陥る傾向」、
「仕事とプライベートの境界が曖昧になり、ストレス水準を高める可能性がある」ことなどだ。
「在宅勤務だとサボる人が増えるのでは?」という声も周りでよく聞くが、
このレポートが発信しているのは、逆に「働きすぎる」ことへの危険性だ。
日本ではシエスタ(お昼寝)のイメージをもつ人がまだ多いスペインだが、実際、スペインに住む夫の友人たちと話していると、仕事の多さや大変さ、時には長時間労働も、というのは日本と変わらない。違いは、オンとオフの切り分けは日本以上に明確な人が多いことだ。
中には、今週は仕事を早く終わらせるために、
朝7時には出社して仕事に取り掛かり、
ランチは片手ですぐに食べられるサンドイッチ。
15時に仕事を終えて職場を去り、
その後は携帯やパソコンで仕事のことは一切見ない。
というワークスタイルの人や、
1か月の休暇をとるために、
とにかくそれまでに仕事を終わらせようと、
仕事漬けになる人。
しかし休みに入ったら、
一切携帯もパソコンも仕事のメールやAPPは開かない。
ここまで「職場での仕事」と「プライベート」のオンとオフが明確な場合、在宅ワークスタイルが普段の基本スタイルになると、その境界が曖昧になる可能性が高いというわけだ。面白いのは、それが「過剰労働」につながる危険性を述べているところだろう。日本のテレワーク反対論には、「仕事をしなくなる」という疑いの目があるがその反対だ。
さらにEurofoundのオスカル・バルガス研究員は、
「無給の残業と見ることができる、自宅で追加的に働くなどといった近代通信技術を用いて行われる補足的な仕事の問題に取り組むこと、そして労働者の健康と安寧に対する悪影響を回避するために最低限の休息期間の尊重を確保することが特に重要」と強調している。
これは、テレワークかそうでないかに限らず、
すでに日本では普通に起きてしまっていることではないだろうか?
家に帰ってからも、休みの日も、スラックや社内メールをチェックしてしまう、
週末は午後まで寝てしまう(くらい体が疲れている!)、
といった、常に休まらない人や、疲労がたまっている人も多い。
日本では、職場にいても、仕事とプライベートの境界が曖昧になっているケースも少なくない。夜のつきあいが増えれば飲酒機会も増え、気が付かない間に眠りに落ちていた時の睡眠は、脳は眠っておらず休めていない。そしてだるい体を持ち上げて翌朝出勤するが、頭が冴えない…。
普段から、オンオフを明確に意識して働いている人にとっては、テレワークに取り組む場合、休息時間を意識してとることが非常に大切になるといえるが、上記のような慢性バーンアウト状態の仕事人にとっては、場所や働き方が変わっても、アウトプットに大きな差は出ないのではないだろうか。
最後に、上でも述べた
在宅勤務でサボったり副業したりする人は?
という声に対して、
いち早くテレワークを導入したGMOの代表熊谷さんへのインタビュー記事に痛快な回答があった。
「これは、そもそもなんですが、在宅勤務でサボったり、副業するような人は、会社に来てても、きっとサボったりしてる人なんですよね(笑)。だから、在宅勤務が採用できないというのでは、もはや今の時代の会社ではないですね。むしろ、在宅勤務の方が生産性が上がり、業績が上がる会社にしていかなければならないと考えています。」
https://news.yahoo.co.jp/byline/kandatoshiaki/20200228-00164862/
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