直木賞を受賞した『アンパ○マン』
お疲れさまです。
audiobook.jp運営のIzakiです。
突然ですが、私にはどうしても理解できない二種類の人間が存在します。
一つ目は、「魔女のように恐ろしく長い爪を装着する系」の人々です。
「えー、良いじゃんオシャレじゃん」とのたまひ合理性という概念を超越したその装備を楽しむ友人を目にするたびに、オシャレという概念に疎いところの私は畏敬の念(異形の念)を抱いてしまうといいます。
そんな「なんとかクロー!」みたいな技が繰り出されそうな爪で器用にキーボードを打ったりピアノを弾いたりするものですから、
付け爪を外した暁には一体どうなってしまうのだろう・・・
きっと普段は巨大すぎる己の力をセーブするためにあえて付け爪をつけているのに違いない・・・
そんな少年漫画的妄想が止まらないのです。
そう、「制約と誓約」ですね。
そしてもう一種、理解に苦しむのが、「本を読むのが苦手でいつも途中で投げ出してしまう」という人々です。
LINEもTwitterもWordもEメールも駆使しておいて何を今更「活字が苦手なんです」とおっしゃるのか、私はこういう方とお話するたびに「アナタはレベル5の時に誤って四天王に挑んでしまったトラウマに囚われているだけなのでは?」と思ってしまうのです。
※例えば『ハリー・ポッター』シリーズですね。いくら素晴らしい作品とはいえ、あの辞典のようなボリュームは物理的にも精神的にも鈍器足りえます。
「じゃあ何でい?『エルマーと16ぴきのりゅう』からやり直せというのけ?」
違います。
私は作品の対象年齢の話をしているのではありません。
あくまで「読みやすさ」の話をしております。
そして、その「読みやすさ」という概念において突出していると太鼓判を押せるのが、こちらの作品です。
奥田英朗『空中ブランコ』。
またの名を、「直木賞を受賞した『アン○ンマン』」。
その世間に全く浸透していない二つ名の通り、この作品は直木賞を受賞しております。
内容をシンプルに紹介するならば、
体重100kg超えのマザコン精神科医・伊良部一郎先生が、ヤバい患者さんをヤバい治療法で治してゆくコメディ短編集
といったところでしょうか。
ポイントは最後の「コメディ」そして「短編集」です。
これはつまり、ちょっとした空き時間を使って気軽に笑いながら読み進めた結果、
「この間『直木賞』、読んだんだわ~」
とドヤれてしまう、そんな寸法ですね。
まあ直木賞読んで誰にドヤれるのかは謎ですが、「○○賞」のような権威に弱い層というのはこの世の中一定数いらっしゃいますから、読破された暁には、是非虎視眈々とその機会を狙ってみてください。
さて、続いて『ア○パンマン』の部分の解説にまいりましょう。
お子様に大人気のこの某国民的アニメ。
その人気の理由の一つは、「ストーリーの単純明快さ」にあるのだと思うのです。
①何かしらの食べ物マンや動物くんが村でわちゃわちゃとしている
②バイキ○マンが現れて何かしらの悪事をはたらく
③「顔が汚れて力が出ない・・・」→「新しい顔よ!」
④「アーンパー○チ!」→「バイバ○キーン!」
全てコレです。
だからこそ、多少細かい言葉や話の流れが分からなくとも、日本中のちびっこ達が楽しめちゃうわけですね。
実は今回ご紹介している奥田英朗『空中ブランコ』、全く同じ構造なのです。
①何かしらの問題を抱えた患者さんが伊良部総合病院精神科にやってくる
②伊良部先生が現れて何かしらのヤバい治療法を提案する
③患者さんの意向などお構いなしに伊良部先生が日常を侵略してゆく
④「なんかどーでも良くなった!」→治る。
全てコレです。
※伊良部シリーズには他にも『イン・ザ・プール』『町長選挙』という二作品がありますが、全てコレです。
だからこそ、多少背景説明や登場人物の台詞を見落としていても、老若男女が楽しめちゃうわけですね。
何より、「絶対に治る」という確信があるので、安心して楽しめて後味が良いのが◎です。
つまり、ただでさえ「コメディ」の「短編集」で読みやすいのに、さらにこの『○ンパンマン』の要素まで加わってしまったのが、この作品というわけです。
さすが、「直木賞を受賞した『アンパンマ〇』」の異名(※使用者一名)は伊達じゃないですね・・・。
というワケで。
「本読むの苦手・・・」「最近まともに本読んでない・・・」
「本読んでもいつも途中で挫折する・・・」
そんなアナタに、奥田英朗『空中ブランコ』。
最後に直球宣伝ですが、この作品、実はオーディオブックも大変オススメなのです。
なんたって、声優さんが良いのです。
ただでさえ狂気の塊である伊良部一郎というキャラクターが、声優さんのノリノリの演技によって、その狂気にさらなる拍車をかけております。
是非そのネジの外れっぷりを、聴覚からもお楽しみください。
おわり