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双極性障害を受け入れ働くための3本柱
ためになった書籍
最近、双極性障害に関する本で、非常に実践的な本が出版されました。
専用メディアやSNS、Youtube、Voicyなどのネット上に限らず、
多方面で活動されている当事者の松浦秀俊さんが執筆されたものです。
この本は病気にありがちな専門書のような堅苦しい本ではなく、
障害と付き合うための数多くのエッセンスを、
柔らかい雰囲気で書かれています。
私は双極性障害を持ちつつ、現職で働き始めて7年が過ぎました。
もちろん、健康な方のように働くには難しい面があるのですが、
その時工夫したことと同じことが、松浦さんの本には書かれていて、
「ほんとにそうだよなぁ」と思うのです。
このnoteでは、松浦さんの本で興味のひかれた部分を紹介しつつ、
当事者として「双極性障害で働き続ける」ことについて、
書ければと思います。
働き続けることの難しさ
双極性障害を持ちながら働き続けることは、
当事者の思った以上にハードルが高いことです。
躁状態や調子が良いときは自信に満ちて、
「働ける!」と思ったり、
仕事で能力を存分に活かせると思ったり。
しかし、体調の波がうつに傾けば、
思っていた理想は打ち砕かれ、
躁状態のときの失敗と失態に打ちのめされます。
この波のサイクルと振れ幅の大きさが、
双極性障害の苦しみの元であり、
仕事はおろか、日常生活も安心して送ることができません。
解決法を構築する必要性
双極性障害の病気という困難に対して、
当事者が最初に行いがちなアプローチは、
「躁状態で人生の道を駆け上がり、
あらゆる困難を気合や能力の発揮で一発逆転を狙う」ことです。
これは先ほど書いたように、全くうまくいきません。
双極性障害には「再現性」があるアプローチが必要です。
松浦さんの書籍は3つの柱を背景に書かれています。
投薬治療・精神療法を受けること
社会リズムを守ること
自身の病気・特性・性格の理解を深め、具体的な行動・対処法を行うこと
(トリセツの作成)
これらは「双極性障害で生きるという問題」に対して、
「再現性」を与えてくれます。
それぞれについて、私の考えを混ぜつつ、説明していきます。
投薬治療・精神療法
双極性障害は気合では治りません。
活動が活発になり、能力を発揮し、社交的になれる躁状態を、
薬なしに自分だけのコントロールで乗りこなそうとする…
つらいうつ状態を、考え方だけで状況を変えようとすることは
失敗に終わるでしょう。
私は双極性障害の薬は「ギブス」だと理解しています。
身に着ければ動きにくい。
しかし、骨折した骨が再びくっつくためには必要なものですし、
必要以上に逸脱するようなことはなくなります。
躁鬱の波を抑えるには投薬治療が最初のアプローチとして必須です。
病気や障害を受け入れるまで、
薬により「気分も上がらなく抑揚のないような状態で生活する」ことに、
「生きがい」を見いだせないと、少なくない当事者が感じます。
今だからこそ思うのですが、
「生きがい」は気分の上がり下がりではなく、
別の部分に見出さなければならないと、
人生の課題として突きつけられているのではないでしょうか。
その課題に対処して得るものは非常に大きいです。
精神療法は、
過剰に不幸にならない「考え方の枠組み」を訓練させてくれます。
気分に振り回されてできなかった物事や自分の客観視や、
後述する「トリセツ」を作成する上での強力な考え方を提供してくれます。
社会リズムを守ること
社会リズムとは、
基本的には睡眠時間などの日常生活のリズムを一定に保つこと、
日常生活での刺激が過剰にならないようにすることです。
投薬治療により落ち着いた気分の波をさらに安定させます。
薬を減らすといった場合は、
社会リズムを守っていることが大前提になります。
「薬も必要で、その上規則正しい生活もしなきゃで自分は難儀だ」と
思いたくもなります。
ただ、これは年齢を重ねると、解消される悩みではあります。
40代・50代になると、不摂生が直接的に体に現れます。
双極性障害でなくても薬を日常的に飲んでいる人は多くなりますし、
仕事や何か大事なプロジェクトを成そうとしている人は、
規則正しい健康的な生活を目指します。
完璧超人でハードワークでエネルギッシュな人は確かにいますが、
たいていの人は、そのままの生き方をすると大病してしまいます。
私は自分の健康寿命ということを考え始めて、
社会リズムを整えることを受け入れ始めました。
