徳田球一と、K君の父親のこと。
他愛もない物語
K君は、東京南部の公立小・中学校の同級生で、常に学年トップの成績だった。中学1年生の最初の授業で、担任は各自に尊敬する人を書くように命じた。無記名だった。集められた用紙を担任が読み上げていった。ほとんどの回答は、ごくありふれた父親とか、両親とか、誰でも知ってるような偉人とかだった。
一瞬、間をおいて———担任が、「徳田球一を知っている人は手を挙げて」と言った。私は知っていたので手を挙げた。他にもう1人男子が手を上げた。それがK君だった。私は尊敬している人に徳