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私は、自分の青春の処刑人だった

昨夜、ひとつの夢を見た。

それを悪夢と呼ぶべきかどうか、正直わからない。
ただ、目が覚めた瞬間、胸が大きく波打ち、何かに強引に引き裂かれたような痛みがあった。

夢の中、私は中学校へ戻っていた。

おかしいでしょう? もう二十歳になった今の意識を持って、かつてのあの場所に逆戻り。
「今なら、少しは青春らしい彩りを見いだせるかもしれない」——
そんな淡い期待を抱いていた。

なのに——

現実は容赦なく、私をあの“よく知った檻”へ叩き込んだ。

夢が始まった瞬間から、息が詰まるような締めつけが襲ってくる。
教室の張り詰めた空気と、遅刻に対する罰則。
先生の叱責から逃げられないあの感覚——

規則を破ることへの恐怖、周囲に晒される屈辱感は、記憶の中よりもずっと鮮明になって蘇った。

皆の前で「罰を受ける」あの瞬間、身震いが止まらなかった。
列に並んでも、私はいつも左端に立たされる。
背が高く、周りから浮いている。その姿はまるで罪証品のように突き出されていた。

……だめだ。

あの場所……人を狂わせるには十分すぎる環境だ……

恐怖と圧迫感は、消えたわけじゃなかった。
ずっと私の血の中に潜み、機会をうかがっていたのだろう。
それは一瞬で目を覚まし、私を飲みこんだ。

悪夢から飛び起きたとき、私はまるで水面下から必死に顔を出した溺者みたいに、激しく呼吸を繰り返した。

けれど、その瞬間「救われた」という感覚はなかった。
むしろ、更なる混乱が心をかき乱す。

「……私は本当に、逃げたかっただけ?」

違う、そうじゃない。
私はただ、過去の自分に少しでも、あの頃の“青春”を感じたかったんだ。
ほんの少しでいいから——!

でも気づく。
今の私……二十歳の私が戻っても、あの環境は依然として私の尊厳を踏みにじり、無形の鎖でがんじがらめに縛る。

越えたはずだと思っていた壁は、実は何も変わっていなかったんだ……


初中(ちゅうがく)の頃が地獄なら、高中(こうこう)はそれ以上だった。

私は、逃げるためなら何でも捨てると決めた。

高考(大学受験)直前、学校の恒例行事「喊楼」(受験生を応援する大騒ぎ)にも参加せず、
試験前夜、日语クラスの仲間たちが盛り上がる集いにも顔を出さず、
卒業式にあたる式典にさえ出なかった。

試験まで残り二週間という段階で、私は突然学校を去る。
自分で塾を探し、自分で試験会場に向かい、傍らにいたのは母だけだった。

本来なら、クラスメイトと“青春”を分かち合うはずの場面。
以前の私は、それを「茶番」か「偽善」と嘲笑していた。

でも今になって振り返ると、それは飢えに苦しむ人間が、カビの生えたパンですら“おいしそう”に見えるのと同じようで……

あまりの切なさに、涙が止まらない。

なんで、こんなふうになってしまったんだろう。

もし過去をただ憎むだけなら、まだ楽だった。
その場所を忌み嫌い、一切振り返らずに済むかもしれない。

でも私の感情はそれだけじゃない。
そこには苦しみと同時に、なにか名残惜しさが混ざり合う悲哀がある。

あの世界は、本来なら“温もり”があったはずの場所。
なのに、今の私には恐怖しか感じられない。
本来なら“夢”を育む舞台が、いつのまにか“悪夢”に塗り替えられていた。

とはいえ、どれほど傷つこうが、それが私の歩んだ“時間”であることに変わりはない。
たとえ呼べなくても、“青春”と呼ばれるべきはずだった日々を、私は確かに生きていた……。

なのに、それを拒絶したのは私だ。

私はまるで決然たる司令官のように、自分がかつて“愛した家郷”に向かって砲撃命令を下した。
慣れ親しんだ風景を消し去ることでしか、自分を守る手段がなかった。

「抑圧する空気を破壊すれば、性別への焦りを断ち切れば、いつか自由へ行ける」——そう信じていた。

ところが今、あらためて過去を振り返ってみると、そこには何も残っていない。

弾痕だらけの廃墟。
焦げついた瓦礫と崩れ落ちた壁。
風が吹き抜ける荒野があるだけ……。

記憶が、爆撃しなければならない敵の領土になったとき——

もはや、過去と和解する可能性は完全に断たれたのだ。

あのとき私は、自分の過去を“敵地”と見なした。
そうすることでしか生き延びられなかった。

でも、その結果——私は自分の青春を手ずから処刑してしまったのだ。

「生きるため」とはいえ、私こそが刽子手。
では、真の罪人は誰なんだろう?

それは、道徳の高台から見下ろし、
何の疑いもなく、光の当たる場所に平然と立っている——

そんな社会の「秩序」という名の暴力かもしれない。

あるいは、私を含む、すべての“空気”を作り出した大人たちかもしれない……。

答えはわからない。
ただひとつ言えるのは、私が守りたかったものと、引き裂くしかなかったもの——

その板挟みによって、“私の青春”は塵となって消え去ったということ。

もう一度、あの世界に戻りたい気持ちは、今でもある。
けれど戻ってみても、待ち受けているのは荒涼とした廃墟だけ。
そして私は、その光景を前に、どうしようもなく立ち尽くす。

——自分の手で放った砲火は、もう二度と取り消せない。

もし神がいるなら、問いかけたい。
——なぜ、私はこんな運命を背負わされたのか。

けれど神もまた、道徳の制高点に立つ傍観者でしかないのだろう。

——私は、自分の青春の刽子手だった。

それが、今の私が出した答え。



わたし

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