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美しすぎるが故に消えてしまったもの

去る1月14日のことである。
私はとあるニュースに衝撃を受けた。

それは、北海道美瑛町にある白樺並木が伐採されたというものだった。

この白樺並木は、《セブンスターの木》の近くにあることでも有名だった。
きっとこのニュースに衝撃を受けたのは私だけではないはずだ。
思わず呆然としてしまい、そして詳細を調べることにした。

美瑛町は北海道上川郡にある町。
北海道のほぼ中心にあるその町は、丘のまちとも呼ばれ、《ケンとメリーの木》《親子の木》《新栄の丘》《パッチワークの丘》など、丘のまちならではの景色が広がっている。

《青い池》や《白ひげの滝》なども有名だ。

その美しい景観を求めて、休日や観光シーズンは多くの観光客が訪れることで知られている美瑛町。

私も昔、今よりもオーバーツーリズムが騒がれていない頃、ドライブ中に美瑛町を通ったことがあるが、それはとても美しい景色であったことを覚えている。

美瑛町だけではないが、日本各地でもここ数年問題となっているオーバーツーリズム。

美瑛町は農業が主産業であり、町の多くは田畑で占められている。
そんな農家の方が細心の注意を払って管理している私有地に《映える写真》を求めて無断で立ち入ってしまうことが問題となっていることは数年前よりニュースでも取り上げられていた。
立ち入り禁止の看板が建てられ、ロープが張られるようになっても、それでも尚この問題には頭を悩まされているらしい。

「少しくらい良いだろう」
「ちょっとだけ」
「どうせ自分だけじゃないし」

軽い気持ちが、大きなリスクを招く。

「靴底に病原菌?自分は大丈夫でしょ」
「そんなこと知らなかったから仕方ないよね」

地元の方にとっては重大な問題でも、訪れる者にとっては些細なことで気にも留めていないから起こることなのだろう。

とても残念なことだ。

美瑛町の美しい景色の数々は、農家の方が農地を開拓して、農業を続けているからこそ目にできるものであるのに。
農家の方の生活がかかっており、その努力を踏み躙るような行動は避けるべきである。

兎にも角にも、今回美瑛町の白樺並木が伐採された理由は以下に当たるらしい。

・白樺並木の日陰になることによる農作物の減収
・落ち葉や訪問者が捨てるゴミを片付ける労力に苦慮
・並木周辺で写真撮影をする観光客が密集し、道路通行に著しい弊害が出ている

令和6年度第3回景観審議会議事録より抜粋

以上から、オーバーツーリズムひいては観光客のマナー違反が今回の決定に影響していると認めざるを得ないだろう。

実は美瑛町から失われた景色はこの白樺並木だけではない。
《哲学の木》も《マイルドセブンの丘のポプラ並木》も同じような理由で伐採されたと噂に聞く。

美しい景色が、その美しさ故に起こる問題で失われていくことのなんと悲しいことか。

地元の方の生活が優先されるべきだと思うので、私がこの美瑛町の決定に異を唱えることなどできない。
この町の住民の方にとって日常の景色が変わってしまっているのだ、苦渋の決断だったのではないかと思われる。

ただ、私も悲しんでばかりはいられない。
美瑛町に限らず、観光に訪れる人間のマナー不足により失われる景観がないように一層気を付けていかねばならない。

美しい景色を自分の目で見たい気持ち、撮りたい気持ちは、私自身カメラを持ち歩いて撮影することもあるのでよくわかる。

ただし、撮影する前に一度考えたい。
一呼吸落ち着いて振り返りたい。

それは他者に迷惑をかけていないか。
訪れる者としてのマナーは守られているか。

自分の行動が、皆が心を痛める結果に繋がらないようにしていきたい。

このような悲しいニュースが今後も続かないことを心より祈っている。

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