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淡雪
2019年8月13日 18:12
前回 手が悴む。指先が氷に触れた時のように冷たい。 季節はあっという間に移り変わっていくなと、しみじみ感じる。今日は随分冷え込んだ。夜には雪がチラつくとか。 冷えきった手に白い息を吹きかけながら、いつものように神社へと向かう。鳥居をくぐると、いつものように彼女がいた。 「こんなに寒いのに、来てくれてありがとう」紅は、そう言ってふわっと笑う。とくん、と胸の奥が鳴るのを感じた。
2019年7月25日 13:28
前回今朝もクラスが騒がしい。特に女子が。ハテナマークを浮かべる俺に、クラスメイトが言った。 「なんか、隣のクラスに転校生が来たらしいぜ。それも男の」 それで、女子が騒いでるのか。まぁ、珍しくもないか。見に行ってみるか? とクラスメイト達につられ、野次馬心で行った。ドアから顔を出し、見渡すと明らかに女子が集まっている机を見つけた。机の主は、鬱陶しそうに教室から出ていく。次の瞬間だ
2019年7月17日 20:39
前回紅と出会ってから、俺は毎日のように神社を通った。彼女と話したり、最近は神社の掃除をしている。気がつくと季節は梅雨に移っていた。「うえぇ…また雨か…」木を傘代わりにしつつ、呟く。唸る俺を見て彼女は言った。『雨、嫌いなの?』雨…嫌いじゃないけど、好きとも言えないな。蒸し暑いし、濡れるし。今も靴下が雨を吸っていて、気持ちがいいものじゃない。『私は好きだけどな、雨。雨音とか心地
2019年7月16日 22:23
桜が舞う季節。やわらかい風が時折吹いては、春の訪れを伝える。冬の凍える寒さはどこへ行ったのやら。 先週から新学期が始まった。四月は出会いの季節って言う通り、新しい友人にも恵まれた。俺…如月光希にとって人と関わるのは最も重要なことだからな。 元々俺は月に住んでいた。月の神、月夜様の使いとして。"使い"なんて言ってるが、まぁ部下みたいなものだ。昔から人は、月に神が宿っていると伝えてきた。
2020年3月13日 16:30
前回誰も来ないところ…と考えてもやはり、屋上しか思いつかない。放課後に屋上なんてベタすぎるだろ。他に妙案はなかったから、結局屋上に呼び出すことにした。直接言うのも気まずいっていうか、恥ずかしいから靴箱に手紙を忍ばせておく。いつも通りの授業がやけに長く感じたのは、気持ちが落ち着かないからか。恋愛なんてしないと思っていた俺が、まさかこうなるとはな。授業も終わり、屋上のベンチで文庫本を読みつ
2020年3月13日 16:17
前回早くもリハーサルの日。ステージ発表は俺らだけではないため、他の部活生にも聴かれることになる。いい練習になるだろう。演劇部、コーラス部に続いて軽音部だ。例のごとくマイクの確認をして、光希に合図を送る。体育館は部室と音響が全然違う。何度も体感してきたことだが、改めてそれを感じる。心地よいギターの音に歌を合わせ、体育館に響き渡らせる。少しは緊張するものかと思ってたが、案外そうでもない。それ
2020年3月13日 16:08
前回やるとは言ったものの、文化祭まであと9日しかないんだよな。セトリやなんやらは任せるとして、あと何回合わせて練習ができるのかってのが重要か…。「そうだ、この曲は聴いたことないんだけど、誰が演奏するんだ?」手を挙げて答えたのは睦月だった。聴いてみないと歌えないしな。「確か、動画サイトにあるんだっけ?」横から声を出したのは光希。携帯でも聴けるやつか、つくづく便利な世の中だよな。制
2020年3月13日 15:51
前回翌日。教室に入ると俺の席に誰かがいることに気がついた。カバンをロッカーに入れ、席につこうとすると待ってましたとでも言うように話しかけられた。「星! 頼みがあるんだけど…」彼は、如月 光希。俺と同じ月の使いの1人。俺以外にもこの学校にいるとは聞いていたんだが、真逆隣のクラスだとは。しかも、俺のいわゆる幼馴染…いや、腐れ縁か?「断る」「まだ何も言ってないじゃん!」此奴の
2020年3月13日 15:42
コンコンと黒板を叩くチョークの音が、教師の声と混ざる。目だけで周りを見渡せば、真剣な眼差しで授業を受ける人、ガクンと船を漕ぐ人、机に突っ伏して寝息を立てる人。半分の人は寝ている気もするが、様々な人がいる。そんな中俺は、外を眺めながらぼうっと考えていた。何故俺が生徒に扮しているのかを。遡ること1週間前、いつものように書類の整理をしていると上から呼び出された。**俺は元々人ではない。月に住