不愉快極まりない差別映画 『ひまわり』。放映禁止にすべき次元。
「戦争によって引き裂かれたイタリア人夫婦の悲劇を描いた作品」?
ふざけるな!
ロシアとウクライナの戦争がはじまった当初、ソフィア・ローレン、マルチェロ・マストロヤンニ共演、テーマ曲ヘンリー・マンシーニによる『ひまわり』(1970年)という映画が、話題となった。以前に見たことはあったが、忘れていることもあるのでネット配信で再び観た。そして……。
このかんほとんどの人びとは、この映画を高評価し、「素晴らしい」とか、ウクライナに思いを馳せるとか、あれやこれやの礼賛をしている。
今回あらためて観て、この映画は、ひどい映画だと思った。
女性差別は映画ではめずらしくもないが、加えて、精神障害者に対する差別・人種や民族に対する差別が物語を構成している。おそらく、ヨーロッパ、イタリアから見た当時のソ連に対する遅れた国意識も……。
最初から最後まで、実に不愉快極まりないこの映画の主人公の男女。そもそも私は、この主人公カップルを演じた俳優が好きじゃないが、それは置いとくとしても……。
「第二次世界大戦下のイタリア。 ジョバンナ(ソフィア・ローレン)とアントニオ(マルチェロ・マストロヤンニ)は、美しいナポリの海岸で恋におち、結婚する。 その後、アントニオは厳しいソ連の最前線に送られ行方不明になってしまうが、ジョバンナは何年経っても戻らない夫のことを生きていると信じて疑わない」
この映画の紹介に記されている「あらすじ」は上記のような内容だが、まず、アントニオは、なぜ、最も厳しい最前線に送られることになったか。それは、自らが精神障害者であると偽って兵役を逃れようとしたが、収容された精神病院にジョバンナが面会にやってきて、面会室の監視カメラが捉えた二人の様子により、偽りであることがバレてしまうというお粗末さ。
その精神病院の収容者の描き方も、不愉快極まりない。
そもそもこの結婚とて、「恋に落ち」なんてものじゃなくて、たまたま海辺で出会った2人が、即、その辺の岩陰で……。さらに、結婚するとハネムーン休暇の何週間かの間は、兵役対象にならないから、その間楽しもうってなレベル。その休暇が終わって、今度は兵役逃れのために精神障害者を装う。
さて、最前線に送られ、極寒のロシアで倒れ凍死寸前で、ロシア人の女性に助けられたアントニオは、そのままその女性と生活をはじめ、子どもも生まれる。その生活の場に、アントニを探しにきたジョバンナがやってくるが、二人の女性の関係や描き方が、実に感じ悪い。
アントニオが仕事から帰宅してイタリア人男女は再会する。しかし、ジョバンナはアントニオを拒絶してイタリアへ帰る。そこで終われば、まだしものこと、それ以来アントニオが落ち込んでいるのでロシア人の女性は、悲しむ。この時のロシア人女性の気持ちはいかばかりか。
やがて、アントニオは、病気の母を見舞うとの口実でミラノへ向かう。そこで、ジョバンナにやり直そうと迫る。おいおい、ソ連に残してきた妻と子どもはどうするんだ! しかし、すでに新しい生活を築いているジョバンナには子どもがいることを知り、アントニオはソ連に帰る。
これが「切ない愛の物語」? 冗談じゃない。この映画は、どこまで行ってもイタリア人男女の勝手な世界を「戦争が引き裂いた愛」というようなものに見せかけているだけで、どっからみても、打算と駆け引きで、お気楽に生きていこうとした身勝手な男女のドラマに過ぎない。
そもそも出会ったその場でセックス。12日の結婚休暇が欲しくて、ともかく結婚し、休暇後は、精神病と偽って兵役をのがれようとする。この2人の12日間の休暇過ごし方も、不愉快。戦争中で食べ物だってそう豊富になく、油も配給であるにもかかわらず、卵24個のオムレツを作って食べきれず廃棄する。休暇が終わる間際に、精神病を装うのだけれども、ナイフを振りかざしてジョバンナを殺してやると追いかける。これが差別でなくてなんなんだ。
こんな映画を、「戦争反対」であると主張しながら、絶賛する投稿者が2022年当時、ネット上にうじゃうじゃ現れた。多くは、若いころにリアルタイムでこの映画を見たというおっさんたち。私と同世代か、ちょい若い世代。カビの生えたようなノスタルジアに浸っているあれらの人たちに、うんざりした。