旅するドラム式洗濯機
妹が結婚するってんで、母親が花嫁道具と結婚祝いと引越し祝いを兼ねて欲しい物を訊ねたんです。娘へのお祝いを三つまとめるなんてセコいですなあ。
「ドラム式洗濯機」
妹はそう返しましてね、さっそく目黒の自宅にドラム式洗濯機を送ったまではいいんですが、すぐに旦那が海外赴任となりまして、妹も仕事を辞めて引っ付いて行くことになりまして、ドラム式洗濯機は使われないまま貸し倉庫に。
2年後、海外赴任を終えて、東京に戻ることになったんですがね、そのマンションが狭いの何のって。
えっちらおっちら妹の旦那と友人が運び入れようとしたら、ガン、ガン、ガン。何度チャレンジしても壁にぶつかりやがる。くだんのドラム式洗濯機は入んなかったんですな。
てなわけで、そのドラム式洗濯機が我が家に来ることになったんですがね、たまたま遊びに来た母親が言ったんです。そのドラム式洗濯機を買った張本人が言ったんです。
「この洗濯機うるさいね」
特段うるさいとは思わなかったんですがね、いや、むしろ静かだとすら思ったんですがね、大きなお世話とはこういうこと。母親がシン・洗濯機を買いまして、プレゼントしてくれまして。いらねえっつーのに。
そのドラム式洗濯機は宙ぶらりん。妹夫婦に返そうと思ったら、もちろん拒否されまして。だって、入らないんだもの。結果、下取りと相成りました。
結局、10度も使われることなく、しかもその中の1度が「うるさい」の一言で片付けられた原因となった1度ですから、本当に可哀想ですわ。
志井永子
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