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名作コラム・特別編 フランツ・カフカ10選・・・・「変身」は入らないよ!ヾ(`Д´)ノシ

 今回の名作コラムはカフカについて。以前も触れましたが好き嫌いの大きい部類に入る作家さんですが、「著名&本屋に置いてあるのが『変身』『審判』『城』」「不条理で暗いイメージ」が付きすぎて、間違いではないにせよカフカ作品の多様性と幅が狭まってしまいます。
 そこで、個人選ではありますがカフカの味わいが良くわかる、掌篇から中長篇までの10作品を紹介したいと思います!
 掌篇などは中身を解説するとそのままネタバレになるので内容には軽く触れる程度で、ではいってみましょー(・ω・)ノシ

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1. 『掟の門』Vor dem Gezetz. 
長篇『審判』の挿話、カフカ短篇集に収録。カフカの様々な作品のベースとなる傑作寓話です。この掌篇自身は曖昧で抽象的ですが、様々な作品と比較して語られる事が多い一篇です。

2. 『夢』Ein Traum. 
これも長篇『審判』の挿話。ポーやビアース、あるいは夢をテーマにした作家とも共通した味わいがある掌篇です。単なる夢幻譚ではなく妙な説得力がある作品かと。

3. 『流刑地にて』In der Srrafkolonie. 
カフカの最高傑作の一つとなる中篇。流刑地を旅行で尋ねた私は、一人の将校から奇妙な構造の機械の説明を受け、それを使った完璧な処刑を見せるので、この処刑制度を廃止しようとしている現在の長官を説得してくれ、と頼まれるのだが……突拍子もない物語から始まり、カフカの手際で狂気と正気、虚構と現実の境界が崩されて行く作品ですね。

4. 『家長の気がかり』Die Sorge Des Hausveters. 
幻想掌編。奇妙な生物オドラデクに関する分析と心配を語った一篇。カフカ作品には正体不明の存在や、説明の無い状況が度々登場します。その代表例ともなる作品で、何故か突拍子もない物体を提示されても、そこに納得や共感を感じてしまう象徴主義的な要素を含んだ作品ですね。

5. 『町の紋章』Das stadtwappen.
幻想短篇。バベルの塔を建設するために集まって来た人々が、その準備をする為にまず町を建設し、そこから始まる物語。理性と合理性を突き詰めた先は狂気となる、今までと逆ベクトルの手法を使った作品です。

6. 『万里の長城』Beim Bau der Chainesischen Mauer.
幻想中篇。万里の長城におけるその建設システムと、中国の帝政システムに関するカフカの空想中篇です。挿話の『皇帝の使者』は独自に発表され短篇集に収録されています。作中の話題が飛び飛びなのは否めませんが、物事の達成に関するテーマもカフカの重要な物の一つだと感じます。

7. 『狩人グラフス』Der Jäger Gracchus.
幻想中篇。リーヴァの町を訪れた死人・狩人グラフスと市長の会話劇。これまた奇妙さと説明の無さの極北。

8. 『夜に』Nachts.
掌篇。1ページにも満たない二人称の寓意。ダダイズムやシュールレアリズムのような味わいの作品、かなりの強度を持った作品ですね。

9. 『城』Das Schloss. 
幻想長篇。測量士の主人公ヨーゼフKが赴任した城の麓にある村。Kは赴任先の城に辿り着こうとするが……とカフカ没後に発表された未完の大長篇。未完となってはいますが、紆余曲折により城本体に辿り着かずに終わる物語はボルヘスやベケットに大きな影響を与えました。数百ページを費やして”何も起こらない物語”は、ベケット『ゴドーを待ちながら』とも対比される作品ですね。

10.『断食芸人』Ein Hungerkünstler. 
幻想中篇。カフカの最後期の作品で亡くなる前に発表された最後の作品でもあります。断食を見世物にした断食芸人はヨーロッパに実在したとも言われますが、カフカのそれは寓意と象徴に満ちた独特の存在になってますね。アンソロジーの締めには相応しい一篇だと思います。

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 以上10篇、青空文庫で読める作品はリンクを(日本語訳の表題はまちまちなのでそこはご勘弁)、その他の作品は岩波、白水社、ちくま文庫、集英社などのカフカ傑作~短篇集などに収められていますので、興味のある方は是非ご覧ください。
 以前のコラムでも書きましたが、カフカは短篇のキレ&技巧の面白さは結構な作品数を読まないと見えてこなかったりもしますので、好きな作品と比べる所から始めたり、短篇や掌篇から入るのがおすすめですね。
 で、最新の小説や映画、アニメ、ドラマを見て「あ!これカフカだ!」と気付くと、ちょっと優越感に浸れたりもしますw
 では今宵はこのへんで(・ω・)ノシ

拓也 ◆mOrYeBoQbw

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拓也 ◆mOrYeBoQbw
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