伝説の保険営業マンから中小企業経営者のよろづ相談請負人へ | スコーンのお仕事図鑑_001
お仕事図鑑、はじめます
人の話を聞くのが好きです。
人生や仕事において大事にしていることを聞くのが好きです。
ただ、普段の会話では、友人や同僚とそういった話をすることはありません。
そこで「お仕事図鑑」という名のもとに、人それぞれの価値観を聞かせてもらう企画を始めることにしました。
第一弾、父
第一弾は私の父。
理想と現実の狭間で妥協できず、20代の間に5回も転職を繰り返し、6社目にしてようやく天職にめぐりあい、「伝説の保険営業マン」と呼ばれるまでになります。
「営業マン」と聞くと暑苦しいイメージがありますが、全くそうではない人柄でのし上がった(本人曰く「自身の棲息できる場所を確保した」)ことがまた面白いです。
その後独立し、現在は保険にとどまらず、経営の課題・事業承継・相続など多方面から中小企業経営者のサポートをおこなっています。
仕事遍歴 | 20代で5回の転職
── 仕事遍歴は。
1社目。
東京の大学卒業後、名古屋本社の婦人服チェーンストアに就職。横浜元町に勤務。当時、注目されていたチェーンストア理論を実践したくてこの会社を選んだが、アルバイトの女性たちの機嫌取りが主な仕事という現実に耐えきれず2年で退職。
2社目。
地元神戸に帰り、コンピューターの販売会社へ営業として転職。営業成績はよかったが、頑張りすぎて一人浮いてしまい、また実績を出していない先輩社員のほうがボーナスが高いことに不満を抱き、2年で退職。
3社目。
最大手ハンバーガーチェーン店。体力的に厳しかった。かつ、上司の評価を最優先とする社風になじめず、1年半で退職。
4社目。
スッポンの養殖。毒性の強さから販売禁止となった商品を、ラベルを付け替えて売ろうとする方針に従うことができず、半年で退職。
5社目。
結婚情報サービス。会員比率が女性 9 : 男性 1。この比率だとお見合いにたどりつけない女性も多いのに、売上を確保するためにとにかく入会させる方針に良心が痛む。半年で退職。
6社目。
アリコジャパン(現・メットライフ生命)。そして現在に至る。
なぜ今の仕事を始めたのか | どこでもよかった
── なぜ今の仕事を始めたのか。
5社目退職後、職探しのためにアルバイト雑誌B-ingから5社ほど応募した。とにかく働く必要があったので、どこでもよかった。
一番最初に内定が出たのがアリコジャパン。なのでそこで働くことにした。
保険営業の仕事。歩合給100%とは知らずに入社。
── なぜここは長続きしたのか。
要因はいくつかある。
1つ目。
歩合給100%なので、完全に自分の自由にできた。お客さんに不利益なことをしなくてよかった。
2つ目。
1988年入社。所謂「バブル」がピークを迎える少し前で、とにかく景気が良かった。優秀な人達は、大企業に勤務していたので、同業者のレベルは高くなかった。少しがんばれば簡単に頭角を表せた。
3つ目。
全国2000人の営業マンのうち、トップ3人、加えてトップ10のうちの5人がたまたま同じ事務所にいた。それを間近で見ていて、この人たちができるなら、自分ももっとできると思った。
入社時に見せてもらった先輩の給与明細が月250万円だった。「年収やん」と思ったが、半年後に自分の給与明細に500万円印字させたいと思った。成果が上がると楽しくて、感覚的には24時間年中無休で仕事をしていた。結局、半年後の数字は1000万になった。
── その後独立。
アリコジャパン入社16年目で独立。現在は独立16年目。7人の社員を抱える。
仕事内容 | 中小企業経営者のよろづ相談事請負人、格好良く言うとプライベートバンカー
── 現在の仕事内容は。
中小企業経営者の相談相手となり、会社存続のサポートを行う。保険にとどまらず、経営・事業承継・相続などあらゆる分野の相談に乗る。法人税、所得税、民法などの知識を駆使。
朝から晩まで公私の区別なく働き続けてきた中小企業の社長にとって、会社は自分の人生そのもの。雇用を確保し、納税することで、社会に貢献できる会社。できれば身内に継いでもらいたい。
