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なぜ、アメリカ発のグローバル企業が、日本の高校生の研修に力を注ぐのか

この度、能登半島地震で被災された皆さまに心よりお見舞い申し上げます。以下のレポートは、震源に近い金沢の学校の研修について紹介しております。皆さまが少しでも早く平穏な日常を取り戻されますことをお祈りいたします。


こんにちは! コーポレートシチズンシップリードの日野紀子です。アバナードでは先般、日本の高校生40人をニューヨークにお招きし、研修を実施しました。

なぜニューヨークで? なぜ、アメリカ発のグローバル企業が日本の高校生の研修を? と思われるかもしれませんが、実は当社にとってはごく自然なことなんです。なぜなら、世界26カ国の全社で「人類に真のインパクトを与える」ことを掲げ、環境や社会に配慮したESG経営に取り組んでおり、中でも「社会」に関しては、コーポレートシチズンシップ」活動として、若い世代の育成や支援に力を入れているからです。
 
私たち日本法人で取り組む「コーポレートシチズンシップ」活動でも、教育に関するさまざまなプログラムに取り組んでいますが、その中の一つが、北米の仲間たちと協力して実施した、石川県立金沢泉丘高等学校のニューヨーク研修(以下、NY研修)です。

この日の研修に参加した40名の満足度を10点満点で評価してもらったところ、9点・10点がほぼ4分の3を占めるという、驚異の満足度を得る結果となりました。

参加者の満足度(10点満点)アンケートより

一体、この研修はどんなものだったのか、生徒たちは何を感じ、私たちに何が残ったのか。それを少しずつ、紐解いていきたいと思います。

アバナードNY研修って、どんな内容?

アバナードが日本オフィスと北米各オフィスの有志スタッフと連携して、泉丘高校の生徒のみなさんの約1週間のアメリカでのスタディ・ツアーを最初に実施したのは2022年のこと。そのときの成果と反省を踏まえ、さらにダイバーシティへの理解を深め、異文化交流を促進し、キャリアビジョンを広げていく内容へと改良したのが、2023年秋に行った研修です。

参加者は泉丘高校の生徒40名と教員3名。8日間の日程で、いくつかの地域の施設訪問や大学見学などが組まれていますが、そのうち丸1日はニューヨークのアバナードオフィスで行うグローバル人材教育研修のプログラムです。ここでは主に、その“アバナード・デー”について、お話ししていきます。

アバナードNYオフィスの「イノベーションハブ」を見学する生徒さんたち

アバナード・デーは、社内で使用する設備や研修プログラムなどのリソースも織り交ぜた、以下のようなラインナップです。

[キャリア]
 ・オフィス見学
 ・ロールモデルのレクチャー
 ・パーソナルブランディング・ワークショップ
[プレゼンテーション]
 ・生徒たちによるSDGsに関連した取り組みの発表
[コミュニケーション]
 ・アイスブレーク/ランチ/ハッピーアワーネットワーキング

こうしたプログラムが朝から夕方まで分刻みで行われました。ほとんどのプログラムは通訳をつけず、英語で実施。レクチャーを聞くのも、社員たちとのコミュニケーションも、プレゼンも、すべて英語です。

インクルージョン&ダイバーシティのパネルディスカッション

開放的で最先端の設備が整う高層オフィスのシティビューなどに圧倒されつつ、最初は緊張ぎみだった生徒のみなさんでしたが、「アバナードの社員さんたちがみんなやさしかった」「一生懸命聞いて、ゆっくり話してくれた」「ずっと笑顔で接してくれた」と、口々に話してくれた通り、次第にリラックスしてきて、「なんとか英語でやり切れた」「カタコトでもコミュニケーションが通じてうれしかった」「もっと話したいと思った」と、徐々に心に火が灯っていった様子でした。
 
スタッフたちが一生懸命コミュニケーションしてくれるのは、それもそのはず。今回この研修に協力してくれた北米オフィスの各拠点で働くスタッフたちは、アメリカだけでなく、フランス、イギリス、オランダ、ブラジル、日本など、さまざまな国の出身者が混ざっており、もともと英語ネイティブではない人も少なくなかったのです。

