勇者シリーズと女性ボーカル_たゆたいたい
「勇者っていうから剣と魔法の世界を想像していたけど、エクスカイザーを1話だけ見て面食らった。どこが好きだったの!?」とは長嶋さんの弁。確かに、言われるまで気づかなかったけど勇者といえばRPGですね。
Podcastで、勇者シリーズの話をしました。
90年2月から98年1月末まで放送されていた、サンライズ制作のロボットアニメです。パトカーや自家用車が地球外生命体と融合してロボットに変形、さらにジェット機や新幹線などと合体して、宇宙から来た敵を倒していくのがお約束。
メインターゲットはおそらく未就学男児。仮面ライダーやプリキュア同様、毎年新しい作品が放送されました。
小学1年の終わりから中学3年の受験直前まで、足掛け8年もの長い間ほぼ毎週観ていた記憶はある。録画して見返すほどでも、超合金おもちゃを買ってもらうほどでもなかったけど、Podcast番組のなかでは折に触れチラッと口にしてしまう。でも、長嶋さんはじめ勇者シリーズを知っている、または覚えている知人の方が少ないなか、自分が何に心を掴まれたのか特に言及することもなく、自分で考える機会もありませんでした。
もともと私が変身&合体バンク好きだったこと、単純にメカのフォルムがいいこと、作品によってはキャラクターやロボットの群像劇としてのおもしろさがあること…など作品の魅力はいろいろ思い浮かぶけど、当時の私にいちばん刺さったのは主題歌だったと、今回Podcast番組で話しながら初めて気がつきました。
勇者シリーズは最後の2作品以外すべて、オープニング曲が女性ボーカルだったんです。
特撮やロボットアニメの主題歌は男性が歌うものだという固定観念や、当時子どもなりに抱えていた「男の子じゃないのに男の子向け番組を好きで観ている」という小さな後ろめたさを、シンセの効いたギターロックとパンチのある歌声が勢いよく打ち崩してくれたようで嬉しかった。家族に呆れと白い目を向けられつつテレビを見つめていた自分自身を、歌が肯定してくれた気がしました。
勇者シリーズの主題歌は音域が低め。伸びやかなハスキーボイスに憧れる一方、つるっとした自分の声をコンプレックスに感じるようになったのもこの頃です。歌うことは大好きだったけど、何をすれば低くてかっこいい声が出せるのか日々試行錯誤する小学生でした。
そんな懐かしさとPodcast公開の勢いに任せて、オープニング&エンディング曲のプレイリストを組みました。歴代のオープニング8曲→エンディング9曲です。サウンドも歌も、今でも刺さるなあ。
時代の流れとともに「男の子がかわいいものを好きでいい」「女の子がかっこいいものに憧れていい」という考え方も少しずつ広まっていると感じます。それでもまだ「男の子向けなのに」「女の子が好きなものを欲しがるなんて」という小さな圧は、あちこちにある気もしています。
願わくばこれからの世代が、そして知らず知らずのうちに自らを縛ってきた私たち世代も、それぞれが自分の好きなものをお守りにしながら日々を送れますように。
ここからはPodcast本編では触れなかった、勇者シリーズ内の好きな作品のことを少しだけ。
第2作・太陽の勇者ファイバードは、地球外生命体の火鳥(かとり)にいちゃんが、気さくで優しくて強くてひたすらかっこよかった。しっかりと勇者シリーズを追うきっかけになった気がする。
第4作・勇者特急マイトガインのオープニング曲「嵐の勇者(ヒーロー)」が私の勇者シリーズ主題歌大賞です。あとはクセになる名乗り口上。銀の翼にのぞみを乗せて、灯せ平和の青信号。口上に合わせて桜が舞うなどやけに時代劇を感じると思っていたけど、ある程度大きくなってから小林旭さんが元ネタと知りました。作る大人の遊び心ですね。
第7作・勇者指令ダグオンは、たまたま居合わせた高校生男子が、突然現れた宇宙警察から「監獄が壊されて脱獄者がいっぱい地球に行くから、支給する変身ブレスレットと乗り物ロボで倒してくんない?(意訳)」と、地球の平和を丸投げされる異色の作品。自分たちの不祥事なのに宇宙警察は自ら手を下さないわ高校生はバラバラでやる気がないわとツッコミどころ満載だったことと、5人が変身→乗り物に融合するという往年の特撮要素にしっかりハマりました。
毎週録画して、近所のおもちゃ屋さんに貼ってあったポスターを譲ってもらいに出かけ(せめてロボ買おうよ)、ドラマCDにビデオにアンソロジーマンガまでしっかり買い集めたアニメは、後にも先にもダグオンくらいです。初めてアニメイトで好きなキャラクターのアクリルキーホルダーも買った。当時私は中2でした。
サンライズ公式YouTubeでは、各作品5話ずつ無料公開されています。絵柄から滲み出る90年代の香りと合わせて、よかったらどうぞ。オープニング映像もアツいです。