見出し画像

自分の場所で、書き散らそう。

note創作大賞の中間発表。「今日、あるだろうな」という予感はあった。
前日からソワソワとして落ち着かなかった。

今日は昼からPTAの集まりがあり、そのまま委員会、そのあと授業参観、学校が終わったらピアノ教室。午後の予定がぎっしりで、朝から「よしっ」と気合を入れる。

いつものストレッチをきっちりやり、残りの時間でできる仕事をやり、そろそろ家を出なくちゃならない、その前に、すこしお腹に食べ物をいれておいたほうがいいな、と思っていたとき。
中間発表が出たとのアナウンスを見つけた。

一気に心拍数が上がる。
発表を待っていたはずなのに、「あ、今見ないほうがいいかも」と思った。
これを見たら、このあとぎっしりの予定がこなせなくなるかも。

でもやっぱり、と気持ちをきりかえて、
ゆっくり、ゆっくり、ページをスクロールした。

わたしの名前はそこになかった。

結果を知ったのに、なぜかまだ心拍数がおちつかない。
そしてなぜか「やっちまった…」と思った。

わたしはこういったコンクールに自分で応募したことがなかった。

文章というのは、わたしにとって、幼少期からとても大切にしてきたもの。
文章を書くことで、わたしは何度も何度もたすけられてきたから。

それなのに、その大切なものを、だれかに良し悪しをジャッジされるような場に、差し出してしまった。

やっちまった。

もしかすると、今までどおり書けなくなるかもしれない。

そう思うと。
発表前よりも心拍が高まり、胃がむっとしてくるのだった。

お昼ご飯を食べておいたほうがいいのに、食べる気になれない。

「頭でわかっていても、心がいうことをきかない」

こういう状況を、ひさしぶりに味わった。


note創作大賞は今年、全部で52,750作品の応募があったそうだ。
その中で、わたしが応募したのはエッセイ部門。

26,158ものエッセイ作品のなかで、中間選考に残ったのは47作品。
つまり、26,100作品は選ばれなかった。

昨年は今年ほどではなかったけれど、応募が多いことは知っていた。
最初から、無理だ、ということはほとんど確定していた挑戦だったのだ。

「残念だな…」

気持ちを変えたくて、ちょっと声に出してみる。

「残念だなーーー!!」

大きな声も出してみた。

相方に報告もしてみた。
「残念だったね」と相方も言った。


そんなとき、潮井エムコさんのポストをみた。

“私は結果より過程を重視しているので、結果が全て論はあまりお口に合わないです。本を出させてもらったことより、それに至るまでに読者さんに出会えたことの方が嬉しいから。ぜひ過程を楽しんでください。過程とは今の積み重ねなので、今を楽しめる人の書く文章は、やっぱり魅力的だと思います。”



はっと、目がさめたような気持ちになった。
そして、ようやくすこし涙がでてきた。


賞に応募すると、どうしても結果をもとめてしまうことになる。
それがだめだったとき、自分の大切な何かをジャッジされたような気持ちになる。

けれども、エムコさんから直接いただいたメッセージを読んで、

選ばれなかったからといって、なにかを奪われたわけじゃない。
わたしの大切なものに優劣をつけられたわけじゃない。

と気づくことができた。
(エムコさん、ありがとうございます)


一生懸命に書いたから。
言い訳なしに、良いものを書けたと思うから。
自分の大切なものをそこに置いてきたから。

だから、悔しくて、悲しかった。

こんな感情になれる体験は、めったにできない。

わたしもエムコさんと同じく、結果ではなくて過程を大切にしたいと思っている。

過程は、「今」の積み重ね。

今のこの、悲しいような、悔しいような、残念なような、すこしホッとしたような、まだ捉えきれない感情も、味わいつくせばいい。
ただ、「今」を感じていよう。

そう思ったら、この「今」のことを書きたくなってきた。

書こう。

だってわたしたちは、書かずにいられないんだ。
うれしくても、かなしくても、ずっと書いてきたじゃないか。
それがわたしたちの、人生を最大限に味わう方法なんだ。

しかたない。書くしかない。

今日くらいは、ちょっと美味しいものを、カロリーを気にせずに食べて。

ゆっくりお風呂につかって、ストレッチをして、しっかり眠って。

はたまた、美味しいお茶を飲みながら、好きな本を読んで夜更かしをして。

心をぞんぶんに回復させたら、また書こう。

今の積み重ねが、きっと、明日を良いものにしてくれる。


今回のやりとりで、エムコさんが大好きになってしまったわたしは、その日のうちに『置かれた場所であばれたい』を買いに走った。

書店に併設されているスタバで、オシャレびとたちや学生さんたちがいる中で、ひとり、「ふふ……ふふふ……」と、小鼻をふくらませ、笑いをこらえながら、パンプキンなんとかラテ的な飲み物を飲んだ。
そしてスタバを出るころには、すっかり心が回復していた。

…いや、それは強がりだな。
でも、60パーセントくらいは回復したと思う。

そして一夜明けて、ほんとうにすっかり元気になった。

置かれた場所で、あばれよう。
自分の場所で、書き散らそう。

いいなと思ったら応援しよう!