柿食べぇ
祖母は京都人
冷蔵庫から出てくる魔法
街路樹の紅葉と
空の汚れも一掃する程の北風。
晩秋から冬への移り変わりを感じた日曜日、
近くに住む祖母の家に行った。
祖母は1人で集合住宅に住んでいるのだけれど、
午前中はお日さまがたっぷりと差し込み、
部屋に上がると
ほっこりと温かかった。
久しぶりに訪れたので
近況をあれやこれやと話しながら、
束の間の時間を過ごした。
帰り際になって、
「そや、柿剥いといたんや。柿食べぇ」と、
綺麗にカットされた柿が
フォークが添えられたお皿にのって
冷蔵庫から出てきた。
祖母は京都人。
私の祖母は、いつもこうして
季節のフルーツや
ちょっとしたお茶菓子を用意しておいてくれるんだ。
身内なのに。いつ行っても。
「明日行くね」と前もって言おうもんなら、
きっと張り切って用意してくれるんだろうな。
なんて、なんだか、
わざわざ良いのに、という遠慮と
今日は何かな、という図々しくも嬉しい期待が
入り混じる、不思議な気持ちになる。
冷蔵庫から出てくる小さな魔法を見て
本当は嬉しいが勝っているのだけれど。
綺麗に皮が剥かれ、
カットされた柿を見て、
京都らしさを感じたり。
おばあちゃんの孫
おばあちゃんの前では
素に“おばあちゃんの孫”でいられる。
両親に対して今でも時々抱いてしまう、
反抗期の名残のような、尖った感情
(いつまで尖ってるんだろう…)
そんな自分は出てこない。
つらつらと文字には出来ないけれど、
「ああ、なんか、嬉しい。」
そう思った。
祖母の気持ち、美味しい柿、
帰る前は祖父の仏壇に手を合わせて、
使い方が違うけれど
私なりに“整った”
そんなひと時だった。
乾燥対策ぬかりなく。
また明日
Ayako