グローバルキャリアをイメージする

今回の研修で、ロールモデル・スピーカーを務めてくれたのは、シカゴオフィスで働くエンジニア・高良智子さん。高良さんは、自身の経験をもとに、

·     IT業界では理系・文系関係なく働けるし、仕事に出身・性別・年齢・容姿は関係ない
·     称えあう社内の雰囲気 が「もっと良い仕事をしよう」とやる気にさせてくれる
·     苦手だった「上手く英語を話す」ことを諦めたことで前に進めた
·     常識に捉われずに自分のキャリアは自分でデザインする
·     得意なことを組み合わせるとオンリーワンになれる

と、アメリカでの仕事について話してくれました。
そして、「方向転換や寄り道はいつでもOK」「ほんの少しの勇気をもって!」と、これから学び、社会に出ていく若い人たちへのエールを送りました。

アバナードエンジニア 高良智子さん

参加者からは「理系でなくてもITの仕事ができると知って希望が持てた」「将来留学も視野に入れたいと思った」「うまく話そうとせず、勇気を出してコミュニケーションできるようになった」などの喜びの声が上がりました。
 
この研修の手応えを、高良さんはこんなふうに語ってくれました。
 
高良「私は自分のことを慎重で臆病な性格だと思っています。英語のネイティブスピーカーではありませんし、IT業界で働き始めることになったのもちょっとしたきっかけです。それでも、興味のあることを地道に少しずつ続けて進んできたことで、アメリカでたくさんの素晴らしい人々との出会いに恵まれ、現在のびのびと仕事ができています。海外で仕事をすること、IT業界で仕事をすることは誰にでもチャンスがあること、そして自分の身近な世界の外側で思いもよらなかった経験や、出会いが待っていることの素晴らしさが参加者の方に伝わればいいなと思いました。
 
参加者の皆さんはとても真剣に話を聞いてくださり、今までIT業界で仕事ができるなんて考えたこともなかったという学生さんから、私の仕事についての質問をしてくれたことがとてもうれしく、印象に残っています。世間の常識や枠組みに捉われず、自分の力でキャリアを考えることで、参加者の皆さんにこれからも素晴らしい体験をしてほしいなと思います」

あなたは、あなたのままでいい。多様性を深くする

中でも「特に印象に残った」という声が多く聞かれたのは、この研修の運営を、アメリカサイドでまとめあげたカミール・パンザク(カム)さんのレクチャーです。紫色の髪をしたノンバイナリー・トランスパーソンのカムさんは、独学でプログラミングを学び、コネチカット州ハートフォードのオフィスを拠点に活躍しているエンジニアです。

多様性を認め合い、本当に働きやすい環境で働けることがいかに幸せかを説くカムさんは、「You matter」「You're unique「You’re special」「You’re important」という言葉を繰り返し使いました。自分に自信を持てない・まだ自分が何者かを見出せていない若い高校生たちの心に深く刺さったようで、中には泣き出す生徒さんもいたほどです。
 
カムさんは、昨年の第1回目の研修から、このプログラムの実施に協力してくれています。2回目となる今年は、会のコーディネートから講師までをこなし、大活躍でした。そんなカムさんに、なぜこのプログラムにこんなに自分の時間を費やしてくれるのか、聞いてみました。

アバナードエンジニア カミール・パンザク(カム)さん

カム「人と違うこと、自己同一性に悩むことがどんなことなのか、私は今よく理解しています。若い頃は、それは難しいことでしたし、人々の理解が深まった今の時代でもまだ簡単なことではありません。一人の大人として、プロフェッショナルとして、若い人たちに伝えたいのは、ありのままの自分でいることが幸せで心地よく、仕事や人生で成功できるということです。アバナードでは同僚が尊敬と尊厳をもって私を支えてくれていること、そして全従業員のインクルージョンと多様性を重視していることは、私にとって非常に幸運なことです。アバナードが私をサポートしてくれるからこそ、私はアバナードのクライアントを全力でサポートできるのです。
 
多様性とは、性別、国籍、人種に限らず、私たち一人ひとりの中に無限に存在するものです。私は生徒たちに、一人ひとりがユニークであり、その個性には計り知れない価値があることを伝えたいと思いました。私が愛する日本という国で、アイデンティティを確立していく中で、個としての自分を肯定し、自分の感情や個性を受け入れてほしい。私は話を聞く生徒たちと一緒に涙を流しました。多くの人が、私のメッセージを受け入れ、生涯忘れないだろうと感じました。私の経験と視点を彼らと分かち合うことが、私の職業人生における最大の栄誉のひとつであるという思いを強くしました。」

