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頭の中がカユいんだ
■ 感想
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妻子を残して家出をしては飲み歩き、現実と陶酔は綯交ぜになり、苦しみを覆い尽くすようにまた酒を浴びる。緩やかな自殺のように繰り返される痛飲は時に切なくも、勢い込んだ走馬灯のように軽快に脳内を駆けていく。
思考の一端を取り留めもなく羅列しているように見えて、虚実のバランスやエンタメ性も多分に含み、破天荒さの中に人としての愛らしい弱さをみせてくるあざとさもまた魅力のひとつかもしれない。明確な区切りもなく、リアルな脳内を綴るように流れていくパートでは、綺麗事だけで包まない誠実さとユーモアに富み、日本の至宝・川端康成も一刀両断。
『足元はフラフラする。いい年をしてラリっているのだ。しかし川端康成だっていっつもラリってたじゃないか。何が「美しい日本だ」。ノーベルじじいめ。』
ノーベルじじい(笑)本が爆ぜらんばかりの鋭い眼光で睨みつけているノーベルじじ…、いや至宝・川端が見え隠れして笑ってしまった。
繊細さを浮薄な言葉で隠しながらも、
「結局、人間はどっかにでかい穴があいているのだ。何かで埋めなくてはいけない。埋められればなんでもいい」
と吐露してみたりもする。弱さの強みが読者に寄り添い、小さな光を灯し続ける。
■ 漂流図書
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■全ての聖夜の鎖 | らもん
中島らも名義になる前の「らもん」で100部限定で刊行された処女作の復刻版。
A4判と大きなサイズで堪能できるのも嬉しく、上質なコート紙に印刷されているのでずっしりと重厚感のある佇まいが美しい。