『FF14 具なし焼きそば事件』で考える "ブランディング論"
ヒカセン(FF14プレイヤー)に衝撃を与えた『FF14 具なし焼きそば事件』。
コレをヒカセンであり、情報を客観的に分析するのが仕事のマーケターでもある私が、ブランディングを絡めて論理的に解説します。
事件の原因は何だったのか?
責任の所在はどこにあるのか?
どうするのが最善手だったのか?
この件でスクエニに疑念を抱いてる方にこそ、ぜひ見ていただきたいです。
【はじめに】
詳細をご存じない方のために、まずは簡単に今回の事件概要を説明。
「全部知ってるわ!」という方は、次の項目までスキップして下さい。
1.事件概要
2023年8月26日、FINAL FANTASY XIV 新生10周年を記念して大阪の花園ラグビー場にて行われた『ファイナルファンタジーXIV 10th ANNIVERSARY FIREWORKS & MUSIC』。
FF14の音楽に乗せて、ドローン・ショーや花火でFF14の世界を演出するという内容の豪華なイベントでした。
しかし問題はイベント内容ではなく、敷地内に出店されていた食品に有りました。
なんと敷地内で販売されていた屋台の焼きそばが、詐欺まがいのとんでもないボッタくり商品だったという事が判明します。
2.SNS上に次々と上がる声
コレは酷い。
私も実際の画像を見るまでは
「具が無いって言うけど、流石に大げさなだけなのではないか?」
と疑っていました。
しかし画像を見れば分かる通り、具が無い以前にそもそもソバすらスッカスカやんけ!というマジもんのボッタくり商品。
しかも恐ろしい事に、次々と値段が変わっていったとか。
お金をいただいて提供するプロに、決してあってはいけない事態です。
更に恐ろしい事に、焼きそば以外の屋台でも似たような事態になっていた模様。
文章から察するに、ネギを入れない牛タン串をネギ塩牛タン串として販売。
つまり原価を上げずに実質の値上げを行っていた訳です。
もしコレが常設のキチンとした店舗だったら、完全に詐欺で訴えられる案件ですね。
3.対応で更に炎上
SNS上での炎上を受けて、本イベントの実行委員(つまり運営会社)が謝罪文と対応を発表。
無断複写・転載禁止なので、申し訳ありませんがリンクを踏んで内容をご確認ください。
謝罪文は要約すると
「18時頃から具の⼊ったやきそばを販売していた店舗が、適切な料⾦設定をしないまま、具のないやきそばを売っていたのが確認された」
という内容でしたが、実際は以下の通り↓
事実確認すらまともに出来ていない上、さらに
「販売スタッフがパニックで具のない焼そばを値上げして販売を続けた」
という言い訳にもならんレベルの謝罪をした事により、炎上が加速。
ネットニュースでも取り上げられるほどの騒動になった訳です。
【原因と責任の所在を考察】
さて、ここからが本番です。
今回の騒動の原因や責任の所在について検証・考察します。
責任の所在をハッキリさせるには原因の末端から洗い出すのが一番なので、まずはそこを深掘りして考察します。
1.まず一番悪いのは誰か?
まず大前提として、一番悪いのは "屋台の" 実行者と責任者です。
ココをハッキリさせておかないと、着地点がブレます。
ご存じの方もいらっしゃると思いますが、イベントの屋台などはボッタくりや詐欺まがいの行為なども平気で行う店が多いです。
何故なら、問題が表面化する頃には次のイベントへとんずらしてますので、信用など積み上げても無意味だからです(ココが常設店舗と違う)。
まともな会社なら、不祥事が起きた場合は必ず監督責任のある人間が謝罪します。
この場合は屋台の責任者は "食品衛生責任者の資格所有者" ですので、「パニックになった販売スタッフうんぬん」は言い訳以外の何物でもありません。
※ちなみに "食品衛生責任者の資格" は講習受ければ誰でも取れる代物です
もちろん真面目にやっている人もいますが、チンピラ紛いの人間も多く、彼らに舐められるとどこまでも食い物にされます。
そのため、地元の祭りなどでは顔役が彼らの手綱を握る必要がある訳です。
2.原因は運営会社のオーバーキャパシティ
実行犯(敢えてこう書きます)の監督責任は "食品衛生責任者の資格所有者" ですが、さらにそれの監督責任があるのは運営元である『MIRAINO-HANABI』プロジェクトであり、大元の『ブレイクスルー株式会社』です。
※同名の会社が複数ありますが運営元はコチラなので注意!
