それでも、
「おかえり」
向かい合って海鮮を食べていたとき、友人が嬉しそうに、そう伝えてくれた。
それより遡って、皐月の終わり、私は浮き足立っていた。
自分がこれからしたいことの解像度がぐんぐん上がり、止まっていた流れが動き始めていたのが見えたのだ。それは、高揚感を口に含みながら、煌々と光るもので囲われた世界に足を踏みだすような気持ちだった。
しかし水無月になり、足を踏み出した途端、そこは白い靄のかかった世界に様変わりしてしまった。
せっかく掴めそうだった光のかけらを見失い、抜け出し方も分からない、ぐわんぐわんとぬかるむ足元と、一歩先すら見えない靄の中に、ただ私は立ち尽くして混乱していた。
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