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宣伝会議【ARTS】質問と回答
2022年10月4日に行われた宣伝会議アートディレクター養成講座【ARTS】(室井淳司の回)で、事後に頂いた質問を受講生の方々にシェア致します。
当講座をご存知ない方の為に
宣伝会議アートディレクター養成講座【ARTS】https://www.sendenkaigi.com/class/detail/art_director.php
とは、宣伝会議が運営する教育プログラムで、これからアートディレクターを目指すデザイナーや、アートディレクターの方々のスキルアップを目的としています。講師は現役のアートディレクター数十名が務め、室井淳司は6年間毎年講義を担当しています。
例年であれば講義後に残って受講生の個別質疑に対応しているのですが、今回はスケジュールの都合上DMでの対応とさせて頂きました。翌日幾つか質問を頂きましたが、良い質問を1点こちらにシェアしておこうと思います。
当日プレゼンに関する話をしました。
プロジェクトを通してクライアントと多頻度な会話と高い意志共有ができていれば、プレゼン時にクライアントが「驚く」という事はまず無い。仮に前向きな驚きだとしても、これまで会話してきた内容とズレている可能性がある為、後々再考となる可能性がある。
こちらの内容に関する質疑がありました。
以下質疑の内容です。(個人の特定に繋がる箇所は修正しています)
アートディレクター養成講座(ARTS)受講生の○○と申します。 夜分に申し訳ありません。 わたしは広告代理店で制作をしています。 本日は授業ありがとうございました。 体験デザインについて、体験についての一連のストーリー付けの話が印象的でした。 日常のあらゆるものを4象限マトリクスで当てはめてみて、 自分なりにより深く分析する癖をつけようと思いました。
その中で「プレゼンでクライアントがたとえいい反応でもそれは予想外のものが出たということで・・・」 という部分で、わたしは広告キャンペーンのクリエーティブ(キャンペーンコンセプト、キービジュアル、CMなど)をメインに担当しており、 マスのアテンションから認知を獲得するために”意外性”を重視する時もあります。 今日は体験デザインの授業だったのですが、媒体や制作するクリエーティブによって使い分けるか、どのデザインにも当てはまるのか、室井さんの考えを参考にさせて頂きたいなと思いました。 お手すきの際にご教授いただければ幸いです。
ただ、どちらにせよ、 クライアントとの対話・会話・議論が圧倒的に足りていないと痛感しました。 そこはもっとやっていこうと思います。 本日の授業、ありがとうございました。上記に書いたことを今から実践します。
上記質疑に対する返答です。
○○さん こんにちは。 お気づきの通り、ブランドや事業のプレゼンと、広告プロモーションのプレゼンは異なります。 ブランドや事業のデザインは戦略に基づいた仕立てが必要ですが、広告プロモーションのデザインは、それを「どう伝えると伝わりやすいか、関心を持って貰えるか」というアイデアを伴います。
ブランドや事業の姿をそのまま伝える広告は所謂ブランド広告と言われ、この場合は戦略に忠実に真っ直ぐに伝える必要があります。一般的に表現も実直です。 一方でプロモーション広告は関心を持って貰う為の伝えるアイデアが加わる為、表現に奇抜さが求められる場合があります。
仮に上記の棲み分けが明確ではない広告のプレゼンを依頼されたならば、以下の3案を提案してみてください。
1:ブランドの戦略に基づいた真っ直ぐな表現。
プレゼンから表現まで理論的に全てが説明できる表現です。
2:アイデアを伴う表現。
1では生活者の興味を引けない為、表現のアイデアを加える。その際に、戦略からどの程度の距離があるかも説明する。
3:戦略からは離れるが、最大限関心を引ける表現。
戦略に捉われすぎると説明が難しい表現。しかし明らかに受け手の関心を引くパワーがある。
上記3案をプレゼンすることで、この提案者は戦略に基づいて表現をコントロールできる人、という印象を与える事ができます。またこの3案をもとにクライアントと会話をすることで、クライアントがどの程度の表現を求めているのかを把握する事ができます。
仮にどの案も採用されなくても、この人なら相談しながら表現が作る事ができそうだと思って貰えると、パートナーとして採用される可能性があります。
プレゼンは、表現を提案し決定してもらう場としての役割と、提案した表現をたたきとして会話をする役割もあります。
プレゼンをクライアントインタビューと捉えた時に、どの様な幅でインタビューをするか、会話をするかを考えていくと、必要なインタビュー項目、つまり必要な表現のバリエーションが見えてくるかもしれません。
※上記は競合プレゼンには当てはまりません。
競合プレゼンに関する内容は、11月から開始予定の室井淳司の新しい連載コラムで触れて行きたいと思います。
新しい連載の開始はこちらのNoteでお知らせします。お楽しみに。
室井淳司