「エピクロス・アワード」@パリ フランスの週刊フードニュース 2022.06.22
今週のひとこと
「Prix l'Epicures/エピキュール・アワード」は、2013年の開催来、フランスの食品マーケットにおいて、影響力を持ち始めています。今年ですでに9回目を迎え、その発表およびサロンが6月20日に開催されたばかりでした。
オンラインのB2Bマガジン「Le Monde de l’Épicerie Fine」が主催するアワードで、生産者とディストリビューターをつなぎ、生産現場とマーケットを活性化することを目的とするマガジン自体のあり方を示す、わかりやすい舞台でもあります。アワードのステージは、人気の朝の番組「Télématin」に登壇する料理ジャーナリストLoïc Balletが司会を務めました。
今年の審査員長には、トゥール・ダルジャンの当主であるアンドレ・テライユが就任、その他審査員にはボン・マルシェ食品館やフォションなどの買い付けのディレクターも名前を連ねるなど、生産者にとってはビジネスチャンスに直接的に影響します。
200軒近くもの生産者がスタンドを配するサロンもアワードとともに開催しているので、ディストリビューターや小売店にとっても、生産者と直接コミュニケーションでき、テイスティングも行えるので、非常に有意義なコンクールでもあるのです。
南仏にアトリエを持ち、コンフィチュールやナッツのスプレッド、チョコレートなどを作るブランド「BIOMOMO HASHIMOTO」の橋本泰典さんと恵美子さんご夫妻は、5年前からコンクールに挑戦。今回もお誘いいただき、今年はサロンからゆっくりテイスティングを堪能することができました。
なんと彼らはメダル荒らし。参加年から毎年メダルを獲得。しかも、pâte à tartiner(スプレッド)、confiture(ジャム)、confiserie(コンフィズリー)、 chocolat(チョコレート)と毎年部門を違え、4部門への参加で賞を獲得しています。今年も昨年に引き続き、難関のチョコレート部門に挑戦し、彼らの自慢の自家製プラリネ入りのボンボンが銀メダルを獲得しました。
この部門参加のチョコレートは、実は3月に、面白いチョコレートが出来上がったからと橋本ご夫婦からご連絡いただき、1箱いただいていたばかりだったので、私も喜びひとしおでした。
おそらく7月中に取材に参りますので、その様子は某紙記事となります。その折には、皆さんにもご紹介しますので、お楽しみに!
それにしても、サロンでは、たくさんの力のある、イノベーション溢れる食品に出会えました。フランスは、以前は日本のように新商品にはこだわらない国でしたが、現在は、皆さん新しい商品を積極的に手がけ、マーケットが活性化しているのを感じました。
アワードは、橋本ご夫婦が参加した部門だけでなく、「コーヒー」「ティ」「調味料・マスタード」「アペリティフのおつまみ」「オイル」「ノンルコール」部門など、合計20近くあって、金・銀・銅のアワードを獲得すると、ラベルのスティッカーを商品に貼ることが許されます。
現在の消費者傾向や政治情勢など、マーケットの背景を熟知したマガジンが、大小の小売店のディレクター、またそれぞれの部門のスペシャリストと連携して、生産者の仕事を紹介し、大きな団体に左右されることのないフェアなステージを設けるというのは、なかなか挑戦的な試みだと感じました。
SNSで消費者に直接働きかけることのできる自由な時代ではありますが、生産者と卸業者、小売店、あるいは生産者同士との繋がりは見落とされてしまいがち。しかし、そうした繋がりこそが実は大切で、幹を太くしていかなければならない。偏りなくマーケットを進展させ活性化するために、良い関係を築くステージを用意することの大切さを考えさせられました。
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