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酒を捨てたら、不要なものを捨てるようになった

 断酒をして50日が経った。

 無理に酒を勧めたのは、「酔っぱらってないママつまんない」と言った我が子だけである。世の中は進んでいて、「酒を止めたんです」と言えば「そうかそうか」と言って放っておく人が増えた。

 あんなに好きで、毎日飲んでいた酒を止めると、今は「なぜそこまでして飲んでいたのかなあ」と感じることは多い。体調がよい。肌と髪が生き返った。感情の起伏が減った。カードの引き落とし額が減った。時間が増えた。

機嫌がすこぶる良い。

 あんなに好きだった酒すら邪魔だったのである。好きでもない物に、自分の時間や自分の好きな空間を取られてるんじゃないか。

 なんだ、酒は邪魔なものだったんかい。

 自分の身の回りにある、「不要だけど、惰性でそのままになっていたもの」が気になり始めた。

 まず、見たのはスマホ。アプリにある、未読の赤い数字。気になる。

10000件未読がザラだった。

 10000件以上溜まったメールを捨て始めた。ヤフーメール、Googleメール、とにかく捨てた。物を買って山のようにくるメルマガ配信や、ダイレクトメールも一つ一つ配信を解除した。パスワードを要求されるが、よくわかんないので、パスワードを適当なものに再設定して、ログインをした。慣れてしまえば、なんてことはない。酒を止めるのに比べれば。

 次に、クローゼット。物、多すぎじゃないかね。

こんなもんじゃない。

 しかし、これは難しい。メールと違って、視覚と感情に訴えてくる。時間もかかる。断捨離本が売れるはずである。私のモチベーションを上げてくれた本はこの2冊。

「ガラクタ捨てれば自分が見える」カレン・キングストン
「ジジイの片づけ」沢野ひとし

 モチベーションを上げながら、こつこつクローゼットの整理。子どもの小さいころの体操服は、フリーマーケットへ。

 そして、キャリア。上を目指すことって、大切?

自分だけのキャリアプランが要る。

 それで、管理職を目指すのを止めた。「これから40年の人生に○○は必要か」というのが私の問いだ。○○に管理職を入れたとき、「要らんな」という答えが出た。未練はある。絶対ならない、とも言えない。けど、今はいらない。やりたいこと、自分の好きなことと、管理職になってからの時間と労力が釣り合わないからだ。

 そう決めると、妙にやる気になってきた。「もっと今の職務で高みを目指してやる!」私は真面目である。

 割り切って自分の勤務時間を管理するようになった。遅く出社して早く帰る。しかし仕事の内容はこれまでと変えない。今の職でできる、最大限のパフォーマンスを考えるようになった。仕事の中で「学ぼう」など、モチベーションも上がっている。不思議なものである。

 自分に要らないものがこんなにあったなんて。酒をずっと止め続けたら、俗世も捨てそうな勢いである。

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