夏の夜会
記憶の曖昧さ。過去は自分の都合の良いように変わってゆく
同級生の結婚式で再会したことがきっかけで小学校の思い出を振り返り、またその時に起こった殺人事件のことを振り返る。
登場人物の名前の読み方が紅白で「いりまざり」や、指弘で「いいず」など特徴的過ぎて、読み終わるまで読み方が覚えられなかった。逆にその特徴のが人物を読み分けやすい点でもある。
全編通して各人の記憶を元に、過去に起きた殺人事件やそれにまつわる出来事について推理していく(思い出していく)というもので、曖昧な記憶が、擦り合わせによって段々と鮮明になっていく過程は読みごたえがあった。ただし、証拠といえるものも、物的といえるものは少しで大部分が記憶によるものなので、結末にて主人公たちが導き出した答えも、きちんと筋は通るものなのだけど、作中で
人間は己れの記憶を、文字通り記録された過去だと勘違いしている
とあるように、実はそれも自分の都合のいいように記憶したものなのかもしれない、と後味の悪さも残している。