セレモニースタッフに向いていたはずなのに。
20代、セレモニースタッフに従事していた。
いわゆる「町の葬儀屋さん」。
私の仕事はお通夜と告別式における式典ホールスタッフであった。
通夜にて、兎にも角にもと一目散に駆けつけてくださった方々を出迎える最初の顔。
「ご焼香の最後尾はこちらとなってございます。階段に沿ってゆっくりとお進みください。」
笑顔だなんてとんでもない。
口元を引き締めて、しかし声は張る。
列の最後尾を示す。
その日は勤務して以来初めての大規模な急なお通夜であった。
大手会社のお若い故人様ほど、参列者は多く、そのご家族も赤ちゃんからご年配まで。列は3階にまで及ぶ。
怪我人を出さないように落ち着いて並んでもらい、ご焼香の最後尾を案内し続ける。
長時間に及ぶ通夜の後、チーフ(戸田恵子さん似)にわざわざ呼ばれ、褒めに褒められた。
「日和さん、座って。
お通夜ってね。
本当に心細い思いをして皆様駆け付けるのよ。
お通夜に駆けつけた方の
驚き
嘆き
悲しみ
不慣れな不安。
そーゆーのを全て受け止めるのが、ここでの最初の顔、そう、ご案内係の役割なの。
今日のあなたは、表情、動き、行き届く落ち着いた声。素晴らしかった。
この仕事を続けなさい。
立派なチーフになるわよ。」
、、、、、。
友よ。
ここまで人様に全開で褒めちぎられる経験など、アイドル以外そうそう無かろう?!
セレモニースタッフだったのか、、!
セレモニースタッフだったのか、、、!
私の天職はっっ!!
目が眩むほどの感激。
当時劇団員だったことで、人としての機微を培いたい、という、下心が強く所望したお仕事であったが、いつのまにか業務そのものにやり甲斐を感じていた。
正職とさせていただくならこれしかない。
本気でセレモニースタッフに臨んでみよう。
もちろんのこと、世の中はそんなに甘くはないさ。
それはまた次のお話。