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【読書記録】本屋大賞ノミネート作をたくさん読んだ一ヶ月〜2025年2月 全17冊〜

 2月は全17冊(紙10冊、Audible7冊)読むことができました。
 紙の本は先月より5冊も減ってしまったのですが、今月はAudibleを一ヶ月お試ししたおかげで読書総量は増えました。

Audibleを「読書」と言っていいのか?という疑問については、以下の記事で触れています。

 では、それぞれ簡単に振り返りをしたあと、2月のベスト3を発表します。

※「♫」マークはAudibleを利用しました。

2月に読んだ本(読了日順)

評価は私の個人的な好みで5段階にしています。

 ★5ーめちゃくちゃ良かった!再読する可能性大。
 ★4ー再読はしないかもしれないが、かなり良かった。
 ★3ー面白くなくはない。
 ★2ー部分的には良いところもあった。
 ★1ー私には良さがわからなかった。

2/4 長月天音 『キッチン常夜灯』(角川書店)

評価:★4.5
 吉本ばなな『キッチン』(新潮社)がだいすきなのですが、それと似ていて、やわらかくてあたたかい物語でした。
 わたしも夜眠れないときがあったので、あのとき、「キッチン常夜灯」のような心の拠り所となる場所があれば良かったのになと思いました。
 夜の喫茶店とかレストランって、なんかいいですよね。今はもう元気だし、夜も眠れるけれど、お気に入りの、そこに行けば元気になれる場所を見つけたいなと思いました。
 「食×物語」の組み合わせが好きなひとにはおすすめの一冊です。

♫2/5片野秀樹『休養学 あなたを疲れから救う 「休み方」を20年間考え続けた専門家がついに編み出した』(東洋経済新報社)

評価:★3.5
 働いているすべての人に読んでほしい!
 休むって寝ることだけじゃないとはわかっていたけれど、きちんと言葉にして伝えられることで、その他の休養方法も意識的に取り入れるようになりました。
 わたしはこの本を読んでから、ちょっと眠たいなと感じたら、15分間タイマーをセットして昼寝するようになりました。いい感じです!
 すぐに実践できることもたくさん書いてあります。
三宅香帆『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(集英社)と合わせて読んでいただきたいです。

2/8垣谷美雨『あなたの人生、片づけます』(双葉社)

評価:★4
 タイトルに惹かれて購入しました。期待を大きく上回り、思いがけずとてもおもしろかったです。
 ケースごとに、様々な年代の人が語り手になるので、誰かには感情移入できたり、共感できる部分があったりすると思います。老若男女におすすめできます。
 教員時代に、教科書でこんまりさんが扱われていたので、教材研究として”The Life-Changing Magic of Tidying”を読みました。読後に感じた爽快感が似ているように感じます。
 やっぱり、場を整えることで心も整う。それが片付けの魅力なのかな。

2/9 阿部暁子『カフネ』(講談社)

評価:★4
 本屋大賞2025ノミネート作。Xでも話題で、ずっと気になっていました。
 『キッチン常夜灯』と同じく、「食×物語」が好きな人には絶対に刺さると思います。
 主人公の薫子の生真面目さに、自分を重ねて読みました。

家族だって、恋人だって、友達だって、同じ家に住んでたって、セックスしてたって、人間は自分以外の人間のことは何ひとつわかるわけないんだよ。わかったような気がしてもそれはただの思い込みだ

p.203

 たくさん心に残る一文があったのですが、一箇所だけ、自殺を肯定するような文章があって、そこだけどうしてもモヤモヤして、★5にはできませんでした。
 でも、救われる人がたくさんいるであろう素敵な作品であることは間違いないと思います。
 「クソ真面目」と言われたことのある方にもおすすめです!

♫2/11 奈倉有里『文化の脱走兵』(講談社)

評価:★5
 三宅香帆さんがXで紹介されていて気になり、Audibleで聴きました。良すぎて、すぐ紙でも手に入れました!
 ウクライナとロシアの戦争に触れられています。わたしはどこか見ないようにしてきたところがあるけれど、奈倉さんはロシア文学者であることもあり、しっかり向き合っていらっしゃいます。
 その目を通して静かに語られる怒りに、目を逸らしていたことを恥ずかしく思いました。
 文化の大切さや役割、と言葉にすると陳腐に感じるけれど、それに希望を託したり、信じる気持ちにさせられました。
 本好きには刺さると思います!

