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感情を持たない化け物は。

俺はどうやら化け物らしい
周りが俺を見て言う
あいつは化け物だ
感情を持たない化け物だと
見た目は同じなのに、何故だろう

「おいで」
俺の声に唯一返事をしてくれる
腕の中に収まってしまうくらいの
白い毛玉
俺の顔を舐めては
黒い宝石をこちらに向ける

茶色のカリカリを食べる毛玉
尻尾が左右に慌ただしく揺れる
…元気だな
突然、ぎゅうっと胃が締め付けられた
俺も何か食べるか

冷蔵庫は空っぽだった
「少し待っててくれ」
追いかけてくる毛玉に言った
可愛いやつだ

外では俺を冷めた目が刺す
それでも何も感じない
やっぱり俺は化け物なのか
適当に惣菜を選んで買う
食べられればなんでもいい

「ただいま」
返事がなかった
靴を脱ごうと足元を見ると
白い毛玉が横たわっていた
俺は初めて叫んだ
毛玉は返事をしない

腕の中で呼びかけている間に
毛玉は体温を失った
持病があるとは聞いていた

でも
こんな
こんなことって

庭に咲いている梅がこぼれた
こぼれた花びらが
風に乗ってやってきた

「…なぁ、俺は化け物なのか」

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