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カシミール旅行記⑧「憧れのインド映画ロケ地へ向かう」

今年の3月にインドのカシミール地方に旅行に行った時の記録…

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スリナガル旅7日目。

この日はスリナガルから近郊の町パハルガムに行くことにした。

パハルガムはスリナガルから約95km離れた場所にあり、緑豊かな牧草地や、美しい渓谷で有名なカシミール州で最も人気のある観光地の1つだ。
そしてその美しい情景のため、数多くのインド映画のロケ地にもなっている。

インド映画好きの私からすると聖地みたいな場所だ。

本当ならば昨日に友人と友人の旦那さんと一緒に行く予定だったのだが、友人旦那さんが発熱。
さらに昨日はあいにくの雨で、天気予報によると翌日、つまり本日は冬のカシミールには珍しく快晴予報だった。


昨日でも今日でもどうせ1人で行くことになったので、せっかくの美しい自然&映画ロケ地を楽しむのであれば天気が良い方がいい!!ということで予定を変更したのである。


さて、実はパハルガムに行く途中、私にはこの旅ので1番と言っても過言でないほどどうしても行きたい場所があった。

そこはカシミールに興味を持った一番のきっかけである大好きなボリウッド映画「Haider」のロケ地。

作中のこの”Bismil”という音楽シーンが撮影された場所だ。



このHaiderのロケ地にもなった Martand Sun Templeは8世紀に建てられたヒンドゥー寺院。
場所的にはパハルガムに行く道中にあり、当初から途中で寄ってほしいとリクエストしていた。

しかし、昨日友人の旦那さんが手配してくれていたドライバーがそこは危ないから行くことはできないと言った。

どうやら2-3日前に寺院近くでテロリストと警察の衝突があったという。

この旅でどうしても行きたい聖地だったためかなり残念だが、危険な所に行くわけにはいかない。


カシミールを旅してきて7日。
町の人々はみな温かく、女一人で普通に街歩きもできるくらいだったので忘れてしまいそうになるが、やはりここカシミールはともすればそういう衝突が起きる可能性もある場所なのだ。

私が住んでいるデリーや、ましてや日本などとはまるで違うのだ…。

残念ながら一旦は行くことを諦めたのだが、宿のオーナーにその話をすると「え?そんな事件その場所であったっけ?」といわれた。

・・・

・・・え?ないの??笑

これもインドあるある「人によって言うことが違う」なので、まずは正しい情報を手に入れるべく自分でカシミールのニュースを調べることにした。


色々と調べてみるとおそらくこの事件だろうという記事を発見した。

どうやら"カンディポラ"という場所で警察とテロリストの衝突があり、2人のテロリストが殺害されたとのこと。

ただしこの警察との衝突があったカンディポラというのは私が行きたいMartand Sun Templeからは14km程離れているようだった。

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ううむ。微妙な距離である…。


もう一つ懸念点があった。
実はこの寺院に行くことを拒否しているドライバー、仮にBさんとしよう。
このBさんは料金が安いという理由で友人旦那さんが手配してくれた人で、私はまだ会ったことがない人だった。

今回は1人でパハルガムまで行くので、少しでも見知った、さらに英語で意思疎通がとれるドライバーのほうが良い。

そのため私は先日雪山のグルマルグに連れて行ってくれたドライバー、アクバルに連絡を取ることにした。

アクバルはBさんより値段は高かったが快くOK。
また事件のことを尋ねてみたのだが、その場所は寺院からは離れているので問題ないとのことだった。


当日、朝8時半にホテルを出発!!

出発する時、再度危険はないかをアクバルに確認した。

すると彼は少し悲しそうな顔で
「カシミールは危ないというイメージが先行してしまっているのが残念だ。昨日も言ったように寺院は衝突のあった場所からは離れているし大丈夫。
僕はカシミールでタクシー業をずっとやってきているから危ない場所と危なくない場所はわかっているつもりだ」と答えた。

私もとりあえず近くまで行けばもし何か問題があれば封鎖されていたり、様子がおかしかったりするだろうと思い、まずお目当てのMartand Sun Templeに向かうことにした。


ちなみにこんなことを書くと、結局危ないの?危なくないの?どっちなの?と思う人もいるかもしれない。

もうこれは結論わからないし、旅の判断は自己責任だ。

今まで綴ってきたようにカシミールは危ないとも言えないし、危なくないとも言えない。

もしこの旅行記を見て、この素晴らしい土地カシミールを訪れようと思ってくれた人がいたら、先入観は捨ててカシミール文化を堪能し人々と交流してほしいし、しかしきちんと自分で危機管理して旅してほしいと思う。


