No5『蹴りたい背中』綿矢 りさ
「さびしさは鳴る。」
そんな言葉から始まる。
わかるようで、わからなくて、でもやっぱり最後には少しだけわかるような気がする本。
『蹴りたい背中』綿矢 りさ
ハツとにな川はクラスの余り者同士。ある日ハツは、オリチャンというモデルのファンである彼の部屋に招待されるが……文学史上の事件となった百二十七万部のベストセラー、史上最年少十九歳での芥川賞受賞作。
主人公のハツはなかなかクラスになじめない。
でもそんな自分を認めるのも嫌で、
「クラスの子たちはセンスなくない?」
「私は人を選んでるの」
という。
お昼休みは寝れないくせに、
うつぶせになったり、頬杖をついたりする。
クラスでもう一人、いつもひとりぼっちの男の子がいた。
彼はおたくだ。
そして自分がぼっちであることを認め、趣味に没頭している。
ぼっちはぼっちでもどこか異なる二人。
彼の家に遊びにいくような仲になり、
ハツはだんだんと彼の苦しむ顔が見たいと思うようになる。
彼がふとした出来事で苦痛そうな顔をみせると、
ぞくぞくする。
そしてある日衝動に駆られて背中を蹴る。
痛がれ、苦しめと想いを込めながら。
でも嫌いなわけではない、むしろ愛おしいんだと思う。
蹴ったところで心の壁がぱりんと割れてなくなるわけでもない。
むしろ隔たりを感じる。
きっとハツの寂しさはなり続けたままだ。
この主人公の感情がわかるようで、
でもやっぱり、「蹴りたい?なんで?」ってわからない。
でもなんだか学生時代、いろいろなものに縛られていた時は
わかったような気もする。
中学生のころに一度読んで、そこから忘れられなかった本。
このあいだ図書館で見つけて迷わず手に取った。
自分のリアルな感情を大切にしていこう。
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