♫2/11市川沙央『ハンチバック』(文藝春秋)

評価:★3.5
 Audibleで2時間ないくらいで、すぐ聴けるな〜と軽い気持ちで聴きました。
 背後からいきなりぶん殴られたぐらいの衝撃を受けました。
 人間って、自分の体験したことを基準に自分の価値観を形成してしまって、そこから外れる人を無視してしまうところがありますよね。自分から見えないものは、無いものとして扱ってしまうという、人間の浅はかさを眼前に突きつけられました。
 この作品を理解しきれたと言えないので評価は低めですが、読めて良かったと思っています。
 紙の本が好き!それ以外は「読書」じゃない!と思っている方に、ぜひ読んでいただきたいです

2/11一穂ミチ『恋とか愛とかやさしさなら』(小学館)

評価:★4
 とにかく物語に引き込まれ、するすると最後まで読んでしまいました。
いつもなら途中で集中が途切れてスマホを触ってしまったりするのに、そうならなかったです。読ませる何かがありました。
 女性である新夏視点にはかなり感情移入しましたが、婚約者の啓人視点は、どこか受け入れられない気持ちで読みました。
 新夏が考えていたように、わからないこと、わかり合えないことを避けて諦めるのではなく、わからないこと、わかり合えないことを認める、のが大事なのだと思いました。
 一穂ミチさんは初読みだったのですが、他の作品も読んでみたいと思いました。
 辻村深月『傲慢と善良』(朝日新聞出版)が好きな人には刺さるかも……?

2/15町田そのこ『52ヘルツのクジラたち』(中央公論新社)

評価:★4
 ずっと読んでみたいと思っていたけれど、「虐待」をテーマに扱っているということで、なかなか手に取れずにいました。
 以前『星を掬う』(中央公論新社)を読み、だいすきな作品になったこともあり、今回やっと手に取ることができました。
 苦しいけれど、暗くなりすぎずに読めるところが、町田そのこ作品の魅力なのかもしれないと思いました。
 もちろん虐待は許されることではないけれど、母親など虐待してしまう側を救うことはできないのだろうか?と考えてしまいました。

2/16鈴木俊貴『僕には鳥の言葉がわかる』(小学館)

評価:★5
 大学の時、言語学(英語)が専門だったので、非常に興味深く読みました。
 言語学をかじったものとして、「鳥も言語を持つ」ということに驚きはなかったのですが、文を作ることができたり、単語ごとに表象をきちんと持っていたり、わたしが想像していたよりもはるかに「言語」を持っているのだと知ることができました。
 文理融合の象徴とも言える、動物言語学という新しい学問も知ることができました。
 高校生などが進路選びの際に、この本を読んでいるか読んでいないかで、選択肢が大きく変わってくると思います。高校生以下の学生にもおすすめしたいです!

♫2/17凪良ゆう『汝、星のごとく』(講談社)

評価:★4
 『流浪の月』(東京創元社)は理解し切れなくて、自分の未熟さを感じたのですが、本作は純粋に好きだと感じました。
 こちらはAudibleで聴いたのですが、紙でも手に入れたいと思っています。
 わたしは結末がとても好きでした。切ないけれど、理想的な終わり方でした。
 凪良さんは、恋とか愛とかを超えて、「自分の唯一の理解者」とのつながり、同じ世界の見え方や感じ方をしている人同士のつながりを肯定的に描いていると思います。
 わたしは同じ本屋大賞受賞作でも断然こちらが好きだったので、『流浪の月』があまり刺さらなかった人にもぜひ読んでみていただきたいです

2/18 古賀史健『20歳の自分に受けさせたい文章講義』 (星海社)

評価:★5
 Xで、FFさんの読了ポストを見て、読みたいと思っていたら、夫が持っていたので拝借。
 「自分の体験・体感したことしか書いてはいけない」であったり「自分の嫌いを掘り下げると、書き手としてのアイデンティティが見えてくる」であったり、大事なことを教えていただきました。

「いい文章」とは「読者の心を動かし、その行動までも動かすような文章」のことである。

p.268

 わたしも「いい文章」が書けるように、これからもがんばりたいと思います。
 文章の書き方をテーマにした作品では以下の二つもめちゃくちゃおすすめです。

♫2/21早見和真『アルプス席の母』(小学館)

評価:★2
 昔から高校野球をテレビでよく見ていたこともあるし、彼らの一生懸命なプレーに何度も涙したことがあります。だから、感動して目が潤む部分はありました。
 一方で、描写が冗長に感じるところが多かったり、主人公である母親 菜々子の「どういうこと?」とか「どうして?」とか聞き返しが多くてうざったく感じたり、聴くのがしんどかったです。
 監督に関しても、裏金問題はうやむやになって、最後はなんか良い監督みたいに描かれていたりするのも納得できませんでした。
 お母さん世代は刺さるかもしれませんが、わたしは自分の母に勧めようとは思わなかったです。

2/24 朝井リョウ『時をかけるゆとり』(文藝春秋)

評価:★3.5
 何度も声に出して笑ってしまうほどおもしろかったです!一番笑ったのは「スマートなフォンに振り回される」です。
 めちゃくちゃおもしろいと感じているにもかかわらず、なかなか手が伸びなくて、読み始めてから読了までに一ヶ月もかかってしまいました。
 おもしろいのに進まない、というのは矛盾していますよね。
 たぶん、一気に摂取するにはおもしろすぎたんだと思います。明るすぎるというか……
 「直木賞を受賞しスかしたエッセイを書く」という真面目なエッセイが一番好きだったので、単純にわたしが真面目な文章のほうが好きなだけかもしれません。
 でも、『何者』(新潮社)の萌芽を感じるエッセイもあったり、朝井ファンにはたまらない作品だと思います!

