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自分の感じたことに自信が持てなくなることがある人へ~「好き」を言語化する技術 推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない(ディスカバー携書)~

 本を読んだり、映画を見たりして「めっちゃ良かった!」と思ったとき、Xにポストすることが多い。140字という制限もあるため、とにかく「良かった」「おすすめ」とだけ書いて、その後すぐにその作品タイトルで検索してしまう。同じような感想を見つけてにやにやしたり、自分とは異なる意見を見つけて、悲しんだり憤ったりする。そういう解釈もできるか、と自分になかった視点に感心することもあれば、なんだか筋が通っているように思える否定的な意見を見て、私が良いと思ったのは間違いだったのだろうか、と思ってしまうこともある。これに似た事象として、自分の推しのアンチコメントを見つけて、正しいかわからない情報だとは分かっていても、推しを信じきれない自分に悲しくなったりすることもある。

自分の感じたことに、自信を持てなくなることがある。


 以前、タイトルに惹かれて『(読んだふりしたけど)ぶっちゃけよく分からん、あの名作小説を面白く読む方法(笠間書院)』を購入した。その時、夫から「三宅香帆やん、有名な人やで」と言われて初めて彼女のことを知った。実はその本を購入したものの、そのあとしばらくして休職することになり、本を読める状態ではなくなった。そして読まないまま、引っ越しの際に手放してしまった。それから約2年経ち、三宅香帆さんは『なぜ働いていると本が読めなくなるのか(集英社新書)』でメディアに取り上げられることも増え、名前を聞くことも多くなった。この作品も興味をそそられるタイトルだなと心惹かれたが、すでに退職していたこともあり、手に取ることはなかった。しかし、夫が彼女のファンで、ラジオを聞いたりオンライン講演会に参加したりしていたため、彼女への興味は膨らんでいた。そんな時、本屋で『「好き」を言語化する技術 推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない(ディスカバー携書)』を見つけた。

 私は小学生の時から読書が好きで、これまでの人生でたくさんの本を読んできたという自負がある。中学生1年生の時、作文が学校の代表に選ばれたこともある。教員採用試験の面接練習で、担当教員から「本を読む人ですね。言葉選びでわかります」と言われたことも誇りに思っている。家族に、書いた文章読んでもらったとき「やっぱり上手」と言われるのも満更でもない。クラウドソーシングサイトで、文章添削サービスをしていたりもする。つまり、文章を書くのは得意な方で、言語化する技術はある方だと思う。だから、私が『「好き」を言語化する技術』を手に取ったのは、単純に三宅香帆さん自身に興味があったからだ。

 (自信過剰だが)予想に反して、言語化する技術についてかなり勉強になった。すでに実践していることもあったが、何ができていないかもわかった。もちろん自信が多少あったとは言え、三宅香帆さんも書いているように、これまでに文章の書き方をきちんと教えてもらったことはない。たくさんの人に読んでもらい、自分の伝えたいことをできるだけ正確に伝えるためには、一定のマニュアルというか技術も必要だと痛感した。

 また、冒頭に書いたように、自分の感じたことに自信がなくなる場面のことなど、共感や同意する部分が多々あった。

他人の言葉と自分の言葉を、ちゃんと切りわける必要がある。

-出典:「好き」を言語化する技術 推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない / 三宅香帆 [261ページ] より

 本当にそうだなと激しくうなずきたい。本作を通して、彼女の言語化する技術はもちろんのこと、彼女自身の社会を見つめる目にもリスペクトを持った。彼女の書籍タイトルにはどれも興味をそそられる。それは彼女がたくさんの本を通して、現在の社会がどの方向に進んでいるのか、人々が何に興味を持っているのかを見つめ、分析した結果なのだと思う。彼女の社会を見つめる目は、永井玲衣さんとも通ずるところがあると感じる。私も彼女たちのように、人間や社会や世界を見つめ、言語化したいと思う。


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