暗いところで待ち合わせ
彼の描く暗闇はどうしてこうも私の心を惹きつけるのだろう
私が乙一さんの作品を読んだのは、天帝妖狐、失はれる物語に続きこれが三作目。
失はれる物語では、事故で一部の指を動かすことと、腕の一部の感覚しかなくなった男性が感じる暗闇での孤独を書いていた。
また今作では、目が不自由な女性の一人暮らしのことを描いている。
私が中学生の頃、授業で付き添いの大切さを感じるためにペアになって片方が目隠しをし、もう片方が付き添いをして校内を一周するということをしたことがあった。私はペアになった人に一人でどこまでいけるか試してみたいと頼んで少し一人だけで歩いてみたのだけど、目隠しをする前によく周りを見て記憶していたはずだったのに、スタート地点の少し先にあった階段に差し掛かったると恐怖でまともに階段を降りれなかった。その後はペアの人に付き添われてなんとか一周できたのだが、目が見えないのはこんなにも辛いことなのかとその時思ったのをこの本を読んでいてふと思い出した。
この本の女性は、自分の生活圏内である家の中ではまるで見えているように動けるが、しかし外に出る場合付き添いがいないと、一気に不安になってしまったり、不自由になってしまう。そんな目が不自由な人が感じるであろう”暗闇”を、さも自分が体験してきたようにリアルに描いている。それは、乙一さん自身の感性によるものなのかそれともとても綿密に取材したからなのか。いやきっと両方あったからこそこんなにきれいにリアルに書けたのでしょう。
物語はミステリー風にまとめられていて、序盤の何気なく書かれていたことが中盤からの展開で、よくミステリーの感想であるような”パズルのピースがきっちりとはまっていく感覚”通りの感覚を覚えて最後までわくわくしながら読みました。
そして自分の考えが間違っていなかったのだと、満足しながら最後まで読み終えることができました。
表紙やタイトルからネガティブなイメージを持つと思いますがそんなことはないので、安心して読めると思います。