それが叶わなくても自分の意志を継いでくれる人に会社を委ねたい。
その思いを実現するためのサポートをあらゆる方面から行う。
仕事の面白さ | 「この人は違うな」と信頼されたとき
── 仕事の面白さは。
「この人は違うな」と思ってもらえた瞬間。
最初のうちは斜に構えていた人が、話をしているうちに徐々に警戒心が緩んできて、「この人は違うな」と反応が変わり、最終的に「よろしくお願いします。」と言って契約していただけることに無上の喜びを感じる。
保険の営業は社長と話せる。
コンピューター販売と違い、保険の営業は社長と話せる。
平社員ではなく社長とやりとりできる面白さ。
商品は同じ。営業マンの資質で選んでもらえる。
アリコ時代、どの営業も売っている商品は同じだった。値引きもできない。買ってもらえるかは100%営業マンの資質による。みな同じ商品を売るために競合するからこそ、比較して自分を選んでもらえる。
お客さまに「お願いします」と言われ、契約が成立する瞬間。
保険の納品は10年、30年先。年額3000万円として、10年ならば3億円。
中小企業には大きな支出。
その保険で会社の事業・資産を守っていくことを提案し、信頼を得て「お願いします」と言ってもらえる瞬間に最も大きな喜びを感じる。
仕事のこだわりポイント | 最高の作品を提供する
── 仕事でこだわっていることは。
社内でもきれいな言葉を使う。
お客様の前で言えない言葉は社内でも使わない。
最高の作品を提供する。
提案する内容は作品なので、最高の作品を提案している自負がある。同じ保険商品は他でも売れるけど、組み合わせが独自。最高の組み合わせを提案している自負がある。
あらゆることに精通する。
保険にはじめとする金融商品全般、加えて法人税、所得税、民法など、中小企業経営、存続に関わるあらゆることに精通するために勉強し続けている。
社長室にある本、置き物などにも気を配る。
社長室にあるものから、その社長の嗜好を推測する。意欲的な社長は、読書好きな人が多い。
── 自分の強みは。
潜在的な望みを明確にする能力が普通の人より優れているのかもしれない。
営業力があると思ったことは無い。プレゼン力があるわけでもない。
プレゼン力を鍛えるセミナーに参加した時、自分が一般的なプレゼンが全くできないことに愕然とした。ロープレが全くできなかった。
これからやってみたいこと | この仕事の良さを伝えたい
── 現在63歳。これからやりたいことは。
この仕事は、お客様から感謝され、頼られる本当にやりがいのある仕事。自分の培った考え方・気付いた真理を後輩に伝えることも大きな使命。
2005年に独立したとき、自分は人を育てるのには向いていないと一度諦めたが、今はこの仕事の面白さ、有意義であることを一人でも多くの人に伝えていきたい。その義務があると感じている。
だからあと10年、73歳まではやろうと思っている。
本を一冊 | 『成功哲学』 by ナポレオン・ヒル
── 本を一冊紹介するなら。
ナポレオン・ヒルの『成功哲学』。
大学4年生のときに読んだ本をずっと持っている。
善きことを思えば善きことが起きる。
適材適職
今日、Twitterで適材適職という言葉が流れてきました。
まさに父にふさわしい言葉。
慶應大学を出ながらも謎の仕事を転々とし続けた父の20代は、話を聞いているだけでも心配になってきます。
しかしずっと仇(あだ)となっていた「理想を追求するストイックさ」が、たまたま出会った6社目でついに強みとして開花します。
そこからの快進撃は、まるで小説を読んでいるかのようなダイナミックさがあります。
これまで何度も断片的には聞いてきましたが今回じっくりと話を聞くことができ、改めて面白い人生だなと思いました。
一人の人間として、尊敬します。
お仕事図鑑、続きます
思いつきで始めてみたお仕事図鑑。これは面白い。
人の価値観を知るのって楽しい。
私の周りには多種多様な職種の人がいるので、これからたくさんインタビューしていきます!
インタビューされたい人、ぜひ声をかけてください!笑