フランスから、食関連ニュース 2021.01.20
今週のひとこと
今週の月曜日、ミシュランガイドフランス版2021年の格付けが発表されました。本来は史上初めてパリを離れ、コニャック市にて格付け発表のステージが用意される予定でしたが、コロナ禍を受けて、こちらも史上初めてのオンラインでの発表となりました。実際には撮影はその前日、前々日のウィークエンドに行われたとのこと。一握りのシェフのみが参加し、観客なしで開催されました。2020年は誰もが知るとおり例外的な年で、それは今も続行中です。
昨年レストランがオープンできた期間は、地方によっても異なりますが、半年は許可されていたという概算は出されていながらも、夜の外出禁止やバカンス時期など、もろもろの条件を揃えれば、パリは特に厳しく、1年を通してほぼ閉店していたという友人たちの店も多かった。だからこそ、ミシュランには、レストランを支えるガイドとして、2021年度版としての評価を出さないという英断を取ってもらいたかったというのが、正直な心持ちです。それでも、ディレクターのグウェンダル・プレネック氏は、世界中から調査員を結集し、昨年と同じくらいの調査回数に及んだと発言していました。苦境のガストロノミーを救うためにと。
オンラインの発表では昇格店しか紹介されず、確かに、輝かしい未来を彷彿とさせるものでした。エコロジーを追求する33軒のレストランへのグリーンスターの授与や、初めてビーガン店が1つ星を獲得するなど。またパリの女性シェフ、エレーン・ダローズ氏が2つ星となったり、スペシャルアワードに4名の女性が輝いたりと、料理界における女性の存在価値を高めるような動きもありました。しかし、それとは裏腹に、実際には降格店も多くあった。コンセプトを変えたなどの理由での降格、星剥奪。3つ星剥奪はなかったからこそ話題とならなかった、故ジョエル・ロブション氏のパリの2店舗、またモナコ店。あるいはイナキ・アズピタルト氏の「シャトーブリアン」やジャン・フランソワ・ピエージュ氏の「プル・オ・ポ」など。この苦境において、何を評価できたのか。崖っぷちに立たされているレストランの首をさらに締めるようなもので、老舗と言われるレストランガイドに対し疑問を覚えざるを得ませんでした。
それでも3つ星に輝いたレストラン「AM」マルセイユのアレクサンドル・マジア氏にはエールを送りたいと思います。ピエール・ガニエール氏に似て、自身の追求する味わいを皿に落とし込むためには、すべてに糸目をつけない人だったので、被雇用者だったときにはオーナーとの折り合いがなかなか厳しかった。しかし自身の店を2014年にオープン。マルセイユの豊かさ美しさを生産者との絆を強めつつ皿に表現する創作料理が注目され、ゴー・エ・ミヨガイドでも2018年に今年最高の料理人賞に輝くなど、評価が高まっていました。このロックダウンの期間中は、素材をパッケージにして販売したり、フードトラックを始めたりと、料理人としてできることを生産者とともに果敢に挑戦しつつ、南仏の未来を守っていたことは、多くの人が注目していたと思います。
マジア氏の師である2人、ピエール・ガニエール氏とピエール・エルメ氏が、マジア氏の3つ星獲得の場に立ち会いました。ガニエール氏が、マジアのことを「彼の作る料理はもちろん、素晴らしいのは、一人の人間としてだ」と評価していたのが心に残りました。20年前の2000年頃には「我々は、装飾も食べに行くのか」と、星を狙うシェフたちの、その過剰な客室の環境投資に対して疑問を持たれる時代があり、その後ミシュランは「我々が評価するのは内装ではなく、皿の中だけだ」と声をあげて、そして今、「皿の外」に意識が向かっています。
今週のトピックスは今週のひとことのあとに掲載いたします。【A】ティエリー・マルクスの宇宙食。【B】世界のトップレストラン1000を選出する「ラ・リスト」、今年は特別アワードのみの発表。【C】リヨンのアーバンアート協会とクローズ・エルミタージュのコラボでレストラン外観がアートのキャンバスに。【D】認知障害者の雇用を目的とした社会貢献レストラン、見習い訓練センターを開設予定。
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