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眠れない夜のために
■ 感想
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夢十夜ならぬ、眠れない夜から零れ落ちた静かな10の短編たち。
SNSを夜な夜な漂う化け物たちが重なり合う世界を描いた第一夜「森をさまよう」。仮想と現実、虚と実が混じり合い、化け物たちの夜は更けていく。誰もがなにかの化け物に当て嵌まる、世はまさに化け物時代の百鬼夜行を思わせ、不眠の底で彷徨し、虚しさを呪詛のように吐く乾いた現代の寂しさは、朝の光を合図に人間に戻っていく。
SNSに巣くう闇夜を照らすサーチライトのように、眠りと覚醒の狭間で起きた小さな出会いを描く第三夜「水のいきもの」。
”眠りは水の中につながっているのかもしれない。そんなことを考えるほど、よく水にいる夢を見た。”
眠りは水の中につながっているのかも…は感覚としてとても分かる。早く走りたいのに空回りした足が重くて夢の中ではいつも思うように走れないのも、水の中で歩く感覚にとても似ている。抱き枕を抱えて丸くなって眠ると心地いいのも、母の胎内で過ごした胎児としての感覚がどこかに残っていて、温かさに包まれ、自らを抱きしめるようにして眠った羊水の記憶が連れてくる安心感なんだろうか。猫が母乳を飲む幸せを無意識に反芻して、毛布や柔らかいものを踏みながら喉を鳴らすことと同じように。
悪夢も怖いけれど、寝れない夜に抱える焦げ付くような思いに囚われるのはもっと怖い。できれば第九夜「寝息」のように、蜂蜜色の空気を纏い、幸福そうな笑みを浮かべた安寧の夜に包まれて安眠できる日々であってほしい。西淑さんの窓辺にとろりと輝く月に導かれて、優しい眠りが訪れますように。
■ 漂流図書
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◽ガラン版 千一夜物語(1)西尾 哲夫 (翻訳)
眠れない夜というか、興味を惹く話ができないなら永遠の夜がやってくるのは怖すぎるけれど、王を夢中にさせる物語を語り続けるシェヘラザードを来年は沢山読みたい。