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自然と人とガストロノミー@Annecy フランスの週間フードニュース 2022.02.26
今週のひとこと
スイスとの国境も近く、ジュネーブとシャンベリーの間に位置する、アヌシー湖畔のアヌシーへ出かけてきました。アヌシー湖は世界屈指の透明度で知られるだけあって、山に囲まれた湖面の美しさには息をのむほどでした。運河の流れる街中にも、清涼感の溢れた空気が満ちていて、観光客がいても、騒々しさがなく、不思議な空気を纏っていました。
湖畔には観光地だけあって、ミシュランの3つ星、2つ星などもありますが、今回は割愛。しかしながら、この辺りサヴォワ は、良質の乳で作られるチーズ、そして注目される若手醸造家が次々と挑戦する、個性的なワインでもにわかに愛好家が増え始めた地域で、地元でしかなかなか見つけられない生産者が作るワインとの出会いを堪能してきました。
サヴォワは、革命後にフランスに併合され、フィロキセラにも悩まされ、マイナーな産地に陥ってしまっていましたが、土着のぶどう品種、モンドゥーズやジャケール、アルテスなどの特徴と、険しい山岳地域のクリマに挑戦する若手も多く、自然の力強さ、澄み切った味わいは、今の時代との親和性が高いと感じました。
ところで、
湖畔を眺めることのできるホテルに滞在したのですが、たまたま、ロビーで時間を持て余していたとき、従業員の方の計らいで、その日は空いていた最上階のスイートをヴィジットさせてくださいました。
180度の眺望で、朝日が美しいというので、方角を聞きました。
「私が住んでいるのは、向こうに見える住宅街のあの辺りなのですよ。窓から朝日が差し込んでくるのが、左からなので、このホテルもこちら左が東になりますね」という。
この答えに、はっとさせられました。
彼にとっての軸は、住んでいる自宅である、ということ。
つまり、自分があって、おそらく家族がいて、そして務めているホテルがあり、そしてお客がいるということ。
自分軸で生きているからこそ、アヌシーの美しさも自分の言葉で伝えられる。決して方位磁石で人生を図ることをしない。
前々回の「今週のひとこと」でも記しましたが、メートル法によらぬ、自分の目で見たものさしで生きる人がここにもいるのだなと思いました。
それにしても、アヌシーから1時間弱、バスで山を登ったとことにある標高1700メートル近くのLe Semnozの雪山は、美しかった。
人と自然が一体となって、神々しい。
こうした感覚が、サヴォワのガストロノミーの美味しさ、チーズやワイン、シャルキュトリーなどと、挑戦する生産者を生み出しているのかなと思います。
ところでアヌシー湖の水は、無処理で飲めるのだそうです。アヌシーの街中の水道は湖の水をそのまま引いているとか。硝酸塩の含有量なども、ボトル入り飲料水の認可レベルよりもはるかに低いそうです。
「水清ければ大魚なし」という故事がありますが、文字通りとらえて話せば、本当に私の目からは魚は一匹も見つけられませんでした。
でも釣り人は多く、カモメも飛び交っていました。
見る人には見ることができるし、捕らえることができる。それを包み込んでくれるのが寛容で厳しくもある自然でした。
今週のトピックスは今週のひとことの後に掲載しています。フランスの様々な料理事象をアクチュアリテからお伝えします。ホテル・レストラン業界における、管理部門での女性の活躍を、身近から感じられる2022年の始まりです。【A】サン・ラザール駅周辺のリノベーション。【B】注目のNIKKEIレストラン。【C】時のシェフJean Imbert。
今週のトピックス
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