さて、前回グルマルグに行った際の道中は、インド人である友人旦那さんがヒンディー語でアクバルとずっとおしゃべりしていて、私はあまりアクバルとは話していなかった。

今日は初めての1対1だ。笑

おそらく彼も始めは私に対して少し警戒心がある感じだったのだが、私がこの旅でカシミールの美味しい料理を堪能し、カシミールが本当に素晴らしい場所で感激しているという話をするとだんだんと心を開いてくれたようだった。

また、私が”Martand Sun Temple”に行きたい理由がボリウッド映画「Haider」を見たからだと伝えてから、彼は少しずつ本音らしきものを漏らしてくれるようになった。


何度も書いているがここカシミールはインドだがイスラム教徒が多い土地だ。

語弊を恐れず完結にカシミールの歴史を説明すると、インドが独立する際、各州はヒンドゥー教主流のインドに帰属するか、お隣のイスラム教が主流のパキスタンに帰属するか選ぶことができた。

通常ならばイスラム教徒が多い地域はパキスタンへの帰属を望むことが多いが、当時のカシミールは住民のほとんどがイスラム教だったが、藩王がヒンドゥー教徒だった。

この微妙な状況のなかで藩王はカシミール単体での独立も考えていたのだが、その時に武装民兵の蜂起が起きる。
(この民兵はパキスタン軍人が率いていたと言われている)

藩王はインドに助けを求めるためにインドへの帰属を決めた。

いわゆるこれが第一次印パ戦争の始まりである。※

それ以来、インド側・パキスタン側・独立でもめているのがこの地カシミールなのだ。

ボリウッド映画「Haider」はそんなカシミールの現在も続く問題を描いている作品だ。

詳しくは是非映画を見てほしいのだが、カシミールでは治安部隊に拘束された後、行方不明になってしまう人が多数いるなどインド軍による住民への人権侵害が行われている。


ドライバーのアクバルはその名の通りイスラム教徒だ。

「今から行くMartand Sun Templeもヒンドゥー寺院だし、ここカシミールには沢山のヒンドゥー寺院があるんだ。
イスラムはたくさんのヒンドゥー寺院を破壊してきたと言われることもあるけど、そんなことはない。
俺たちは破壊していないし、カシミールには沢山ヒンドゥー寺院がある。」

「何よりも俺たち若いニュージェネレーションはもうイスラムだから、ヒンドゥだからということはないんだ。Peaceが一番大事なんだから」


アクバルはそんなことを話してくれた。

ここカシミールは美しい自然からインド国内から沢山の観光客が来る。

アクバルはそんなお客さんを相手にする旅行を扱う職業だ。

お客さんによっては偏った考えの人もいるだろうし、偏っていなくても悪気なく心無い言葉や質問をぶつけられることもあるのかもしれない。


2時間ほど車は軽快に走り、ついに私が行きたかったHaiderのロケ地Martand Sun Templeに到着した!!

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あいにく一部が修復中だったのだが、まさしくここである!!

映画Haiderで主演のシャーヒド・カプールが鬼気迫る表情でダンスを踊ったあの場所だ!!

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映画ファンならばわかってくれると思うのだが、ロケ地というのはめちゃくちゃテンションの上がる場所だ!!

あのシーンはこの画角から撮ったのかな?

あの俳優がまさにここを歩いたのかー!!

などなど…思いを巡らせるだけでご飯3杯はいける!!


テンションが最高潮に上がった私がこちらだ👇

ちなみに三脚を設置しすべて自作自演で撮影した。笑


この寺院はそこまで有名な観光地ではないため、修復をしているおじさん以外は誰もいなくひっそりとしており、ゆっくりと見学することができた。

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寺院のところどころにヒンドゥーの神々を描いたレリーフが残っていた。


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デヴァーナーガリー文字とも少し違うような文字が残されている石。
この文字は何文字なのだろうか?
もし読める人がいたら教えてほしい!!


十二分に大好きな映画ロケ地を堪能し、私は次の映画ロケ地&いよいよカシミールの美しい渓谷パハルガムに向かうのだった…。

«続く»


おまけ

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寺院を案内してくれたおっちゃん達。
少しチップをあげた。


道中、羊飼いと遭遇!!


※カシミールの歴史に関しては複雑な要因が絡み合っており、この記事ではあくまでも簡潔に説明したまでです。ご興味がある方は自身で調べてください。私も勉強中…。



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