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あわいにインタビュー② 舞台監督 小林勇陽さん

誰ひとりとして、全てを見渡すことのできないダンス公演『あわいにダンス』。観客は、ここでどんな時間を過ごすのでしょうか。一人一人の見聞記はまったく異なるものになるでしょう。そんな捉えどころのない『あわいにダンス』を、メンバーの言動から紐解くインタビュー・シリーズ。

第2回目は舞台監督の小林勇陽さんにお話を伺いました。今回、劇場では一体なにが起こるのか。また、同世代の小林さんから見た振付家・小松菜々子とは?
まもなく開幕する『あわいにダンス』、少しずつその内容に迫ります。

────今回、作品に「ツアー」が組み込まれていて、お客さんと一緒に街を歩いてから劇場に入るということですが、劇場では何が起こるのでしょうか?

小林:ネタバレにならない範囲で言うと、劇場では僕たちスタッフにも、やることがあります。小松さんは、新長田の日常のようなものをツアーで見せようとしてるんだと思いますが、劇場では「ダンスボックスの日常」を見せようとしてるのかなと。つまり、僕たちが普段どういうことをしてるのかがポイントになってくるんだと思います。

────なるほど。劇場では、ダンスが見れるのでしょうか?

小林:はい、ダンスのパフォーマンスはあります。それと並行して、いろんなことが起こってくるんじゃないかなと思います。

────普段、劇場に来る機会があまりないような方がお客様として想定されているんでしょうか。

小林:どうなんでしょうね。舞台をよく見に来てる方でもあまり見たことのないようなことが起こるかもしれません。

────小林さんと菜々子さんの、そもそもの繋がりを教えていただけますか。

小林:最初に出会ったのは、城崎国際アートセンター(KIAC)です。青木尚哉さんの滞在制作(JCDN「若手振付家とダンサーのためのプログラム」青木尚哉、余越保子)で、参加者の中に菜々子さんがいて。僕はKIACのオープニングのときから劇場管理として働いていたんですが、そのときは青木尚哉さんとダンサーたちだけで、テクニカルスタッフがいるわけではなかったので、僕も一緒に照明をやったりして、作品を作るのに少し関わらせてもらいました。終わったあとに、菜々子さんと実は同い年だったことが発覚して。若いアーティストやダンサー、俳優の方にあまり出会う機会がなかったなかで、青木尚哉さんと一緒に来てくれた方たちはみんな同世代ぐらいだったんです。それで珍しくて、仲良くなりましたね。同い年ぐらいで舞台のことをこんなふうにやっている人たちが沢山いるんだって知れたのがそのときでした。

▼ 公演へ寄せて青木尚哉さんからいただいたコメントを掲載中!

────それまでもコンテンポラリーダンスや演劇は、よく見られていたんでしょうか?

小林:実は見たことがなかったんですよ。コンテンポラリーダンスだけじゃなくて、ヒップホップとかも見たことなかったんです。僕自身はマーチングバンドをやっていただけだったので。

────では、KIACで初めてそういったものに触れたんですね。

小林:そうなんです。劇場管理として働いてはいたんですけど、最初は音響のことも照明のこともほぼわからない状態でした。いろんなアーティストが滞在制作をするなかで、今回の作品のスタッフでもある照明の三浦あさ子さんや音響の西川文章さんにも出会って、KIACに来る方々に逆に教えてもらっていました(笑)。

▼ 照明の三浦あさ子さん、音響の西川文章さんの紹介記事はこちら!

────同じ世代として、菜々子さんやその活動をどのように見ていますか?

小林:僕には全然ない視点を持っているなと思っています。僕が独立して舞台監督をやるようになってから2年くらい、ダンスボックスには何度も通って新長田の街も歩いてきましたが、街並みをそんなに気にしたことはなくて。菜々子さんはそこに着目するんだなと思いましたね。それに、自分だったら怖くて入っていく勇気がないような場所でも、菜々子さんはいつも平気な顔をして歩いていっちゃうところは、すごいなと思います。

────たしかに、菜々子さんはいろんな人とひょいひょい仲良くなっていくイメージがありますよね。

小林:菜々子さんに連れて行ってもらった新長田にある居酒屋で、店主さんと馴染みのように仲良くしているので、いつからここに来ているの?と聞いたら「先週だよ」と。そういう人ですよね(笑)

────今回のリハーサルのなかで、小林さんも街歩きに参加されましたか?

小林:はい、一度歩きました。新長田にはすごく狭い路地もあるじゃないですか。これまで僕が住んだ場所にはあまりなくて、実家もそうなんですが、田舎だから道が広かったんです。新長田の路地にはやっぱりいろんなものが詰め込まれている感じがして、とても面白いです。菜々子さんが言ってたのは、「新長田の街を歩いて雰囲気を感じて、そのまま非現実的な劇場という場所にやって来たときに、作品がどう見えてくるのか気になっている」、と。

────街の日常を見ていくけれども、ツアーって実は日常ではないというのもまた、不思議な感じがしますね。

────小林さんは、いろいろとイレギュラーな展開のある今回の作品で、もちろん舞台監督ではあるんですが、どんな役割で動こうと考えていますか?

小林:個人的には、今回はかなり要素が盛りだくさんなので、舞台のなかのことだけを考えているとあまり良くないなと思っています。ツアーからの流れで作品を見たときに面白いと思ってもらえるように、全体を見渡せるポジションで動いていたいなと思います。ツアーコンダクターの方たちとのやり取りも出てくるはずなので、その時間の使い方をちゃんとしないとなと思っています。
あとはもちろん、お客さんに危険がないように、楽しめるようにというのが一番ですね。

────ありがとうございました。作品への想像力を掻き立てられるようなお話を聞けたと思います。

次回は、今回の公演フライヤーのイラストを描かれた美術家の根本祐杜さんにお話をお伺いします。お楽しみに!

小林 勇陽
兵庫県豊岡市出身。NPO法人プラッツに7年間在籍し、豊岡市民プラザ、城崎国際アートセンターのテクニカルスタッフを経て独立。京都府へ移住、フリーランスの舞台監督として演劇・ダンス・インスタレーションなどジャンルを問わず活動中。


公演情報

DANCE BOXアソシエイト・アーティスト 小松菜々子 単独公演
『あわいにダンス』

日時:2023年2月4日(土)・5日(日)
集合場所:アトリエKOMA(〒653-0043 兵庫県神戸市長田区駒ケ林町2丁目2−3)
詳細は下記の記事をご覧ください。


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