コチラの『ABOUT』で会社概要を確認出来ますが、設立が "2022年11月14日" という本記事執筆時点で設立一年も経っていないド新人の会社。
しかも初の仕事が今回の『ファイナルファンタジーXIV 10th ANNIVERSARY FIREWORKS & MUSIC』だった模様です。(他に実績らしい実績が無い)
まずちょっと想像していただきたいのですが、海千山千のテキヤ稼業の方々が、そんなド新人の言う事を素直に聞くと思いますか?
おそらく何を言っても「何も知らん新顔のクセに」と鼻で笑われていたのではないでしょうか。
そしてイベント運営は機材の調達や作業人員確保など、とにかく人脈がモノを言う業務ですが、果たしてあれだけ大きなイベントをこなす伝手が有ったかどうか怪しいものです。
実際、この会社はこの後にONE PEACEのイベントで失敗しています。
普通は少しずつ実力と人脈を築きつつイベント規模を大きくしていくものですが、この会社は野心が強いのか営業がアレなのかちょっと分かりませんが自分達の実力に見合わない仕事をしてしまうようです。
『ブレイクスルー株式会社』には今回の件の監督責任がありますし、申し訳ありませんが、そもそも今回の事件は起こるべくして起こったと言わざるを得ません。
【スクウェア・エニックスの責任】
で、本題はココからです。
今回のイベント、果たしてスクウェア・エニックス株式会社にも責任は有るのか?
肝心なのは、事前に運営会社と結んだ契約の種類です。
『業務委託契約』だったのか、それとも『ライセンス貸与契約』だったのか?
理解せず批判している方もいますが、コレで話が全く変わってきます。
1.『業務委託契約』と『ライセンス貸与契約』の違い
まずは業務委託契約だった場合。
コレだとまず "スクエニが" 運営会社にお金を出してイベント運営の依頼し、運営会社が屋台の手配をします。
この場合は主体がスクエニなので、スクエニに監督責任が発生します。
次にライセンス貸与契約だった場合。
コレだと "運営会社が" スクエニに「こういうイベントやるからライセンス貸して」とライセンス料を払い、自分達で屋台の手配をします。
この場合は主体が運営会社なので、スクエニに監督責任はありません。
多少契約内容によって細部の違いはあるかもしれませんが、基本はコレでほぼ間違いありません。
2.どちらの契約体系だったのか考察
以上を踏まえた上で、どちらだったのかを考察してみます。
通常、契約内容は極秘情報で表に出てこないので、あくまでも推察です。
まず、本イベントのサイトを見てみましょう。
FF14のロゴやモーグリが使用されているのでついスクエニのサイトだと勘違いしてしまいそうですが、urlのドメインをよくご覧ください。
『https://miraino-hanabi.com/ffxiv/#FF14』
miraino-hanabi.comと表示されていますね?
