VR世界で大好きなアニメキャラの「成長」に立ち会えた話
2023年の春、好きなアニメキャラのライブに「参加」することができた。あれから1年。今年のライブは来てくれるだろうか。
今年も、サンリオVfesの季節がやってくる。
出場してほしい!
心配していることがあった。昨年会えた「mashumairesh!!(通称ましゅましゅ)」は、2020年放送のアニメ「SHOW BY ROCK!! ましゅまいれっしゅ!!」から生まれたバンドだ。そのあと2021年に続編「SHOW BY ROCK!! STARS!!」が放送され、さらにはアニメが終わってからも曲をリリースし続けていた。
しかし、その流れは2022年を最後に止まることとなる。いつも聴いているましゅましゅのプレイリストは、それからずっと同じ顔触れのまま。
アニメの流行り廃りは早いもので、数か月後にはもう別のアニメに人が群がっていく。かつて人が集った作品も、気温の変化とともに忘れられていく。
そんな世界で、今年もましゅましゅに会うことができるだろうか。
12月、ステージが発表された。ましゅましゅはどうだとステージ一覧の画像をタップする。
頭が一瞬まっしろになった。
今年は、ましゅましゅ関連のライブが4つもある!
「DOKONJOFINGER」はアニメに出てきたもう一つのバンドだ。男性4人で粗削りで力強いパフォーマンスがきっといい味を見せてくれるはず。
あと、バーチャルパレードとは一体……? パレードというと山車に乗ってキャラクターが踊ったり手を振ったりするイメージだが、バーチャルでそれをするとは思えないし。
大きな楽しみができた。
VRならではのパレード
梅の花が咲き始めた2月の下旬にサンリオvfesが始まった。
さっそく、パレードを見に行こう。1年ぶりに、ましゅまいれっしゅに会えるんだ。
ワールドの読み込みが終わり、視界が明るくなっていく。
鼓動が早くなる。ここが会場ってことは、演奏する姿が見えるってことだよね。
1年ぶりにましゅまいれっしゅに会えた。待ってたよ。しかし、昨年のライブ会場と比べると距離が遠い! フェスって行ったことないけど、みんなこのもどかしさを感じているのか。もっと近くで見たい。
ずっとこれだと厄介オタクになりそう。そんなやましい気持ちを持っていると、後ろに気配を感じた。
そうか、パレードは普通のライブじゃないのか。
パレードは、まさかの「物語」だった。四人の掛け合いが1年ぶりに見られるという事実に思わず手をぶんぶん振り回した。
彼女たちの姿を見ていると、ようやく何が起こったかわかってきた。
殻を固く閉ざした茶柱さん。
四人はそれぞれ言葉を投げかける。
彼女たちは偶然がきっかけで「ましゅまいれっしゅ」というバンドを組み、時にぶつかり時に寄り添い時に涙を流し時に笑顔をこぼしながら進んできた。そんな彼女たちの言葉だ。
好きなものは好き。人と比べるものじゃない。その気持ちを大切にしよう。相手の心がわからないなら、しっかり話そう。
だから、心配はいらない。no problem!! だ。
この言葉、VRChatterにも刺さる言葉だ。なるほど。今回のパレードはVRChatの人が楽しめるようにしっかり考えられているのか。
ここから怒涛のライブが始まった。
バーチャルカメラをにぎりシャッターを押す。みんなが仲良く演奏している姿を、ぴょんぴょん跳ねて演奏する姿を目に焼きつける。
気づいたらあっという間にパレードは終わっていた。
時計を見ると、40分もすぎていた。パレードは、メインのライブの30分よりも長かった。思わず会場でぼーっと夜空を見上げた。
パレード、想像の10倍はすごかった。ストーリーが面白いのはもちろんのこと、VRChatterが楽しめるように作りこまれていたこと、曲が5曲も演奏してくれたことがうれしい。
しかも、最後の2曲はアニメ最終話の挿入歌「プラットホーム」「アノカナタリウム」だった。全力でましゅまいれっしゅを好きになってもらおうという強い意志を感じてこちらもうれしくなってくる。
これが無料だなんて。
さて、ここまで来て一つ新たな心配事ができた。パレードがあまりに良くてハードルが上がりに上がってしまったけど、ライブ大丈夫?
メインのライブだ!
