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『もう 肉も卵も牛乳もいらない!』

完全菜食主義ヴィーガニズムのススメ

著者/エリック・マーカス(酒井泰介訳) 早川書房

 この本の表題にある〝いらない〟理由が、三つの観点から論じられています。一つは、健康上の理由から。肉、卵、牛乳などの動物性食品を避けることが、心臓や癌などの予防に明らかに役立つことを、いくつもの事例を挙げて、説明しています。
 二つ目は、家畜動物への共感から。現代の畜産業では、家畜は目に余る虐待を受けています。狂牛病は、いわばそのツケとも言えると。 
 三つ目は、環境保全。飢餓撲滅のため。生産される穀物の多くは、家畜の餌となっている一方で、飢餓に苦しむ人びとが増えています。 どれもなかなか説得力があり、私自身もいろいろと考えさせられました。 
 日本人は欧米人に比べて魚を多く食べますが、畜産業と同じくらい漁業もまた、今日では、たとえば底引網で根こそぎ海底をさらうようなやり方によって、海洋の環境破壊を進めています。大規模な大型漁船団が海洋に空き散らす廃棄物も、環境汚染の原因となっています。また、魚の汚染は、想像以上ものものがあると言われていますから、あまり多くは摂らないほうが、健康のためにも、よいと言えるでしょう。  
 この本が出版されたのは2004年です。東京電力福島第一原子力発電所が爆発する以前です。今となっては、海洋汚染は底知れぬものとなりました。しかも、日本政府はどのような状態になっているかも、その危険性のために確認できないぶっ壊れた原子炉の、加熱暴走を防ぐための冷却水を、海洋投棄するとしています。
 日本のとりわけ東日本の土壌汚染は、現在もなお続いています。チェルノブイリのように石棺で覆っているわけでもないので、壊れた原子炉からは放射性物質が出続けています。
 さらに、この本が出版された頃に比べて、慣行農法による農薬の使用レベルは日本においては悪化しています。それを考えるならば、ヴィーガン食で、価格が高くても、無農薬の野菜をチョイスするというのが、もっとも賢明なことになります。慣行農法の野菜は、野菜そのもののおいしさに欠けていルので、肉や魚の付け合わせとしてしか、使えません。今となってはヴィーガン食はとても贅沢な食事ということになります。
 国の無策により人びとの経済状況は悪化しています。高価な無農薬の野菜を購入出来る人は限られているでしょう。

 それでも、あえてこの本をお勧めします。みんなが贅沢なビーガン食を望み、誰もが美味しい無農薬の野菜を食べることができるような国の政策を望むようになってほしいと思うからです。

著者等紹介
マーカス・エリック
 ヴィーガン食、ヴェジタリアン食を推進する作家、活動家。コロンビア大学で修士号を取得。1997年よりvegan.comを主宰し、あらゆるヴィーガニズム情報を発信。これまでに全米100以上の都市で講演活動を行なう。
 ちなみに、この本の訳者(酒井泰介)は、この本を読んで、ヴェジタリアンになったそうです。

 タイトルの写真は、2016年12月の我が家のキッチンにて。

「みんなのデータサイト」より。土壌汚染の現実。


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