参加した生徒さんたちの反応は 

SDGsに関する取り組みについて、英語でプレゼン

NY研修では数々のプレゼンや会話を通して、人種差別や女性の社会進出、ジェンダー、環境など、さまざまなイシューに関する日米の共通点や相違点を発見したり、将来の進路の選択肢を広げて考えられるようになったりと、社会課題やキャリアについての学びや気づきがたくさん得られたようです。
 
また、「私は私のままで良い」「自分を尊重し、他人も尊重する」「伝えようとする意思」などの大切さを、レクチャーやスタッフたちのふるまいから感じとった様子が、アンケートからも伺えました。

実は、この研修は「準備」が分厚い

みなさんは、IT企業の社員というと、どのような働き方をイメージしますか? 1日中パソコンに向かってプログラムを書いている、そんなイメージかもしれません。実際、彼らの日々の多くの時間はその通りです。
 
当社のさまざまな「コーポレート シチズンシップ」活動は、そんな日々の中から、自主的に時間を捻出し活動に充ててよい、というルールのもと、さまざまな社員のボランタリーな献身によって成り立っています。
 
今回のNY研修も、どのような構成にするか、どの会場をどのくらいおさえるか、生徒との対話を担うメンバーをどのように集めるか、彼らにどのように企画趣旨を伝えるか、見学の時には何を見せ、何を説明し、どのように40人を効率よく案内していくか、高校生のプレゼンに対し、誰がどのようにコメントするか……といった数々の事前準備を、日米の有志スタッフが業務の隙間や時差を調整しながら、約3カ月にわたって緻密に積み重ね、作り上げたプログラムなのです。
 
もし彼ら全員の働きをすべてサービス料としてチャージしたら、とても大変なことになりますすが、実はこれらの働きはすべて一人一人のスタッフのボランタリーな活動として行っています。アバナードでは、社会のための活動に自分の時間を使うことが、当社のコーポレートシチズンシップ活動の目指す「若い世代の支援と育成」につながるため、このような課外活動的なプロジェクトも歓迎されている、というわけです。

お飾りなんかじゃない。経営のトップクラスが本気で参加する

今回関わってくれたグローバル社員は、総勢15名。北米の拠点をまとめるエグゼクティブのリチャード・ヴァンダー・ミアさんも、この日のために現地で参加してくれました。
私たち従業員ですら、滅多にお会いできる機会のない経営トップクラスの人が、このように仕事に直結しない、海外からの高校生の研修に参加する。そのこと自体、アバナードのコーポレート シチズンシップ活動がどれだけ本気なのかを物語っています。
 
ITの仕事は、スキルさえあれば世界のどこの会社でもできます。それだけに、その会社にどのような付加価値があるかが、良い人材を集める重要な要素になってきます。企業としての付加価値を高めるためにも、コーポレート シチズンシップはとても大切だと考えられているのです。
 
この研修にさきがけ、オンラインで行なった事前研修で、アバナード日本法人のCOO・工藤雄玄さんは、このように研修の意義や期待を述べていました。

アバナード日本法人のCOO 工藤雄玄さん

「私自身、高校生の時にアメリカへ短期留学に行って”グローバル”を体感しました。今回のNY研修も、参加者の皆さんにとって、グローバルというあらゆる価値観を肌で感じていただくことを期待しています。そして、ボーダーレスな地球上において、皆さんが幅広く活躍されるきっかけとなることを願っております」
 
まさにその通りの成果を感じることができたこのNY研修。若い世代を支援する活動は、今後も重点的に取り組んでいきたいと思います。
 
最後に、この研修は、東武トップツアーズ株式会社ニューヨークのNPO NY de Volunteerとのパートナーシップのお陰で実現しました。
日本語が通じ、日米の習慣や文化の違いも、日本の高校生が置かれている環境も理解した日本人スタッフの方々が間に入ってくださったおかげで、参加者のみなさんも現地のアバナードスタッフも、安心して研修に集中することができました。この場をお借りしてお礼申し上げます。

アバナードのボランティアスタッフとNY de Volunteerスタッフ

アバナード(株) コーポレートシチズンシップ 日野紀子
編集協力:SHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERSさん

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