活動にイラストで『伴走』するということ
大切な人を自死(自殺)で亡くされた方へ。
自死遺族支援弁護団という、遺族への法的支援を目的とした弁護士さんたちがいます。
イラストレーターとして関わらせていただき、もう6年になります。
この度、来たる3/13(土)の正午より翌日正午までの24時間、この自死遺族支援弁護団が、電話とLINEによる無料法律相談※を行うのにあたり(※通話料はご負担ください)、今まで私が携わらせていただいた制作物を振り返りながら、弁護団のご紹介をする次第です。
どうか、この情報を必要とするひとりでも多くの方に、届きますように。
3/13(土)開催の24時間無料法律相談・詳細
自死遺族支援弁護団・24時間無料法律相談
《受付期間》
2021/3/13(土)12:00〜3/14(日)12:00までの24時間
《連絡先》
電話番号:050-5526-1044
ラインID:@540ifphl
《概要》
大切な人を自死(自殺)で亡くされた方を対象に、3/13(土)の正午から翌日正午までの24時間、複数の弁護士が電話とLINEとで、無料法律相談を受け付けます。
通話料はご負担ください。
私はチラシをまるっと担当いたしました。
このチラシに込められた、弁護団からのメッセージを抜粋します。
大切な人を自死(自殺)で亡くされた方へ
あなたの法的な悩みを、私たち、弁護士に話してみませんか。
一緒に問題を整理し、解決していきましょう。
この日は正午から翌正午の24時間、電話とラインとで、受け付けています。
落ち着いて相談できるように、遅い時間帯でも、大丈夫です。
どうぞ安心して、私たちにアクセスしてください。
そうなんです。この日は、誰もが寝静まった深夜でも、受け付けています。
電話、ライン、どちらでも使いやすい方法で、落ち着いて相談ができるようにと願っています。
私と弁護団の出会い
私と弁護団との出会いは、遡ること8年前。
2013年の頃でした。
当時、私は専業主婦としての生活や初めての子育てで、モヤモヤと言葉にできないけど、とにかくしんどいという思いを抱えており、カウンセリングを受けていました。
そのカウンセリングの中で、当時描いていた子育て日記的なイラストを見せたのがきっかけで、カウンセラーさんがNPOや弁護士と協働して立ち上げようとしていた活動、『ぐりサポコミック』に誘われたのでした。
『ぐりサポコミック』は、「グリーフ」を「サポートする」「コミック」のことで、大切な人を自死(自殺)で亡くした人に向けて、Web上でマンガを配信するものでした。
配信当時の新聞記事を引用します。
私もマンガを描きながら勉強したので、まったく専門的に説明できないのですが…
グリーフとは。
英語では、grief。直訳すると悲嘆なのですが、大切な人やものなどを失うこと(喪失)によって生じる、その人なりの自然な反応であり、状態であり、プロセスといわれます。
身近で大切な人を突然自死で亡くすというのは、明日も、これからもこうだろうと、経験にもとづいて予測していた未来を、いきなり奪われることなのだと、足元の地面が、自分を取り巻く世界が、一瞬にして崩れ落ちるような感覚なのだと、遺族の方に伺ったことがあります。
そんな中でも、仕事や子どものごはんなどの日々の生活のこと、行政上の手続、法律上の手続等々、やらなくてはいけない事は山積していきます。
また、色んな感情も出てきます。
もういない、という悲しみ。
なぜ、という戸惑い。
私が〇〇していれば、という自責の念。
後悔。罪悪感。
怒りや、ホッとしたという安堵を感じる人もいるといいます。
大切なことは、どの感情や反応も、正常で自然なことなのだと、本人も周りも理解すること。
安心してその感情に向き合ったり、自分の体調など、必要なケアをしてあげること。
私はそのように理解しています。
グリーフについて、個人的にこの本が読みやすくて、分かりやすかったです。
しかし私たちが生きているのは、個々に寄り添うことが難しい社会でもあります。『いつまでも泣いていないの』とか『故人を安心させるために、早く元気になってね』といった、個人に根拠のない考え方は、多く聞くところです。
助けを求めたくても、自分の想いや状況が理解されにくいからと、それを表に出せないことはありませんか。また特に今の、予測すらつかない状況に、不安を抱え込み、口をつぐんでしまってはいないでしょうか。
『ぐりサポコミック』では、私はそのような人々に向けて、様々な角度からイラストマンガを描きました。
弁護団の活動理念。とことん、読み手が受け取れるカタチに
2015年。ある暑い夏の日、私は打合せの席についていました。
『ぐりサポコミック』の法律担当である弁護士、生越さんから、自死遺族支援弁護団の活動を説明する現存のリーフレットを、イラストを多く用いて作り替えたい、というご依頼を受けてのことでした。
自死遺族の抱える法律問題。
私も話を聞くまで、まったく想像できませんでした。
大切なことは、時間。法律上の請求にはそれぞれ、期間制限といって、期限が設定されています。何もしない(できない)ままでは、時間の経過とともに、法律上の不利益が生じてしまうのです。
生越さんの書かれた本がこちら。これも、専門的な内容がとても分かりやすく書かれています。
だから、弁護士にアクセスしてほしいのだと。
弁護士は問題を仕分け(整理)し、緊急度に応じて、急いで手をつけなくてはいけないものと、そうではないものとを一緒に精査してくれます。また、時に弁護士は盾となり、適切な手続をします。
弁護士は法律問題を適切に処理してくれる専門家として、負担を減らして「余白」を作り、遺族が安心して自身のグリーフに向き合えるサポートを行うのだと、私は理解しています。
…これだけの情報を、一枚のリーフレットに!