♫2/26金子玲介『死んだ山田と教室』(講談社)

評価:★4.5
 こちらも本屋大賞2025ノミネート作のひとつ。
 前半のコミカルな男子校ノリに、声を出して笑う部分もありました。下品ではあるけれど。
 前半と後半でかなり雰囲気が変わって、だんだん切なくなっていきます。前半では笑っていたのに、後半は泣いていました。
 切ないんですが、希望も感じる作品でした。
 読後に「ここって結局どういうことやったん?」ということが一切なく、伏線回収もきちんとされます。
 生きるとは、死ぬとは、どういうことなのか?そんなことを考えさせられました。
 なんとなく男性の友情の終わり方と、女性の友情の終わり方って違うと思うんですよね。だからたぶん、女性よりも男性の方が分かる部分が多くて刺さるのではないかな?と思います。夫や弟に勧めたいと思いました。

2/26青山美智子『人魚が逃げた』(PHP研究所)

評価:★4
 なんて優しい物語なんだろう、と思いました。
 2章の親子の話は、休職中、大学時代にお世話になった先生に言われたことを思い出しながら読みました。
 子育てのことを考えると、教員を続けていくのに無理を感じる、と私が話すと、それはわかるけれど、子育てだけだと、それが終わったあとはどうするのか?何が残るのか?というようなことを言われました。当時はそれもそうだなと思いました。
 でも、2章を読んで、きっと何者にもなれなくても、何かを成し遂げなくても、子育てだけでも大丈夫だと勇気と希望をもらいました。
 母にも読んでほしいなと思いました。

2/28川上未映子『すべて真夜中の恋人たち』(講談社)

評価:★4
 真夜中のように静かな物語でした。
 『黄色い家』(中央公論新社)を読んだとき同様、感じたことは確かにあるはずなのに、うまく言葉になりません。
 主人公である冬子の孤独や生きづらさはわかる気がします。そして、冬子の友人である聖のそれも。
 別に明確な原因や理由がなくても、自分が世界から一人取り残されているような、世界に自分しかいないような、そんなふうに感じることがあると思うのです。
 生きていくのしんどいな、と思ったことのある人はぜひ手に取っていただきたいです。

♫2/28羽田圭介『スクラップ・アンド・ビルド』(文藝春秋)

評価:★3
 わたしもそうなのですが、年老いたあと「延命治療はせずに自然に死にたい」と考えたことがある人は少なくないと思います。もしくは親にそうお願いされているとか。
 でも、今は医療技術の発達により、きっと昔ならすでに亡くなっていたであろう人も、延命することができますよね。果たして、それは本人が本当に望んでいることなのでしょうか?
 さらに言えば、「尊厳死」を望むことはタブーなのか?長生きすることが、自然に死ぬことが、絶対的に正しいことなのだろうか?
 やはり芥川賞受賞作はどれも、自分の常識や価値観をゆさぶってきますね。

2月のベスト3

 それでは全17冊の中から、ぜひみなさんにも読んでほしい本ベスト3を発表します。

第1位 市川沙央『ハンチバック』(文藝春秋)

第2位 鈴木俊貴『僕には鳥の言葉がわかる』(小学館)

第3位 金子玲介『死んだ山田と教室』(講談社)

 先月までは、わたしの好きな順でベスト3を選んでいたのですが、今月からは「人に読んでほしいと思ったか」という観点から、ベスト3を選ぶようにしようと思います。わたしの好みは、それぞれにつけている評価でわかりますもんね!

 ということで、今月は自分の常識を揺さぶられたり、思考を動かされたりした、みなさんにもぜひ読んでもらいたい3冊を選びました。ぜひ手に取ってみてください!

2月の振り返りと3月の展望

 2月は本屋大賞ノミネート作をたくさん読むことができて、あとは恩田陸『spring』(筑摩書房)を残すのみとなりました!
 今年のだけではなく、歴代本屋大賞ノミネート作もいくつか読めたので、今年の本屋大賞予想に活かしたいです。
3月中に、今年の本屋大賞を徹底予想した記事をアップする予定ですので、お楽しみに!

 この一ヶ月でAudibleにも慣れて、いろいろ聴けるようになってきたので、3月は2月よりももっとたくさん読める予感がしています。

 2月は京都の丸善にも行って、結構買ってしまいました!積読が50冊を超えてしまったのですが、どれも読みたい本ばかりなので、ウキウキしています。

 その積読もどんどん読んでいかないといけないとは思っているのですが、学生時代に読んで今はもう手元にないけれど忘れられない作品を読み直す、再読月間みたいなのもやりたいな〜と考えています。3月は無理でも4月とか……

 3月は春休みがあって、学童指導員としては忙しくなるのですが、できるだけ自分の心が求めるままに、読書を楽しみたいと思います!

 Audibleを一ヶ月試した体験記もありますので、オーディオブックって実際どうなの?と思われている方はぜひ〜!

 それではまた、来月の振り返りをお楽しみに!

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