言葉にできなかった祈りのひとこと
かみつれ文庫がオープンして、もう2ヶ月半が経つ。あっという間のような、じっくりと煮詰めた時間のような。
オンラインからを考えると、12月で1年になる。もうなのか、まだなのか、それもわからないけれど、嬉しいと純粋に感じる。
しかし1年近くが経つにもかかわらず、このお店のいわゆる「コンセプト」というものをはっきり言葉にできずにいた。
友人にロゴを作ってもらったときも、誰かに尋ねられたときも、その都度言葉にしてきたけれど、今先ほど、ようやくすとんとこれだと思える言葉が繋がったので、忘れたくなくてここに書いている。
今までずっと、長くぐねぐねとかみつれ文庫を説明したり、選書の基準を話してきた。とはいえ基準に沿って本を選別するということは普段からしない。
基準というよりは本を選ぶ際の指針みたいな。尊敬する吉田松陰の言葉を借りれば、志というものは以前から朧げにあった。しかしなんともそれをうまく言葉にできなくて、ずっと煮え切らない言葉に私自身もしこりを抱えてきた。
心の声が聞こえますようにとか、それを香りと表現したりとかしてきたけれど、どれも本心で、どれもこれじゃないという感覚があった。
しかし今は理想や想いに1番近いと思える言葉が私のそばにある。
かみつれ文庫が選んで並べているのは、
枕元に置いて一緒に眠りにつきたい本。
かみつれで出逢ってくださった方が、日々心地よく今日という1日を閉じられたらいいなという思いを込めて、この言葉を抱きしめていきたいと思う。
ここからは余談。
この言葉を連れてきてくれたのは、お部屋の空気感とお客さまと私の困りごとだった。
お部屋はビルの奥にあって、いつも少し暗い。その暗がりが私は心地よくてとても好きだし、夕方になるほど楽しみになる。
そしてその暗さが、お客さまにとっても居心地よさだったり、安心感を連れてきてくれているように側で感じている。
かみつれで過ごす日々の中、近頃わたしのずっと抱えてきた困りごとが肥大化していた。それはずっと抱えている睡眠障害。何か不安になるようなことがあったり、ペースや調和が乱れると、わたしはすぐに眠れなくなってしまう。酷い時はお薬に頼ることもあった。
幸い今はお薬なしで眠れるけれど、またこの上手く眠れないという悩みが大きくなり、朝もすっきり起きられないという日々がこの半月ほど続いていた。
しかしすっきり起きるために、いくら策を講じてもうまくいかない。気怠い朝は変わらず、自己嫌悪の沼に落ちて行った時、ふとまずは心地よく眠りにつきたいと思った。なんとなく浮かんできたことだけれど、わたしの幼い頃からの祈りであるような気さえするほど、この言葉がしっくり心に馴染んだ。
指針が言葉になり、お店にすっとやさしく風が通り抜けていく。これだというしっくりした感覚。その濃さは変わるかもしれないけれど、微量でもこの感覚はきっとかみつれ文庫にはあり続けるだろう。
祈りを添えて、かみつれ文庫が育っていくのがますます楽しみになっていきそうだ。