「私はできるだけ健康に生きたい。
双極性障害の病気はあるが、持病の一つは誰でも持っているものだ。
不摂生をせず、長生きし、そして死ぬ直前まで体を動かせるようにしたい」
ということを人生の目標の一つとしました。
人生の喜びを感じるような「やりたいこと」は
なかなか見つからないかもしれない。
けれど、食べたいものはいくつかあるし、いきたいところもある。
このnoteのテーマである、
「双極性障害ではたらきつづける」ことを実現するにも、
社会リズムが大前提となります。
トリセツの作成
松浦さんは、
「自身の病気・特性・性格の理解を深め、具体的な行動・対処法を行う」という3本目の柱を「トリセツ(取扱説明書)」と呼んでいて、
「なるほどなぁ」と私はうなずいていました。
非常に簡単な例ですが、決めておかなければならない大事な対処法に、
「気分が上向いてきたらどうするか」
「躁状態になってしまったらどうするか」
というものがあります。
もしかしたらそのまま躁状態になり、問題を起こしてしまうかもしれない。
その前に具体的な対処を、決めておくということです。
ここは松浦さんではなく私の考えになるのですが、
トリセツには3つの分類があると思います。
病気の理解と対処法
自分の理解と対処法
周囲への理解・協力のお願い
病気の理解と対処法
1番目は文字の通りで、
先ほどの「躁状態になったらどうするか」ことも含まれます。
「自分の病状が悪化した状態であること」という「病識」は
非常に大事です。
これがあることで、自分を客観的に眺めることができますし、
問題に対して落ち着いた対処をすることができます。
自分の理解と対処法
2番目は特にストレスへの対処と自分の幸福を考えるときに役立ちます。
例えば、気分が上がってアップテンポの曲をずっと聴きたくなったらどうでしょうか。
私の場合、この行動自体が躁状態の兆しと考え、
全体の行動量を減らして、できるだけ少ない数の物事に集中してゆっくりやるようにしています。
嫌なことが起こったらどうでしょうか。
これは精神療法を組み合わせるのが非常に有効です。
例えば、認知行動療法によって、
自分の思考を整理し、起こる感情を減らし、そして建設的に対処する。
能力を発揮することも幸福ですが、困難に対しての対処を行っていくというのは、とても大事なことだと思います。
周囲への理解・協力のお願い
3番目は「仕事を継続して勤めること」に特に必要な要素です。
「自分だけでなんとかしようとしない」ことは、とても大事なことです。
周囲の理解、あるいは協力を仰ぐことは、
無能や自分が弱いことではありません。
「大人の強さは、むしろ人に頼ることである」と、
どこかで聞いた言葉が私の心に残っています。
責任、トラブル対応、体調不良で休みの時の業務、
調べてもわからないことなどは、
一人で抱えてしまうと、とても負荷の大きいものとなってしまいます。
自分の病気をクローズ(秘密)にして働いている方にとっては、
なかなか周囲の理解を得るといことが難しいかもしれません。
しかし、病気ではなく、
自分の行っている業務について相談や理解をしてもらって、
万一はサポートしてもらうということだけでも、
ずっと仕事がやりやすくなります。
長く仕事を続けるために
以上、
投薬治療・精神療法を受けること
社会リズムを守ること
自身の病気・特性・性格の理解を深め、具体的な行動・対処法を行うこと
(トリセツの作成)
の3本柱について紹介しました。
これらは、能力頼み、気合、流れといった「再現性」のないものではなく、
「仕組み化」されたものです。
仕組みなので、「こうなったらこうする」という行動が明確ですし、
仕組みが崩れてきたら、そこは日常の課題として改善するということが
明確です。
双極性障害の症状がひどいと、「積み上げ」ができません。
周囲の信頼を失うという損失もありますし、
躁鬱を繰り返すという繰り返しもあるでしょう。
それらに振り回されないために、
私は、「ポジティブな再現性があることを繰り返し行う」ということが、
長く仕事をするうえで大事なのではないかなと、最近思っています。
3本柱は再現性を与えてくれます。
再現性は、ある意味一貫していて、とても信頼できるものです。
そのアプローチをとれるということは、
自分の中に信頼感を育ててくれることにつながり、
非常に生きやすくなってくるのではないかと思います。
長い記事になりましたので、書籍を再掲しておきます。
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