大満足のパレードを終えたのに、まだメインステージが残っている幸せさよ。
1週間後、ライブステージの世界に降り立った。今度はどんな4人が見られるんだろう。待つ時間が69倍長く感じる。
時間になる。彼女たちが帰ってきた。
やっぱりライブにはパレートとは違う良さがある。耳を左右にぴょこぴょこ動かすドラムのルフユ、時々二人で見合う仲良しなギターのほわんとヒメコ。クールなようで楽しさが演奏からにじみ出ているベースのデルミン。
そんな姿を間近で30分もじっくりと味わえる。
演奏を見つめていると、バーチャルな空間に身体が溶け込んでいく。
パレードにおいて、僕らは「傍観者」だった。でも、ライブでは「観客」として参加できる。それがたまらない。
今自分が立っているのは、彼女たちと同じ「世界」だ。
このあと「星たちのオーケストラパレード」「トリガーロック」と曲が続いていく。
演奏している姿を見て、自然と感じたことがあった。「ましゅまいれっしゅは今を生きているんだ」と。
どういうことか。
実は今回演奏している3曲は、全部アニメで流れていない曲だ。特に2,3曲目は、アニメ放送後にリリースされた新しめの曲になる。つまり、今回のましゅましゅは「最近作った曲」を選んでいる。
もしアニメの延長線上のようなライブを見せたいなら、全く違ったセトリになるだろう。
ライブを通してましゅまいれっしゅは、「アニメに出てきた彼女たちの姿」ではなく「今の彼女たちの姿」を見せているのだ。
しかし、ここでちょっと思ってしまったことがあった。この曲たち、昨年のvfesでも聞いたなと。
久々のライブに満足している一方で、ついマイナスなことを考えてしまう自分がいる。このままでは昨年をなぞっただけだよね、と。
せっかく「今」を見せてくれるなら、ましゅましゅの新しい姿が見たい。
その心配は、最高の形で裏切られることとなる。
「新曲の花びらの栞、聞いてください」
「えっ!?!?」と声が出た。
頭がまっしろスタートラインになった。
ライブの前に、この曲やってくれるかなーとかこんな姿が見えるかなーとか考えたりはしたけど、新曲は脳の片隅でも考えてなかった。
考えてみてほしい。
バンドもののアニメ作品において、「新曲を考える回」は外せない王道の題材だ。そしてそんな展開で一番盛り上がるのは、「新曲をお披露目する瞬間」だ。
まさか、その初披露に次元を超えて立ち会うことができるなんて。
ましゅましゅは、今この瞬間に生きているんだ。
新曲はいつもよりしっとりめでとても良かったけど、新曲が聞けたというあまりの出来事に心が追い付かずに正直あまり覚えてない。
配信待ってます。
そして最後の曲、「キミのラプソディ―」で盛り上がりは最高潮を迎えた。
あっという間の30分だった。
「ルナティック最高!!」
隣の人が叫んだ。
「めっちゃ良かったよね」「すごかった」
後ろから話し声が聞こえる。
ありがとう、ましゅまいれっしゅ。
ありがとう、サンリオ。
それから1週間は「ステージ良かったな」と頭の中で振り返ることとなった。それぐらい良かったです。
ましゅましゅだけじゃないサンリオVfes
正直ここまで読んでお腹いっぱいだと思うが、もう少しお付き合いください。
Vfesをアニメから飛び出した異色の枠として切り開いてきたましゅまいれっしゅ。今年は、今までとの大きな違いがあった。
ましゅましゅに続くアーティストがようやく出てきたのだ。
一つは、「SHOW BY ROCK!! ましゅまいれっしゅ!!」に出てきたもう一つのバンド、「DOKONJOFINGER(通称 どこ指)」だ。
アニメでどこ指の四人を見ていて気になったことがあった。バンドの一人、ハッチン(紫の服の人)の演奏の癖がめちゃくちゃ強い。ずっとぴょんぴょん跳ねながら演奏していて、一度は勢い余って転びかけることもあったぐらいだ。
そんな彼が、サンリオVfesではちゃんと再現できるのだろうか。
そんな不安は一目見て杞憂だとわかった。むしろアニメの倍の存在感を放っていた。見ながら「最高!」と思わず声に出してしまったぐらい。
もっと四人の演奏見たかったな。
さて、作品から飛び出してきたキャラは今年、もう一人いた。「電音部」の犬吠埼紫杏だ。
電音部というのは、音楽を中心に広げている作品だ。ダンスミュージックを中心に展開しているため、今回はDJという形での参加となった。
電音部の音楽はよく作業用BGMとして使っていたけど、まさかバーチャルで出会えるとは。
また来年も
ましゅまいれっしゅが参加するのか心配だった今年のサンリオVfesは、いい意味で予想を裏切られるものとなった。最高です。
パレードに新曲と盛りだくさんで、食べ放題の終盤のような満足感を得ることができた。まさか、アニメ放送から2年たっている作品でここまでしてくれるなんて、感謝のうずしおだ。
また来年も、きっとましゅましゅは来てくれるだろう。
今度はどんな姿を見せてくれるんだろう。今から楽しみだ。