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悩みと強みに名前をつける

あなたは自分の悩みを一言で言い表せるだろうか。

「なかなかダイエットの習慣が続かないです」
「部屋がなかなか片付かないです」
「職場に怒りっぽい人がいてやりづらいです」
「全然彼女ができません」etc. 

一文でなら割と簡単に言えるかもしれない。けれども一単語で言い表せるかというと難しいものだ。
健康、片付け、人間関係、恋愛… これらは一見その人の悩みを表現しているようだけど、よくよく見ると悩みそのものではなく分野ないしジャンルを言い表している。具体的にその中の何に悩んでいるかが見えてこない。

私は長年なかなか自信を持てずに生きてきたつもりだった
思春期の頃から他人と比べて劣っているように思っていたし、自分の過ちのことを気にして恥じ入ったり思い詰めたりしていた。

そういうわけで私は自分の悩みを言葉にするのに劣等感とか罪悪感といった単語を用いていた。いわば自分の悩みに"劣等感"および"罪悪感"という名前をつけていた。

この認識があったから私は劣等感と罪悪感を払拭しようと努力した。大きな成功体験をすれば自信がついて劣等感が消し飛ぶとか、善行を積んで感謝されれば罪悪感が消えるかのように信じていた。

詳しいところは省略するが、振り返ってみれば実際に成功体験も善行もある程度までできていた。しかし遠い過去からあったネガティブな感情や悩みはなくならずにほとんどそのまま残っていた。

今年は自己理解プログラムの受講をきっかけとして、それまでと違った角度から自分の感情、原体験、理想などを見直してきた。

その中で自分の持つ"才能"を言い表すのに、自己理解プログラムでは「長所パターン」なる用語を用いた。ここでいう才能とは「絵が上手い」とか「音感が良い」というような持って生まれた形質ではなく、無理せず自然にできてしまう行動や思考のことだ。そして長所パターンとはそれを適度に抽象化して言い表したものである。

一人の人には複数の長所パターンがあり、私の場合は一例として

  • 参謀役:物事の因果関係や計画の進行順序を把握して障害を見つける

  • 修正能力:他人の過ちや自分以外の人へ向けた発信から我が身を顧みることで自分の誤りを探し出して修正する

などが挙がった。

ここではその内容でなく、コロン(:)の前にタイトルがついていることに注目していただきたい。行動や思考を抽象化して書くだけでなく、一言でそれを言い表すタイトルもプログラム内では考えることになっていた。
言わば自分の強みに名前をつけていた。さりげないことだけれども、しっくりくるタイトルを考えたおかげで本当に何が得意なのかを見極めさせられたような気がする。

この体験からヒントを得て、私は過去において自らの悩みに「劣等感」や「罪悪感」といった名前をつけていたと認識した。そしてあるとき、(これも詳細は省くが)自分が抱いていた感情はそれとは少々異なるものだったと気づいた。これが新たな気づき・アハ体験をもたらしてくれた。

私には幼少期から周りから非難されたり人を悲しませてしまったりした体験があり、そこから漠然と
 「俺はどういうわけかすぐ人を傷つけてしまう」
 「俺が人(特に異性)に抱く好意・恋心・下心は悪いものだ」
などと思い込むようになった。

これは特定の出来事に罪悪感を覚えたのではなく、自らの加害性に意識を向けて気にし過ぎるということだった。端的にいうなら被害者意識ならぬ加害者意識だ。一言でなくても良いなら”自らの加害性への恐れ”といえる。

そしてさらに記憶を辿ると、それより前に自分の悲しい気持ちをまともに取り合ってもらえなかった体験があった。それなのに自分が人を悲しませたときにはひどく非難されて不公平かつ不条理に感じた。

当時の私は自分の欠点を理由に挙げ、これがあるから自分は人に認めてもらえない、劣っているせいなのだと思い込むことでその不条理さを飲み込もうとした。これが自分の劣等感(と思っていた感情)の始まりだった。

劣等感や罪悪感はよく聞く言葉で、意味が分かりやすい。だから自分の悩みもそれだと思っていたのだけれど、この名前の付け方は不正確だった。

一般的な意味合いの劣等感や罪悪感がなくなるような体験ができても悩みの元の感情は残り続けた。ところが代わりに”加害者意識”と呼ぶことにしたら途端に「それだ!」と思えた。

己が加害性を持っていると潜在的に思っていたから、無意識のうちにそのことへの許しを得るために様々な形で努力して立派な人物になろうとしたし、善良なキャラでいようともしたに違いない。
劣等感・罪悪感の代わりに加害者意識という言葉を使うことにしたら自分の中にあった悩みや思考の過程が手に取るように分かり始めた気がする。

この体験を抽象化して言い換えるなら、「悩みに的確な名前をつける」になるだろう。こうして自分の中にある悩みの正体・性質が分かったら次はどう対策するかだ。それはまた別の話題であるから他の機会に書こうと思う。

10/13 追記:ここで言われたことを実感したということですね。

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