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【書評】田坂広志「死は存在しない」(87/365)

田坂広志氏の著書は割と読んでいます。例えば「ヘーゲルの弁証法」なんかは結構読み込みました。

原子力の研究者という経歴を持つ著者は、論理的、かつ哲学的論調で、静かに語りかけてくる文体が持ち味です。いわゆるスピリチュアル系とは共通点もありつつ、一線を画した内容となっています。

そんな田坂氏の最新刊がこちらです。

非常に興味深い内容で、一気に読んでしまいました。やや冗長な記述もありますが、過度に難しくならずに読みやすかったです。

「量子力学」というキーワードは、最近のスピリチュアル系でもよく見ます。これは、「量子力学」が現実世界の物理現象を超越していて、量子もつれや不確定性原理、多次元など、スピ系の人が大好物の概念が含まれるからでしょう。

そういう動きは以前からあったのですが、最近「量子コンピュータ」が注目されるようになり、再燃しているように思えます。

そんな時代に出版されたのが本書です。

しっかり、「仮説である」と断ったうえで、誰しもが興味のある死後の世界について、また誰しもが経験のある、「偶然では片づけられない」数々の体験を、「ゼロ・ポイント・フィールド仮説」で解き明かしてみせます。

もちろん「仮説」ですから、現代科学では実証不可能なのですが、理系の私でもそれなりに納得できる説明だったと思います。

そして、過去の宗教や、心理学、神秘学で語られていることとの共通点が多いことも何かを意味しているように感じます。八百万の神、アカシックレコード、、、

簡単に言うと「ゼロ・ポイント・フィールド」は宇宙開闢以来の森羅万象を記憶している場であり波動です。個々の人間の意志、魂もその場と密接に関わっているという考え方です。

生命とは何か、死とは何か、これは解き明かされることのない永遠の問いかもしれません。しかし、「仮説を」受け入れて、明快な生き方を選ぶのもありかなと思わせてくれたのが本書です。

本来、思想も哲学も宗教も、人の心、生き方を解き放つものであるべきと考えます。しかし思考や行動を制限することもあるというのが人類史でしょう。本書の中で、「現代においては科学が最大の宗教である」というくだりがありました。

やみくもに「科学信仰」に陥ることは危険が伴います。現代科学の限界も意識しつつ、もっと直観的な生き方を選んでいこうと思います。

今日も最後までお読みいただきありがとうございました。


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