しかし、読み手の立場では、多過ぎる文字は受け取れない。
ここで、そもそも遺族は様々な感情が押し寄せる、非常に混乱している中で、なかなか冷静に文章を読めないのだという問題が。
せめて2行くらい。
だからイラストなのだと。
また、ただでさえ「弁護士」というと堅苦しく、敷居の高いイメージが強い。
安心してアクセスできる存在なのだと、伝えたい。
だからイラストなのだと。
よくぞ、どこの馬の骨とも分からぬ私に、お声がけいただいたなぁ…
あの時は駆け出しも駆け出しで、伝えたい想いをまとめることから、イラストと、デザインと、相当ボリュームのあることに取り組んだと思います。
イラストとかデザインというのはこうするもんだ、なんて、右も左も分からず、とにかく必死で取り組んだのでした。
(いきなり10,000部作るっていうから、ちゃんとした印刷データを入稿せねば、って、印刷会社の窓口までいきなり聞きに行ったりしたな。今思えば、ネット上にいくらでも検索できるし、問合せフォームを使えば、と思うんだけど、検索キーワードすら出せない時は、人とのコミュニケーション万歳、とつくづく思う。とても親切に答えてくれた印刷会社は、ウェーブさんです)
たくさんたくさん試行錯誤をして、生まれたリーフレットがこちらです。
色彩やフォント、囲み罫線の角が丸いことまで、とことん優しさと柔らかさを追求しました。
A4サイズを、「C」のように三つ折りにしているリーフレット。
左上のコマから、下へ、右へと読み進めることができます。
そうそう、真ん中のコマのネットワークの図。自死遺族支援弁護団は行政やNPO、カウンセラーなど、他の支援団体と連携をとっていることも強調しておきたいと思います。最初の一歩には大きな勇気を必要とするけど、必ず、必要としているところにこの連携で「繋ぐ」から。まずはアクセスしてみることがどれだけ大事か、伝わればいいなと思います。
表紙、中折り込み面、裏表紙はこのように。
たくさん汗をかいて作ったから、納品したときは『はー、これで無事終わったな~』と胸をなでおろしたものです。
しかし、このリーフレットはその後も増刷に増刷を重ねており(私の手元で増刷した分だけでも35,000部)、私の中ではひそかに【重版出来】という名が付けられています。
私のイラストが入ったリーフレットが、『手に取りやすい』『取っておきたい』と思われることは、本当に嬉しいことです。今もこうして変わらず増刷を続けていることに、すごく頑張ったんだなぁ、すごく価値のあるものを作ったんだなぁ、と誇りでいっぱいです。
そして、ホームページのリニューアルへ
さて、お気づきでしょうか。前回のリーフレットでは、弁護士やその他支援に携わる人たちが、動物で表現されていることに。
弁護士の表現に、すごく苦労したのです…
今でも、どこまで具体的に描いて、どこまで抽象化するか、というのは時間がかかります。全方向に配慮をし、全てを包括させようと思ったら、性別も年齢も中庸である(?)「全身タイツ」な人物像になってしまう。
話を元に戻すと、苦労した結果、中性的な動物で、頼りがいがあって親しみやすいキャラクターの『くま弁護士』が生まれたわけです。
白くまらしく、なで肩の弁護士。色々表情も想像しやすくて、私のお気に入りです。
2018年。リーフレットの完成から2年後、今度は自死遺族支援弁護団のホームページリニューアルにお声がけいただきました。
リーフレットのくま弁護士で行こうかという話もありましたが、今度は人間でキャラクターを作ることになりました。
これもたくさん試行錯誤して、数もたくさん描きました。
イラストにする、というのは、ちょっと感覚的な話なのですが、私にとって伺った話をどうすくい取るか、ということです。
例えば、「自宅を訪問する」「調査する」といったことを伝えたいとして、「飛行機に乗っている」ことで相談者の元に赴くことや、「虫眼鏡」で調査を表すこともできます。だけど、私はもう一歩具体的に踏み込むというか…『遠方の方や、体調が悪くてご自宅から出るのがお辛い場合は、事案や必要性に応じて、自宅に訪問することも可能』と、ここまで聞き出したり、(打合せに弁護士事務所に伺っていたので)実際に書類をどう扱うかを見せてもらったりして、ようやくイラストにできるのです。
幸い、時間をかけてでも良いものを、という意向もあり、私の画力の向上とともに、より具体的で、現実的でありながら、スッと入ってくる描写になったのではないかと思います。
ズラーリ(これでも一部)
弁護団の方々は、時間をかけて議論を重ね、より良いものにしていこう、という熱量がとても高いです。
法律の用語は、どれだけお堅いと言われようと、意味がブレないようにそのまま使う。だけど、それでいて伝わるものにするには。
推敲に推敲を重ねましたねぇ…
たくさん話し合ったし、私もたくさんラフを描いた。まさに一緒に創り上げた、イラストたちです。
そして完成したホームページのトップページがこちらです。
(リンクを貼っているので、画像をクリックで弁護団HPに繋がります)
弁護団の活動が、より多くの方に広まりますように。
クリエイターとして、このように伴走させてもらえるのは誉れであり、喜びである
本当、このひと言に尽きます。
これからも精進を続け、活動と人をつなぐイラストレーターでありたいです。