ほろよい
昨年末、いつも乗る車両とは違う新幹線のシートに新鮮味を感じる私の片手には、1冊の本があった。
その名も「ほろよい読書」
最近個人的に原田ひ香さんブームが到来しているのもあり、古本屋さんで見つけるや否や購入を決めた1冊である。
ただこのタイトルだけをみると「お酒好き」の印象を持たれそうなのだが、私は下戸である、、、、とごく最近まで自覚していた。
お酒は苦手なんや、弱いんや、と各方面に語りつつ、アルコールを約3年ほど避けてきた。飲み会なるものが再開され始めている昨今でさえ、ノンアルコールカクテルを貫く意志の強さは只者ではない。
しかしこの「ほろよい読書」の1作目、織守きょうやさんの「ショコラと秘密は彼女に香る」には、ウイスキーボンボンを始めとするたくさんのお酒のお菓子が登場する。このお菓子の描写が美味しそうで、美味しそうで、、。無性に食べたくなった。
下戸なんや、、、、そう語ってきたけれど、何を隠そう、私はお酒の入ったお菓子が好きだ。アイスクリームは必ずラムレーズンを選ぶし、ブランデーの入ったチョコレートなんて至福の極み。20歳になるまで、そんなお酒のお菓子を好む私をみて、友人が「酒飲みになりそうやね」なんてよく言っていたもんだ。
そしてそんなウイスキーボンボンの幻想に包まれながら読み進めていくと、これまた美味しそう、いやもはや美味しい描写に出会ってしまった。
2作目、坂井希久子さんの「初恋ソーダ」では、数多の果実酒が登場する。保存瓶にたくさん果実酒を漬ける主人公の話だが、ここで出てくるブランデー漬けの梅酒と苺酒の描写の虜になった。
なんだか読んでいるだけで、口の中に苺の甘い香りとブランデーが混じった風味が広がる気がした。新幹線に乗りながら、その想像だけで酔えた。
1冊読み終わる頃には、お酒は嫌いなんだと息を巻いていた自分はどこ吹く風で、無性にお酒を味わいたい自分がいて驚いた。
そんな出来事があって、ゆっくり振り返り気分に。
本当に私はお酒が苦手だったのだろうか、と疑問に思う。
確かに酔いやすいし、赤くなりやすくて、強くないのは確かだけれど。それでもちびちび呑めば、お水を横に置きながら呑めば、案外長時間呑んでいられるタイプだった。
アルコールは苦手なんや!と自己認識した頃は確か、周りにお酒好きな方が多く、お酒を介したコミュニケーションが日常で。「お酒呑めるようにならなきゃ、、」と、お酒好きになることを自分に課せようとしていたのだ。
その我慢というか強制する気持ちに、自ら反発した結果、お酒が飲めなくなったというより、飲まなくなった。
まあ、ひとりの空回りというか、ひとり芝居なのだ。
そんなひとり芝居の演目も、この1冊を契機に終演を迎えた模様。
もうすっかり、今年は梅酒を漬けようだの、苺酒もいいなぁと、保存瓶を並べるスペースを作ってしまったのだから。
大好きなラムレーズンも、大好きなお店のレーズンで漬けてみたい。それをバニラアイスに混ぜたり、クリームに混ぜてレーズンサンドクッキー作るのもいいなぁ。
酔いどれ気分の妄想は広がるばかり。
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