《神話-6》狩猟の女神アルテミス
こんにちは。
Ayaです。
今回はアポロンの妹・アルテミスについてとりあげます。
アルテミス
アルテミスはゼウスとレートーの娘として生まれ、アポロンの双子の妹とされています。実は姉説もあり、その場合では赤子でありながら母の出産を手伝ったというエピソードになっています。これはアルテミスがもともと豊穣や出産に関わる女神であったことに由来しているのでしょう。
アポロンと同様にアルテミスも古代ギリシア人の神ではなく、先住民族の神であったと考えられています。そのため、月そのものの神にはセレネー(ヘリオスの妹)がいて、アルテミスは『月光』の神とされました。ローマ神話では同一神とされています。
アポロン同様に弓矢の名手とされたこともあり、次第に狩猟の神として崇拝されるようになりました。またもともと出産に関わる神とされたので、女性が産褥死すると、アルテミスが苦しみから解放したと考えられていました。
アクタイオン
アルテミスはヘスティーア、アテーナーとともに『三処女神』に数えられています。彼女たちは永遠の処女をゼウスに誓った女神たちでした。なかでもアルテミスは潔癖に近く、そばに仕えるニンフたちにも『処女』を要求しました。(詳しくはこちらをご覧ください)
アルテミスの日課である狩猟が終わると、彼女とその付き添いのニンフたちは水浴を行います。このシーンはよく絵画に取り上げられています。
そんなとき、テーバイの王子アクタイオンが通りがかります。彼は仲間と狩猟をしていたのですが、アルテミスの聖域に迷い込んでしまったのです。水浴び中のアルテミス一行に遭遇してしまいました。
アルテミスは裸を見られたことに激怒、アクタイオンを鹿に変えてしまいます。鹿に変わったアクタイオーンは哀れにも自分の猟犬たちに噛み殺されてしまいました。
オリオン
カリオペーやアクタイオンのエピソードからも男性嫌いの激しさが伺えるアルテミスですが、一度だけ心惹かれた男性がいました。
彼の名前はオリオン。海の神ポセイドンが人間の女性に生ませた息子で、ギリシア一の狩人でした。
酒と女を好む粗野な人物でしたが、すぐアルテミスと行動を共にするようになりました。アルテミスも最初は相手にしていませんでしたが、押しに弱いのかオリオンの男らしさに恋心をいだきます。
この状況を苦々しく思っていたのが、兄のアポロンです。文化的な彼は粗野なオリオンとは折り合いが悪く、なにより『永遠の処女』である妹が男と常に一緒にいることが許せなかったのでしょう。
アポロンは海辺で休んでいたオリオンをサソリに襲わせました。オリオンがサソリから逃れようと海に入ったところで、彼を探すアルテミスがやってきました。アポロンは「いつもあんな男と一緒にいるから、弓の腕が落ちているのではないか」とアルテミスを挑発し、遠くに見える流木らしきものを射るように唆します。兄の挑発に乗ったアルテミスは見事にそれを打ち抜きますが、それがオリオンだったのです。愛する男を自分で射殺してしまったアルテミスは悲しみ、父ゼウスに頼んでオリオンを星座にしてもらいました。我々が『夏の大三角形』で習うオリオン座の成り立ちです。
『狩猟の女神アルテミス』は以上です。アルテミスは『純潔』を尊重するキリスト教世界でも愛好され、名前にも使われています(ダイアナもアルテミスの英語読みです)。本noteで取り上げたアンリ2世の愛妾ディアーヌ・ド・ポワティエも自身をアルテミスとして描かせています。
『純潔』の女神アルテミスがこのことを知ったら怒りそうですね‥。アクタイオン、本当にお気の毒です。実は彼がこんなことになったのも実家テーバイ王家にかけられた呪いのせいなのですが、このエピソードについてはいつか取り上げたいです。
次回は《無駄話》を更新予定です。