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■ 感想

モーパッサン(訳)もきかずこ(絵)ゲーリー・ケリー(西村書店)P47(ISBN)9784890138708

「首飾り」の題名のほうがよく知られるモーパッサンの短編。陰鬱な物語にゲーリー・ケリーの挿絵が色を添えることでフランス映画を見ているような美しい哀愁が加わり、洗練された大人の童話として名状しがたい余韻で包んでくれる。

自らの美しさに溺れ、見栄と理想を捨てられなかったロワゼル夫人に訪れた輝かしい幸運の夜。その夜の為友人に借りた首飾りが彼女の運命の歯車を大きく変えていく。皮肉な破局を迎えたその後の彼女は逞しくも奮起するが、この物語はどこまでも容赦がない。やっと小さく息ついた時に落とされる暗澹たる真実は重く、甘くない人生を教えてくれる。

いつの時代も生きにくい女性という人生の教訓が短い話の中に沢山散りばめられ、苦々しい物語の中の大切な事ひとつひとつを時々に思い出し、ロワゼル夫人から学んだことを取り違えることなく繋げていけば、美しい思い出たちで人生をぐるりと繋ぎえるかもしれない。しかし人生に「もしも」はなく、思うより苦しい側面も多いが、どん底から再生していくのは自分の気持ち次第。

モーパッサンは辛辣であり、深く優しい。

■ 漂流図書

ネックレス▶️漂流図書

◽三島由紀夫のフランス文学講座(ちくま文庫)

小説も文学もフランスの作品に心惹かれることが多いので、今年はフランス作品に沢山触れていきたい。

三島はどうフランス文学を読み、評価していたのかも楽しみ。

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