そう、このサイトはあくまでも『ブレイクスルー株式会社』のサイトなのです。
またサイトから本イベントのチケットを購入しようとすると、チケットぴあに誘導されます。
ファンフェスのチケット抽選に参加した事がある方ならばご存じだと思いますが、スクエニは少なくともFF14に関しては自前の決済システムを持っており、わざわざ手数料を払ってまでチケットぴあに委託する可能性は限りなく低いです。
そして何より吉田P/Dご自身が、TGS2023のPLLにおいて本イベントを「権利をお貸しして」と仰っています。
(1時間38分30秒の辺りから言及されています)
前述の通り契約内容は普通口外しないものですが、敢えて大勢が見ている場所で言及。招待席から全く花火が見えなかった事も含めて、他にも色々と不手際が有ったのでしょう。
吉田P/Dの怒りと失望が伝わってくるようです……。
という訳で、本イベントは『ライセンス貸与契約』だったのはほぼ間違いないと思われます。
つまり少なくとも社会通念上は、スクエニに責任は無かったと断言する事が出来ます。
"仮に鬼滅の刃の食玩で不具合が有ったとして、ライセンスを持つ原作者の吾峠呼世晴に責任があるか?" と考えれば分かりやすいですかね。
【ブランディング視点で考える最善手】
さて、ココからは私の主観的な意見になります。
小さな会社のいちマーケターとしての意見ですので、世界的企業であるスクウェア・エニックスには全く合わない可能性は高いですが、それでもここまで書いた以上、責任を持って意見を言わせていただきます。
1.そもそもの間違い
基本的には、スクエニに責任はありません。
しかし敢えて意地悪な事を言うならば、そもそもこの運営会社と組んだ事が間違いであったと私は考えます。
スクエニの収益の屋台骨であるFF14。
しかも新生10周年という、絶対に失敗が許されない時期です。
そんな時期に、ロクに実績もない新米企業にFF14の名を託すのは企業としてリスクの許容限界を超えています。
……とは言え、それはあくまでも "通常取りうる最善手" であって、ブランディングの観点からいうと不正解です。
何故なら "他がやらない事を敢えてやる" がブランディングであり、競合との差別化になるからです。
2.『FF14』というブランドの根底を考える
吉田P/Dを筆頭とする第3開発室の方々が心から
「お客様に楽しんでいただくためなら何でもする」
という信念を持っているのは、間違いありません。
私も様々なゲームを渡り歩いてきましたが、コレほどお客様に尽くそうとするチームはちょっと他に思い当たりません。
異論はあるかもしれませんが、コレこそFF14のブランドだと私は考えます。
ブランドとは「そのメーカーのどこに信頼を寄せるか」ですので。
つまり新しい境地でお客様に楽しんでいただくという新境地開拓をしつつ、ブランドイメージを守るという守りの体制も作らなければいけません。
矛盾していますが、両方やらなければならないというのがエンタメマーケティングの辛い所ですね。
3.安定と攻めの姿勢を両立させるには
花火の配信を実際に観た感想としては、『MIRAINO-HANABI』には花火演出のスキルが確かにあります。
コレを切り捨てるのは、あまりにも惜しい。
つまり花火演出を押さえつつ、イベント運営をサポートすれば良いのです。
もし私が第3開発室のマーケターだったら、運営会社にこう提案します。
「花火は貴社にお任せ致します。しかし弊社にもイベント運営でお世話になっている会社がありますので、そちらと協業という形で運営していただけませんか。確実に実績を積みつつ、そちらもイベント運営のノウハウを蓄積できるので悪い話ではないと思いますが……」
相手にメリットを提示しつつ、コチラのメリットも最大化する。
コレしかありません。
実際FF14はファンフェスやオケコンを成功させている運営会社とお付き合いがあるはずですので、不可能ではないはず。
結局今回の花火イベントですが、次回の関東公演は大型フェスの実績のある企業に運営協力を依頼して管理強化をすると、ブレイクスルー株式会社は発表。
この運営会社はオーバーキャパシティだったと、自ら認めた訳ですね……。
【まとめ】
FF14はスタッフ採用条件でも "職歴は問わない" としている事で有名です。
もしかしたら今回のイベント提案を受けた時も
「実績が無くてもまずはやらせてみよう!最初は皆、新米なんだ!」
という熱い想いがあったのかもしれません。
しかしそれを受け取るお客様がいらっしゃる以上、ブランドを維持する為にも攻めの姿勢を取りつつ、最低限のセーフティネットは確保しなければならない。
今回はその大切さを改めて痛感させられました。
願わくば今回の件を糧にしつつ、FF14が更なる飛躍を遂げる事を心より願っております。
熱意が余って長い文章となりましたが、最後までお読みくださりありがとうございました。
次はエオルゼアでお会い致しましょう!
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